第191話 【ありがとうネクロマンサー】 田武 1,000万回閲覧 6時間前
死者が蘇ったという衝撃的なニュースが流れた日、動画サイト【MeTube】に投稿されたとある動画がバズっていた。
内容は、ある一人の青年がテロップで表示された質問に答えるだけという、シンプルな一問一答形式のものである。
ただし、質問とその回答がまさに今皆が知りたがっている内容であったため、口コミやら何やらで一気に話題が広がった。
________________________
お名前は?
「えー、
お仕事は?
「…今年の1月まで【
今は何をされているんですか?
「えー…今年の1月までMeTuberをやってたって言いましたが、実は1月に、タクシー移動中に交通事故にあって、死んでしまいまして…。あ、概要欄に当時の事故のニュース映像を載せておくんで、そこで顔と名前が一応、出てます。えー…なので、今何をやっているかと聞かれると、死人…ですかね。はは…」
死人というのは?
「文字通り、死んだ人です。約10カ月前に本当に死んで、でも先日【ネクロマンサー】っていう死者を生き返らせる事のできる超能力を持った人に助けてもらって。で、そのことをみんなに知って欲しくて、こうして動画を作成して届けています」
超能力とは?
「漫画とかアニメに出てくる、特殊能力のことです。空想の中だけだと思っていましたが、実は隠されているだけで、本当にあったんです。僕が今ここで喋っていることがその証拠です。超能力は死霊術だけでなく、他にも色々なものが存在すると聞きました。見たことは無いですが…」
隠されているというのは、誰にですか?
「そりゃあ"超能力者"にですよ。警察内にある超能力者だけの組織がメインで取り締まっていて、そこの認可を受けた超能力者で構成された組織も、自警団みたいなことをやっているって聞きました」
どうして隠すんでしょうか?
「治安維持とか何とか言っていますけど、結局は"利益の独占"じゃないですか?
崇高な目的とは?
「その人はこう言ったんです。『事件や事故で理不尽に奪われた命を、その家族を悲しみから救うために、能力を使っている』と。そして『いつか理不尽な別れが無くなる世界を作るため、協力してほしい』とも言っていました」
協力とは?
「生き返らせた死者を維持するために、超能力を使う際のエネルギーである泉の気と書いて"泉気"の補給が必要らしいんです。なので、多くの能力者の泉気提供や法整備、新たなインフラ整備などが必要だと。僕や、今頃警察などに名乗り出ている何らかの事故の被害者たちは、まず超能力を世間に認知してもらう為の宣伝部隊ですね」
動画はその後も、能力の事、組織の事、死霊術の事などを答える青年のインタビューが続いた。
そして、最も注目を浴びたシーンで動画が締めくくられる。
貴方が死者であるという証拠はありますか?
「はい…。これもしかしたら、動画消されちゃうかもしれないんですけど…。まず、僕の体ね、遺骨にエネルギーで肉付けして質感を再現しています。ネクロマンサー曰く、体温とか脈拍とかも再現可能だって。で、これ、果物ナイフです。リンゴとか切る。ホラ、本物ですね。それで…これネクロマンサーに許可取って、視覚的に信じてもらえるよう特別な体にしてもらってるんで、普通にやったら能力解除されちゃうかもしれないですからね…。行きますよ…」
そういうと青年は自分の顔にナイフを突き刺し、顔の一部を切り取って見せた。
「…はい。これが証拠です。血も流れてないし、平気なんです。死人だから。でも、ちゃんと意識はありますよ。これ、本当に合成じゃないですからね」
青年の動画を見た視聴者の意見は大きく二つに割れる。本物派と偽物派に。
しかし世間の話題は、超能力・死霊術・泉気などこれまで特対が必死に守ってきた話題で持ちきりとなってしまうのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます