第13話「ビトウィーン ホーム アンド セントウ」

花成にとって幸か不幸か、無事に全員保護者の許可が降り、花成の家でお泊り会が決行されることになった。








ニレイと花成は2人で5人分の夕食を協力してつくっていた。




テンポ良く2人で夕食をつくるニレイと花成の後ろ姿を見て道が




「なんだかあの2人夫婦みたいだよなー。いつも一緒に夕飯つくってんのかなぁ。」とつぶやくとライサと三繰の心はなぜかズキと痛んだ。








「わ、私も手伝う!」




「アタシも手伝わないと!花成君たちに悪いし!」




と言って2人はそそくさと立ち上がり、ニレイと花成の手伝いに入った。








「おー、これは期待ですなぁ。」




一方の道は何の気もせず、ゴロゴロとテレビを見ていた。






「ふー、食った食った。」




あきらかに一人暮らし用の食卓にギュウギュウに並べられた夕飯を肩をぶつけ合いながら食べ終え、一同はリラックスタイムを迎えていた。




「オレ、ゲーム持ってきたぞ。ほら、プレイキューブ2。」




道がごそごそと大きなリュックからゲーム機を取り出した。




「だから、お前のバッグでかかったのか・・・。」




「おいおい、床に雑魚寝じゃ可哀想だから寝袋もいくつか持ってきてやったんだぞー。


オレの両親がキャンプ好きで良かったなぁ。」




と、道が3つ収納された寝袋を取り出した。




「そういえば、ベッドと布団1つづつしかないの?3人で住んでるんじゃ・・・」




三繰が見渡したので、慌てて花成は道のゲームソフトを取り上げた。




「よ、よし!やろうぜスマブラ!」




「スマブラ?」




ニレイが聞いた。




「そうそう、対戦ゲームだよ。知らない?”スマートブラウンズ”!」




「スマブラ・・・」




どこかでニレイは聞いたことがあるような気がしていた。


おそらく自分が失ってしまった未来の記憶なのだろう。




「ちゃーんと5人でできるようにGQのコントローラーも」




「おお、やるなぁ!ゴッドキューブのコントローラーってのが分かってるよなぁ・・・!」




「はは、花成、もっと褒めろ。褒め称えろ!このオレを!」




「そこまでじゃねーよ。」




そんなふうにいつも通り繰り広げられる道と花成の仲睦まじい2人のやり取りに皆、笑っていた。








結果として、一番強かったのは、弟がスマブラにはまっていて良く対戦相手をしているという三繰だった。




意外や意外な結果となった。




その後、ゲームも一巡した一行は風呂に入ることになったが、さすがに5人で代わる代わる入るのは現実的ではないとの話になった。








「そしたらさ、この近くの銭湯に行こうぜ!タオルは仕方ないから花成の家にあるやつでも使うか。


花成のいつも使ってるやつなんて・・・いや、ニレイちゃんが使ってるならアリか!?」


「てめえ、使わせねーぞ。」




道が提案すると、一同賛成ということで近くの銭湯へ行くことになった。












「これが・・・銭湯・・・。」


ニレイが銭湯の入り口でぽかんとしていた。




「お、ニレイちゃん、銭湯に入るのは初めて?」




「あ、は、はい・・・。」




入るのが初めてどころか見るのすら初めてだと思うが、これだけ大きい風呂があるというのは不思議な感覚だった。




ただ、完全に初めて見るというよりかは未来のどこかで似たようなものに出会ったことがあるような気もしていた。




あれは何だったのだろうか。












カコーン。




という音が響く銭湯は時間帯のわりには人が少なく、ほぼ貸し切りのような状態だった。








「うわ!ニレイちゃん・・・す、すごいね・・・!」




三繰が何のことを指してるのかは明示されなかったが、その視線は完全にニレイの胸を見ていた。




「確かに、これはGとかHとかのレベルではない・・・とんでもないサイズ。でも三繰先輩だって・・・普通の人に比べたらだいぶあるほうじゃないですか・・・。何カップあるんですか?」


ライサも三繰の胸部を凝視しながらすねたように言った。




「わ、私はEとかFとか・・・、で、でもライサちゃんの細さと白さたるや・・・!透き通っててほとんど透明だよ!どうやったらそうなるの!?」




「え、これは何も・・・」




「はー!出ました、モデルは皆そう言うやつ!むっちり体型の私に嫌味かな!?」


三繰は珍しくテンションが上がりきってしまっていた。




「ふふ。全員体型が少し違いますね。」


「ニレイちゃん・・・油断してると・・・!洗っちゃうよ!って、このハリ・・・大きさ・・・」


三繰がニレイの胸を思い切り揉むと、圧倒的な弾力がその手に跳ね返ってきた。




「い、いきなりやめてください・・・」








「・・・なーんて、してんだろうなぁ。」




道は湯船に浸かりながら女湯のことを想像していた。




「おーい、道。そんなに入ってたら、のぼせるぞー。」




「くっそー、花成てめえ、オレの幸せな妄想に入ってくんなよ・・・!」




「何いってんだ。女子は時間かかるだろうから先に出てようぜ。」




ザバー、と花成はお湯を被った。


あくまでも冷静な花成と興奮気味な道は対照的だった。




「お、お前なんでそんなこと知ってるんだ・・・!まさか、いつもニレイちゃんの風呂を覗き見して・・・!」




「いや、なんでそういう話になるんだよ。脈絡ゼロだな。」




はぁ、とため息をついた。








一方、女湯では道の想像通りのことが行われたあと、長めに貸切状態の銭湯を楽しんでいた。




「うわっ、すごーい、やっぱり富士山!大きい・・・!」




ライサは湯船から壁に描いてある絵の富士山を見上げていた。




実はライサも銭湯に入るのは初めての経験だった。




「横にある松の木のとっても、太い・・・ですね・・・。」


「富士山は分かるんだけど。な、なんかニレイちゃんの視点独特だよね・・・。」




三繰はニレイの発言になにか違和感を感じながらも一緒に富士山を眺めていた。




ニレイは昔、いや、未来にいた時、銭湯ではないがやはり似たような経験をしたことがあるような気がしていた。












「お、きたきた。」




道と花成が銭湯を出て、コーヒー牛乳を飲んでいると3人が女湯から出てきた。




「いやー、良かったよぉ。銭湯また来たいね!」




三繰が楽しそうに跳ねる。








「そ、それは良かった。また、来よう・・・。」




火照った血色の良い肌と大きく揺れる胸部に目が釘付けになりそうだったが、花成は自重して平静を装った。




ちなみに道はガン見していた。








「花成。」




ニレイが花成にこっそりと話しかけてきた。




「私、銭湯ではないですが、似たような経験したことあるかもしれないです。未来で。」




「えっ!そうなんだ。でも、どこで・・・?」




「分からないです。でも、誰かと、数人で確かにこんなことをした覚えが・・・。」




少し考えたが、ニレイはそれが何だったのかイマイチ思い出せなかった。

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