シキベタカヲ

第1話 抱いた女が砂になったので、俺はシャワーを浴びた。

「抱いてェ!」

女が半狂乱で俺のアパートに転がり込んできた。


深夜。外は雨らしい。

ずぶ濡れのまま玄関で、俺は彼女が求めるまま、ひたすらに体を重ねた。

「砂になる、砂になる」

ほとんど意味がない喚き声の中で、そのフレーズだけが妙にはっきり聞こえた。

雨の雫。

彼女から滴る全ての液体。

それらが顔に降り注ぐのをぼんやり感じたまま、俺はいつしか意識を失った。


・・・


凄まじい倦怠感と異臭で目を覚ます。

堪えきれず吐いた。

体中にまとわりつく感触、すぐに砂だと理解する。

砂、砂、砂。

全身砂だらけだ。


昨晩のことを断片的に思い返しながら、シャワーを浴びる。

砂は全て排水口に流れる。

現状について、理性は理解を拒んでいる。

しかし、玄関に残る見知らぬ女性物の服。肌を重ねた感触と耳に残る声。

そして、砂の塊。


間違いなく、昨晩抱いた女は砂になったのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る