第15話 ジュエル ―友達―

先日、バイラ様という同じ転生者の友達ができた私は、多くの情報を得ることができました。正直心強く思いました。前世の記憶を持つという境遇は私一人なのではないかと思っていただけに、同類に出会うと何だかホッとしました。


もっとも、友達を得て世界が変わって見えるようになったのは私だけではありませんでした。





始業式のパーティー中にお嬢様は私の計画通りに、ヒロインことマリナと友達になれたようです。しかも、かなり仲良くなれたとか。まあ、ゲームのヒロインですから性格はいい感じの頭お花畑でしょうからね。


……と、思っていたらそうでもないようです。


お嬢様によるとマリナ……様はとてもしっかりしていて頭もよくて心優しい少女のようです。ゲームほど頭の悪い女性ではないようですね。それにお嬢様にあこがれを抱いていると? おや、想定以上にいい女性のようです。お嬢様が悪役令嬢らしくなくなった影響ですかね?


意気投合したこともあり、信頼もされていて、王太子のカーズのことでも会話に出したそうです。どうやら、マリナ様は無神経なバカ王子の頬をひっぱたいたらしく、それで今になって不安になってきたそうです。ここら辺は彼女もゲームの序盤通りですね。


……後になって苦労されることでしょうが、そこは作戦に組み込ませてもらいましょう。都合がいいし。


それにしても意外でした。思ったよりも早い段階で友情を築けるだなんて。ゲーム通りに敵対する可能性も捨てきれなかったというのに、敵対どころか意気投合するとは。ゲーム通りならヒロインと悪役令嬢なのに。


……まあ現実では、マリナ様は学園に転入したばかりで味方はほとんどいないと言っていい立場です。男爵令嬢になったばかりの成り上がりならなおさらでしょう。もしかしたら、そんな不安な気持ちがあったからこそ、話しかけたお嬢様と仲良くなれたのかもしれません。今のお嬢様は悪役令嬢なんかじゃないでしょうからね。


……あれ? これって心の弱みに付け込んだ感じでは? いや、気にしません、気にしません。


マリナ様と仲良くなったお嬢様は、心から許せる友達をもう一人持てたと喜んでいました。友情はどんなに輝かしく美しい宝石にも勝る宝なのだとまでおっしゃります。


え? 最初の一人が私ですか? いやぁ、照れますね。しかも人生の恩人だなんて!


……そっくりそのままお返しいたします。ソノーザ家に復讐する気持ちしかなかった私に、宝石よりも美しい気持ちを与えてくれたのはサエナリアお嬢様、貴女なのですから。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る