第9話 「ミカリの疑問」

ミカリの家を出た2人は、アミハマ駅に向かって田舎道を歩き始めた。 徒歩で20分ほどの道のりである。


幸せ一杯のクルチアが夢見心地で歩いていると、隣を歩くミカリが言い出した。


「そう言えばさ」


「なあに?」


「クルチアは何故ウチに来たんだい?」


当然の疑問である。 見ず知らずの女の子がいきなり家にやって来たのだから。 今までこの質問が飛来しなかったのが不思議なほどだ。


(えーと... なんて答えよう?)


クルチアがミカリの家に行った理由にはコロリが密接に関わっている。 慎重に答えないとミカリがコロリの秘密に勘付く恐れがある。


だがクルチアは返答を待つミカリの視線に耐えきれず、ありのままを話して良いものかどうか判断がつかないままありのままに答えた。


「えっとね、神さまのお告げがあったの」


「神さま?」


「う、うん。 なんかね? 飢え死にしかけの若者がいるからコロリを与えに行ってくれって言われたの」


その情報にミカリが食いついた。


「すると、コロリも神さまが?」それで食後に生きる意欲がわいたのか... あの美味さも、神の食べ物と言われれば納得だ。


話題がコロリに及び、クルチアの目が泳ぐ。


「え~と...」


クルチアはイケメン・コロリを通販で買った。 だが、コロリはクルチアがミカリをつなぎとめる上で死活的に重要なアイテム。 コロリに関してミカリに一切の情報を与えるべきではない。


答えを渋るクルチアに、ミカリがイタズラっぽく尋ねる。


「ボクには秘密なの?」


ミカリの誘うような笑顔にクルチアの決意は揺らいだ。


(通販で買ったことだけ教えちゃおっかな。 それ以上教えなければいいわけだし...)


ミカリの望む情報を与えてミカリを喜ばせたい。 そんな思いがクルチアの判断力を狂わせ、彼女は重要な秘密を明け渡してしまう。


「えっとね、通販で買ったの」


「神さまじゃないの?」


「違うの。 通販なの」


「通販って凄いんだね」あんなモノまで売ってるなんて。


「えっ?」ミカリくん... 通販を知らないの?「 ま、まあね」


「ねえ、通販ってどうやるの?」 オレもコロリを買いたい。


クルチアは付け込む隙を見つけた。


「う~ん、ミカリくんに通販でお買い物できるかしら?」


クルチアの声は弾んだ。 隙を見つけたのが嬉しくて。


「そんなに難しいのかい?」


クルチアは重々しく頷く。


「ええ。 とっても」


そして追い打ち。


「それにね? コロリはとっても高価なの」


ミカリが不安そうな顔をする。


「高価って... 何モンヌぐらい?」 昨日コロリをもらっちゃって良かったのかな?


安全な方向に話題がれつつあったところで、クルチアはさらに話題を逸らす材料を発見した。


「あら見て、ミカリくん。 女の子よ。 この辺じゃ珍しくない?」なくなくない?


2人の歩く道の向こう側から桜色のワンピースを来た小柄な女の子が歩いて来る。


ミカリも女の子に注意を向け、クルチアに同意する。


「そうだね」


女の子との距離が近づき彼女の姿が明確になった。 クルチアとは対照的にスリムで小柄な女の子だ。 女の子の服も靴も余所行きよそゆきの趣である。


さらに距離が近づき、2人はワンピースの女の子とすれ違う。 すれ違いざまに女の子はミカリの顔を盗み見し、クルチアはそんな女の子の様子を盗み見て心を痛めた。


(可哀想な子。 私もミカリくんのこっ、恋人になるまではあんなだった)


女の子が通り過ぎた後でミカリが見解を述べる。


「今のは、この辺の子じゃないね」


「私もそう思った!」


そしてミカリは逸れていた話題を元に戻す。


「それでさあ、コロリの値段のことなんだけど...」

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