第12話 バード ―自由―

レフトン殿下の協力を得ることに成功した私は、次のステップに進むことにしました。それはお嬢様に決断していただくことです。計画のことを話して、お嬢様にどんな道を進んでもらうかを。


これまでの努力の末にお嬢様から絶大な信頼を得た私は、お嬢様に『ミルナ・ウィン・コキア』のことを、前世のことを除いた私の全てを打ち明けました。そして、執事のウオッチさんのこと、第二王子レフトン殿下のことも。


つまり、私も含めて彼らがソノーザ公爵家に敵対していて、近いうちに旦那様の、ベーリュ・ヴァン・ソノーザのこれまでの罪を暴くために行動に出ようとしていることを説明しました。


もちろん、その過程でお嬢様を他家に引き取っていただくか、平民として生きていくかということになっています。他家に引き取られる場合は伯爵から侯爵までの貴族の養子になって、貴族の令嬢として再び生きていく。その際は王族の婚約者になれる可能性が極めて高いと言われています。


平民になる場合は、平民でもなれる文官の役職に就任することになる。その際は、王家から極秘に家庭教師をつけて早い段階で仕事ができるようにすると言われています。


全て説明した私はお嬢様の返事を待ちます。私の告白に大変驚かれたお嬢様は、もう少し考えさせてほしいと仰られるので、私の次の休日まで待つことにしました。





翌日、お嬢様は私を部屋に入れて決意されました。その決意は私の予想の斜め上を行くものでした。




計画に賛同して協力するという答えをもらいました。そして、平民になる道を選ぶそうです。やはり、お嬢様の性格上、そういう道を選ぶだろうとは予想しておりました。ただ、王家の恩恵をもらわないで自分の力で仕事にも就く、ということです。王家のコネで文官になるつもりはないとのこと。


流石に驚いた私は理由を聞かせてもらいました。お嬢様にとっては、それでは自由とは思えないそうです。今日まで私の言葉を聞いて平民の暮らしなどを勉強して、更に平民の友人たちにも話を聞いてみたり、しかも、平民に成りすましてバイトもしていたそうです。


もうここまでしてきたのだから今も続けたいと思っているからこそ、平民の道も自分で目指して行きたい、その先で本当の自由を得たいのだそうです。たとえ、どれだけ大変だろうとも。


……お嬢様の話を聞いて私は理解しました。お嬢様はあえていばらの道に進むつもりのようです。本来ならば、貴族から平民になった後の苦労をよく知る私ならば、必死に待ったをかけるところですが、お嬢様は今まで見たことのないほど熱心にご自身の決意を語っています。


ああ、これは説得は無理だと感じました。それにお嬢様の決断に水を指すほど無粋なこと等、私にできそうにありません。


だからこそ、私も決断しました。お嬢様の道を、お嬢様なりの自由を、私が支えていこうと。例えるなら、ひな鳥を巣立つまで育てる親鳥のように。


そうなると、これは私からレフトン殿下に伝えるしかありませんね。せっかく、お嬢様の後の支援を約束してくださったのですが。

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