コンタクト 妖たちに出会いました。もれなく、たぬきも

華楓月涼

第1話 河童と出会う

スマホのアラーム音が鳴り響く。


スムーズで何回も来る返される毎朝の恒例行事・・・。


あーまだ寝ていたいのにもう、朝か・・・。


今日、テストだよなぁー。何にもやってないんだけど…そう思いながらベッドから出て、洗面所に向かおうとするとドアフォンがなった。


朝早いのに?まだ、8時前なんだけど。


「お母さん!誰かきたよー!いないの?ねぇお母さんってば~。仕方ないなぁ。もう、今何時?早すぎ~うざ。」


ドアホン越しに誰か聞くと


「おはようございます。お荷物です。」


「えっっどこから?。」


「アルファコンタクト様からですが、受け取り拒否しますか?」


ガチャリとドアの鍵を開ける。


「あっ・・・。受け取ります。いつも、コンタクトレンズ頼んでる会社なんで~。」


「じゃここに、サインください。」


バタン・・・。ドアが閉まりしばらく考え込む。


『こないだ、頼んだカラコンかな?』と思い中身を確認しておこうと段ボールを開封したら封書がはいっていた。


封書には『おめでとうございます!!』と書いている。


「えっ?なんか当たった感じ?うける~。」


封書を開けると、『いつも、弊社をご利用いただき誠にありがとうございます。ご利用頻度の高い貴方様に弊社の最新の最高級コンタクトレンズをお届け致します。なお、ご使用前に下記のQRコードにて必ずご登録いただいてからご使用くださいますようお願い申し上げます。ご登録なくご使用いただいた場合、不具合等で損害賠償事案に発展致しましても弊社は一切の責任を負いかねます。それでは、快適なご使用となりますように。』


「なにこれ?・・・。まぁ、いいか、、色も可愛いし、試供品を登録して使ってて事だよね?まじ、うける・・・。」


ここから、登録してっと。ピコン・ピコン・ピコン・・・。『ダウンロードが完了しました。使用上の注意をよく読んでから装着くださいますようお願い申し上げます。なお、このコンタクトレンズは、効果をよりよく引き出すために装着後一定の時間は外せません。一定の時間がたちますとアラームでお知らせ致します。』


なんだか・・・変なコンタクト。とりあえず、つけてみよーっと、テストだし、1限だから、いいっしょっと。


んー?思った色と違うな〜。でも、まぁ変わった感じがいい感じ〜?よし、今日は、これで決まり!ふふん。


にしても、お母さん、朝からどこ行ったんだろ?朝ご飯あるのかな?


ダイニングへ行って確かめると。テーブルの上には、いつも通りの食器が並べてある。


電気ポットがカチャと鳴って、お湯も沸いた所だ。


あれ〜?トイレにいるのかな?


「お母さん?トイレ?」


いないのか〜。


ちょっとコンビニとかでも行ったんだろうな。


用意された、食パンをトーストにして、コーヒーに牛乳を、たっぷり入れた後、1人で食べ始めた。

そのうち帰ってくると思っていた母は、まだ帰ってこない。仕方なく。学校へ行く準備を始めて、誰もいない部屋に行ってきますと言って、外にでた。


いつも通りの世界に自分がたった1人だと気付くのに少し時間がかかった。


そう、自転車で通学していれば、交通の少ない日には車にだって合わないし、人も歩いていない事だってあるからだ。


学校に着き、自転車置き場から校門までの距離で、ふと思う。


えっ遅刻したっけ?


スマホを開いて時計を確かめるが、

8時25分…ギリギリだけど間に合っている。

なのに、誰もいないのだ。


えっ、日にち?曜日?

次第に混乱してくる


何かあった?


ニュース見てみたら何か分かる?


スマホを開くが、圏外で、ネットが開かない。初めて、ちゃんと辺りを見回す。

近くのコンビニに行けば、ううん、学校に行けば良い!先生も友達もきっと、教室にいるはず。連絡ミスで早すぎたとか~!だよね!


足早に校内に入り、教室へ一目散で向かう。


ガラガラ!


なんで?、どうして、誰もいないの?


今日は、このカラコン見てもらいたかったのに…私だけ?・・・うざすぎ~。コンビニ行ってみよう。誰かいるかも知れないし。


自転車置き場に逆戻りをして、コンビニの方へ向かう。


コンビニに入り店内をぐるっと回り、人を探すがいない。


ふと、コンビニのアナログの壁時計が気になって見た。7時46分で止まっている。


あっ!宅配が来た時の時間?あの時、テレビ画面から見た時間だ。


どうして?私だけここに取り残されたの?


何もかも同じ世界に?


ふっと何かの影が通って行った。何?


その影が、突然目の前に現れる。


「お前、どうやってこっちに来た?」


驚きすぎて、声が出ない口だけがパクパクと動いた。


「話せないのか?」


ゴクリと唾を呑み込んで、見えないふりをしようと試みるも首を動かせば、動かしたほうに目を合わせてくる。


「見えないふりしても無駄だぞ!」


なんで?なんで?河童が前にいるの・・・。


河童って本の中の生き物だよね・・・。


「お前、周りをもう一度見まわして見ろ!さっきと景色も違うはずだ。ここに迷い込んだ奴はいつも言う。さっきまで、学校にいたとか会社だとかってな。」


そう言われて、辺りを見回せば、そこには見たこともない風景が広がっていた。


聳え立つ絶壁の山々に滝。悠然と流れる川が傍にある・・・そんな場所に立ち、目の前には、何故か河童がいる。


目を擦って、頬をつねっても風景が変わることは無かった。


「なんでーーーーー!!!」


叫んで変わることもないのに叫んでみたが同じだった。


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