知的障害児とコカコーラ
@7241
第1話
コォーヤーノ、ノ!
コォーヤーノヨョ〜!!
母親の笠井遙子(46歳)が
運転する
車の後部座席で
横たわり
胸で腕組みしたまま
体を左右に揺らし
顔は
怒りの感情に伴う
紅潮作用で赤くなり
眉をしかめ
大袈裟に口を尖らせながら
「コカコーラが飲みたい!」と
訴えが始まった...
息子、笠井陽祐(7歳)は
知的障害児(精神遅滞)
自閉症(ASD)だと
診断されたのは 幼稚園の頃。
周りの子と比べ
中々、言葉を話さないことや
音声言語の理解能力が
困難だった為
遥子が名前を呼んでも
振り返ることもなく無反応。
表情の変化は乏しく
無表情
絵本の読み聞かせをしても
全く興味を示さない
集中力はなく
じっとしている事が出来ない等の
発達の遅さから
疑いを持ち
専門の医療機関で検査を受け
知的障害だと判明した。
最初の頃は
パニックになったり
障害を受け入れることが
中々、できなかった。
もしかしたら
40歳以上の高齢出産の場合
子供が障害(自閉症やダウン症)を
持ち生まれてくる確率は
高いことが原因だったかも、、
必要以上の妄想に駆られ
健常児で
産んであげらなかった
我が子への
申し訳ない気持ちや
私や夫が
もし、病気になったり
介護が必要になったり、死んでしまったら
援助がなければ
1人で生きていけない
陽祐は
どうやって生きていくのか?
将来を案じ
不憫な息子の人生を考えては
深い悲しみに沈み
自分を責め続け
眠れず、泣き暮らした日々が
少し、懐かしいと
後部座席の息子を見つめながら
色々な思いが蘇みがえった、、、。
あの頃に比べれば
「療育」を始めた頃
児童福祉施設の
福祉型 児童発達支援センターへ
通所訓練へ通う日々。
そこでは
陽祐が
日常や社会生活を円滑に
過ごせるように
障害児の発達、側面から
心身の健康
日常生活の基本的な動作や
知識、技能習得、社会性
人間関係、コミュニケーション
集団生活への適応訓練を行うのだ。
遙子が陽祐のことで
相談や悩みがあれば
家族、心理的支援も受けられ
専門の相談員さんが
親身に傾聴
専門的な広い情報、視野で
的確なアドバイスや
問題解決に向け
一緒に
寄り添ってくれるものの、、、
トイレ訓練を始め
陽祐は自宅、施設でも
「こだわり」は
より強くなり
上手くいかないことの連続で、、
癇癪やパニックを良く起こし
目を離した一瞬の隙に
外へ飛び出していなくなる
車が危ない、飛び出しが危険との
認識がないのに
勢いよく一心不乱に走ってゆく。
命を守るために
3秒と目を離せず
家中、鍵を掛けるしかなかった。
公園では
遊具を待つ列への割り込み
私達、親子の存在は浮いており、、
スーパーなど
好き勝手動き回り
商品を触り
思う様にならないと
ところ構わず 床へ寝そべり
癇癪を起こし
奇声を上げ泣き叫び
とても、買物どころではなかった。
しかし現在
支援学校へ入学し
何より、遙子が
精神的に随分と助けられた存在は
親子同士の家族会や互助会の
人々であった。
昨今は SNS時代
知的障害児を持つ母親同士の
日常生活ブログやコミュニティも
盛んで
同じ境遇の親と接する機会が増え
仲間が出来やすくなり
苦労を語り合ったり
アドバイスや情報を共有したり
孤独感が薄れ
子どもと向き合う余裕が生まれ
今まで、家族だけで
抱え込んでいたものを
語り合える仲間の
存在は
どれほど、有り難く
感謝していることか、、。
そんな、ほんの
少しばかりの成長を
噛み締めたくなるのは
自閉症児の育児は
毎日、半端ない!
体力と精神力のエネルギーが
消費される、、。
日常生活でなんらかの
トラブルや体調不良など起きれば
その、しんどさは
46歳の年齢もあり
過酷なまでに我が身を憔悴させる。
遙子は 昨夜から37℃台の
微熱があり、朝起床しても
全身が怠く
喉は腫れ、頭痛もするが
陽祐の、「こだわりルーティーン」を
変更など あり得ないため、、
休めるわけもなく、体調の悪さから
いつもより、注意三昧気味だった。
陽祐が 大好きなコーラを飲みたいと
訴えた時に、すぐ渡せるよう
外出時は クーラー袋へ
コーラ3本常備するが
不覚にも、うっかり忘れたのだ!
「コーヤーーー!!ウワアアー
ギァアアアアアーーーーー!! 」
とうとう
陽祐は待ちきれず
激しく泣き叫びながら
後部座席の窓へ自らの頭をガンガン
打ちつけ始めた、、、
はぁーと
軽く溜め息を吐きながら
こんな状態では近くの
コンビニへは立ち寄れないし、、。
しかし、以前とは違い
癇癪にも
近頃は慣れてきた遙子ではあった。。
自閉症児は
こうして欲しい「こだわり」が強く
限られた
食物、飲料、お菓子しか
食べないという
極端な偏食がみられる。
陽祐は、
もっと小さな頃
食事を食べることを
嫌がり
3食、コカコーラと白米(少量)しか
受付ない時期があった。
自閉症(ASD)特徴の一つに
味覚、嗅覚、視覚などの
「感覚過敏」がある
口腔内過敏
コロッケの衣が棘のように痛い。
ナスを噛んだ感触が気持ち悪い。
視覚の色や温度。
酸味、苦味を異常に強く感じる。
聴覚過敏
食材によって
物を噛む音が気持ち悪くて耐えられない
反響音が苦手。
嗅覚過敏
マヨネーズなど
特定の匂いがするものが食べられない
感覚の鋭さから
通常の人には感じられない
敏感さ繊細さが
強いため
偏食になりやすい。
「こだわり」は
※道順、
※スケジュール
※置き位置
※やり方
まで、1人1人、細かい
こだわりが存在し
※(個々により、様々なルール、こだわりがあり自閉症児が皆、同じではない。)
起床から就寝まで
毎日、同じルーティーンを繰り返す。
※(曜日、時間で違うとかもある)
※上記の「こだわり」ルーティーンが
完璧に守られ、提供されないと
癇癪、パニックの度合いは
小中大とその時々ですが、、。
独語、奇声、泣き叫びながら
・自傷行為
(自ら床や壁に頭を強打血が出るほど叩く引っ掻く等。)
・他傷
(他者へ、叩く噛む引っ掻く等)が
現れます。
言葉については
※(4〜5歳にもなれば)
しっかりと発語し
周りと話しますが
・おうむ返しの言葉。
(※相手の言ったことをそのまま返す)
・歌詞、言葉の丸覚(得意)。
・代名詞、動詞の反転等で話す。
言葉は話せるが丸覚えだけですので
その子供の意味を理解してません。
※他者を気遣う、空気を読む思考、言葉の意味を理解できないゆえ、言葉を理解し組み立てて自分の意思を言葉で周りに伝える事ができないのだ。
言語による意思疎通が困難な為
上手く伝えられないことや
理解ができない為
そこにもどかしさと苦しさの
ストレスの現れが
癇癪、パニック、自傷行為を
引き起こすのだ。
ちなみに、、
陽祐の「食事こだわり」
※野菜は一切、食べない。
・お気に入りアンパンマンのトレイに
・ハンバーグ(細かく8等分カット)
フォーク(小)は真ん中へ刺しトレイ中央に置く。
・白米、コーヒーカップ半量
トレイ左上に置く。
・コーラ500ml 1本
必ずペットボトルで提供、右下位置に置く。
・グレープofオレンジ味
ゼリー半量はテーブルの右下コーラと並行に置く。
・時計の針が30分を刺さないと
絶対に食べない。
食器、フォーク位置、ハンバーグのカット数
時間、どれか一つでも無かったり違うと
癇癪、パニックを起こす。
自閉症の疾患、認識がなけば
「我儘」と勘違いされたり
※(昔は母親の躾が悪いと考えられていた。)
普通の人からすれば
なんでこんな些細な
ことに、こだわるんだと
思うことも
本人にとっては
「最大に猛烈に、耐えがたい嫌なこと」
なのである。
陽祐の細かなこだわりと
癇癪、パニックに
綾子のストレスはMAXに陥いるが
忘れてならない事は
一番しんどいく辛いのは
陽祐、本人。
家族は
お互いに
ストレスにならない様
回避する方法を
前もって、完璧に準備、配慮することが
自閉症児の陽祐と
上手く暮らしてゆくコツでもあり
陽祐のありのままを受容して
陽祐のできたことを
沢山褒めてあげて
愛情を注ぎ
幸せをありがとうと息子へ
感謝しかない。
そうやって
子供の時から
安心できる生活環境を
母親が与え続けることが
大切なことなのだ、、。
親の愛に
障害のあるなしは関係ないこと。。
が、しかしw
コーラを水代わりに
飲ませるのは
母親ゆえの
こだわりかもしれないが
栄養面、健康問題は
楽観視などできず
陽祐は食事を食べるようには
なったが
極端に偏食の為
ハンバーグと白米、ゼリーぐらいしか
摂れていない、、。
糖分の低い
ZEROコーラに変え
一日の摂取本数は
食事時、以外は
午前、午後で
一本250mlづつ
その他は
なるべく
水ofお茶か
どうしてもの時は
乳酸菌飲料か
100%果物ジュースなどを提供。
やっと5ヶ月が過ぎた。
コーラを好きな時に
いくらでも飲みたがり
その都度
癇癪、パニックを起こすが
ぐっと、我慢し
見守ってきた遙子。
支援学校へ通い始めてから
5月経ち
陽祐は
癇癪は起こすも
しばらく、様子見で
そのままにしておくと
諦めが早くなり
しばらく待てば
癇癪はおさまり
ケロッとし
諦めることが増えて
後部座席の陽祐は
次第に、落ち着きを取りもどした。
(次回へ続く)
知的障害児とコカコーラ @7241
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