第24話「訪れるピンチ」
「おお~!スバラシイ眺め・・・!」
道とおるは感嘆の声をあげた。
「何が?」
花成は道が何を言いたいかはよく分かっていたが一応聞いてみた。
「決まってんだろ?豊満な胸、そして、美しきくびれ、艶のある肌に、ハリのある尻!こんなに素晴らしいものが並んでいて、しかもそれが全て俺のものなんて!」
道はニレイや三繰などの水着姿をやらしい目で眺めながら言った。
「俺にはお前が何でまだ捕まってないのか不思議でたまらないよ。」
花成はあきれてため息をついた。
「あ、てか、お前、許嫁いいなずけがいるなんて聞いてねーぞ!三繰先輩一本かと思ったら!」
その言葉に花成はギクリとした。
「だ、だからちげって・・・。あれはい、従姉妹で・・・。」
「お前な~どんだけ従姉妹いるんだよ。金持ちだからって・・・あ、ゴメン。」
「いや、いいんだ・・・。」
長年来の親友である道には花成の家のことは話していたが、それを話すと嫌がるので話さないことにしていた。
それにしても道ほどではないが、まさか一生に三繰先輩の水着姿が見られるなど思ってもみなかった花成は内心喜んでいた。
ニレイやキュウカほどの巨乳・爆乳ではないが、程よく突き出した胸と締まった腹部、形のいいお尻は正直、好きな人でなくとも魅力的だった。
「どうしました?花成。」
三繰に見惚れる花成の目の前にひょこ、と現れたのはハリのある色白の巨乳だった。
「お、おい、ニレイ。なんてところ見せるんだ・・・。」
急に目の前に現れたニレイに動転した花成は慌てて意味不明なことを口走ったが、がっつり道に聞かれていてしらーっとした顔をしていた。
「お前も大概だな。」
と言葉に出さないが道の視線がそう言っていた。
「どういう意味でしょうか?」
ニレイは全く意味が分からないらしくきょとんとしている。
「い、いや、だから・・・その・・・」
もともと女性への耐性が高いとは言えない花成はドギマギしていた。
「・・・花成は可愛いですね。」
「か、かわいい・・・?」
一瞬、ニレイが笑みを浮かべたように見えたがそうではないようだった。
「あ・・・あれ・・・?」
どこを見てもニレイの透き通った肌が目に映るのでどこを見ながら話そうかと迷っていた。
それを三繰は複雑な気持ちで見ていた。
自分は花成に対してどんな気持ちを抱いているのだろうか。
花成が他の女の子と話しているのをみるとぎゅっと胸がしめつけられたようになる。
この気持ちは何なんだろうか。
三繰は自分の気持ちを整理するために浜辺から少し離れた。
しばらく経って花成はいつの間にか三繰がいないことに気づいた。
「あれ?三繰先輩は?」
「そういえばいないですね・・・。」
「ニレイ、ちょっと俺探してくる。」
花成はそう言って先ほど三繰が向かった方向へ歩いていった。
離れて立っていたキュウカとライサはそれに気づいて花成を見ていた。
その時、道路の方で女性の悲鳴が聞こえた。
「三繰先輩!」
悲鳴のほうへ目を向けると何と、三繰が謎の覆面男たちに車に押し込まれているところだった。
「花成君!もが・・・!」
ロープで縛られた三繰は大柄の覆面男にかつがれ車に押し込まれながら花成のことに気づいたが口をガムテープでふさがれてしまった。
「うわ、やべえ、アニキ!男がきやした!」
「何ィ!?すぐ出せ!」
助手席からアニキと呼ばれた男が合図を出すと三繰を載せた車が急いでエンジンをかけ、猛スピードで走り出した。
「先輩!くそ・・・これじゃ見失っちまう・・・!」
花成は追っかけてたもののぐんぐんと離されてしまった。
「どうしたの!?花成!」
花成を追いかけてきたらしく後ろにキュウカがいた。
「キュウカ!実は三繰先輩がさらわれて・・・」
ぜぇぜぇ、と肩で息をしながらキュウカを振り返った。
「えっ!ホント!あの車ね!OK!」
そういうや否や、キュウカは猛ダッシュで車を追いかけていった。
「えっ、でも車だぞ・・・あっ。」
おもわず引き留めようとしたが、花成はキュウカがこの海岸まで家から走ってきたことを思い出した。
人とは思えない、というか人ではないのだが、とんでもないスピードで車をおいかける姿をぽかんとしてみていた。
「ちょ、ちょっとどうしたの・・・。」
2人を追いかけてきたのか、ライサもやってきた。
花成と同様に肩で息をしている。
やはり人間だとここくらいまでが限界だ。
「実は三繰が三人組の男に連れ去られて・・・。」
「えっ!それってまさかさっきの奴ら・・・。」
驚いてライサは先ほどのナンパ男たちのことを話した。
あの時は2人だと思っていたが、3人だったとは。
「ライサ、三繰先輩がつれてかれた場所に心当たりあるか?」
「え、えっとあのチャラ男Aが言うことには岬の下に秘密の洞窟があるとか・・・。」
今まで見たことのない必死な花成の顔にライサはドキッとしながら答えた。
「岬・・・あれか!」
見渡すと海岸線の先にとがった岬があることに気づいた。
「どうするの花成?」
「うーん、あれだ!ごめん、借りていいか!実は・・・」
花成は偶然通りかかって休んでいた自転車ライダーに声をかけ、事情を説明して自転車を借りた。
「えっ、まさかそれで一人で行くつもり!?」
「ごめんライサ!みんなには事情を説明しておいてくれ!俺は三繰先輩を助けに行く!」
そう言って花成は自転車を猛ダッシュでこぎ始めた。
「ええ・・・」
ひとり取り残されたライサは走っていく花成の後ろ姿を見つめていた。
一方、男A、男B、アニキの3人は縛り上げた三繰を連れて岬の下にある洞窟に来ていた。
そこまで深い洞窟ではなかったが、満潮時は海の中に沈んでしまうようなものだった。
「へっへっへ・・・。お姉ちゃん、ようこそ我が洞窟へ・・・。」
男Aは三繰の口のガムテープをはがし、不気味な笑みを浮かべた。
「こ・・・ここはどこですか?私に何するつもりですか・・・?」
三繰は恐怖で震えながらそれだけを絞り出すのがやっとだった。
「そんなに怯えないでいいど?お姉ちゃんも一緒に楽しもう!」
大柄の男Bがにやにやとしながら言った。
「何をするかだって・・・?決まってるじゃねぇか。パーティだ!」
アニキは三繰の問いに答える形でスイッチを押した。
すると洞窟の中に仕込まれていた防水仕様の電灯が点いて、洞窟が一気にライトアップされた。
「フゥー!レッツ パーリナイ!」
ズンチャ、ズンチャという間抜けなリズムとともに男が3人、三繰の周りを謎のステップで踊りだした。
「???」
三繰は訳が分からなかった。
「なんなのアイツら・・・?」
既に洞窟の入り口に着いていたキュウカはその光景を見て少し引いていた。
悪い奴らなのか何なのかよく分からなくなってきた。
しかし、誘拐は事実なので、懲らしめるべきか・・・悩んでいた時、三繰の悲鳴が聞こえた。
「さ、姉ちゃん、お楽しみの時間と行こうか・・・。」
アニキは三繰に近づき縄をほどいたと思うと水着に手をかけた。
「きゃあっ!何するの・・・」
「こら!お前ら!」
三繰の悲鳴を聞いて、キュウカが踏み込んできた。
「おっ!?なんだナイスバディの姉ちゃん!?お前もパーティに参加するかい?」
「ふんっ、こんなしょぼくれた場所のパーティなんてごめんだね!」
キュウカはアニメで見た正義のヒーロー・・・の母親であり、女盗賊のおばちゃんになった気分で言い放った。
彼女自身は気づいていなかったが、世紀のドヤ顔だった。
「私はアンタたちをぶっ飛ばしにきたんだ!」
「はっ、残念だが、女の子ひとりで男さんにんは無理だね!おめーらやっちまえ!」
「へへへ・・・ナイスバディの姉ちゃんすまないがな・・・!」
「一緒に楽しいパーティしようぜ!」
アニキの号令で男A男Bがキュウカに襲い掛かった。
「成敗!」
しかし、キュウカはそう言うと即座男Aを正拳好きではっ倒した。
「ぐぎゃ!」
「ぶぎょお!」
そのままの勢いで回転蹴りで男Bも蹴り倒した。
「つ、つええ・・・・」
男Aも男Bもその場にのびていた。
「お、おめえら・・・!くそ、こいつがどうなっても良いのか!」
アニキは三繰のを引き寄せ、盾にした。
「あ、卑怯者!」
実際のところ、アニキは何の凶器も持っていなかったのでキュウカは反撃しようと思えばできないことはなかったが、何をしでかすか分からないので何もできないでいた。
「へっへっへ・・・!これで形成逆転だ・・・。さぁ、これで自分に縄をしな・・・!ウギャ!」
アニキはその場にあった三繰に巻いていた縄を投げようとしたが、後頭部に衝撃を受け、彼女を放してしまった。
「花成!」
「花成君!」
そう、アニキの後頭部を蹴ったのは、何とか自転車で追いついた花成だった。
「三繰先輩・・・!」
アニキのもとから逃げてきた三繰を花成は抱きとめた。
「助けに来てくれてありがとう花成君・・・!」
「先輩・・・。わっ!」
ほっとしたようすの三繰だったが、水着がはだけ、ほぼ裸になってしまっていた。
暖かい肌が直接触れ、花成はドギマギとどうすればいいのか分からなくなった。
こんな状況でも女性に対する耐性の無い自分がふがいなかった。
「・・・女の子に抱きつかれてヘラヘラしてんじゃねぇ!」
アニキがおもむろに起き上がり、花成を貼り倒した。
「ぐはっ!!」
花成は三繰からひきはがされ吹き飛んだ。
「花成君!」
「花成!」
「へへ・・・さぁ、姉ちゃん!こっちへおいで・・・」
「二度目は・・・ないよ!」
再び三繰を人質にしようとしたアニキをキュウカはかかと落としで気絶させた。
「ぶびゃお・・・!」
奇妙な叫び声をあげ、アニキは撃沈した。
「だ・・・だいじょうぶ花成君・・・?」
「う・・・うん、大丈夫。三繰先輩も大丈夫?」
「うん、ありがとう。」
「先輩・・・その、紐が・・・。」
「あっ・・・」
顔を真っ赤にしながら三繰はほどかれた水着を直した。
花成はその間、自分も顔を真っ赤にしながら目を背けていた。
そんな二人の姿を見ながら、キュウカは不謹慎ながらうらやましいと思っていた。
「私もかよわい人間の女の子だったら良かったのかな・・・?」
キュウカは未来での出来事を思い出していた。
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