歌集
はる
題詠『少年』
温かな指を絡めて少年は恥じらいながら糸を紡ぐ
鬱くしきアイドルは舞い客席に黒い写真をばら撒いており
薄暗い曇り空を背景に孤高の塔は天を刺しぬく
薔薇色の頬を歪ませ少年は嫌いな人の髪を睨んで
鮮やかな鐘の音ひとつ聞こえてき雀のように少年群れて
教科書を片手に闊歩す少年の通うギムナジウムのしかめっ面
煌々とさんざめく少年達の巻き毛猫っ毛狂しく跳ね
痛ましい傷を抱えた少年は絹のリボンをゆっくり結ぶ
銀河鉄道の夜に灯る燈は光る頬を撫でていく
白のカラーがはためいて君は午后の授業に出るの?
屋上で空を眺めることでしか快復しない心があって
丸い地球を頬張ってどんな味する? 弟が訊く
亜麻色の髪の少年微笑んで彼は魔性だ気をつけろよ
パレットを抱えてキャンバスに向かう少年の唇は荒れて
宇宙船やがて小さくなる地球いつまでも窓に張りつきみる子は
花畑に座り花環を作る子の首に抱きつく男の子いて
少年は滴るアイスを食べながら大きな夏に包摂されてく
反抗期の目のギラつきを見せながら少年は一人孤独になりゆく
夏と汗 桃と産毛はセットなの 少年と少女並んで寝ており
まんまるの瞳は月のように光り、少年を狼に変えていくの
美しき女性の指を舐めながら赤ん坊は前世の記憶を思い返して
宵月の光はあたりを照らし出し心の闇を追い出していく
理と愛は同じものなり少年は岐路に立って人生と対峙す
オットセイ手を上げ観客沸き立って芸をしこまれ一生を終える
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