第10話「ロシアンルーレット」
ロシアンルーレットというのは皆さんよくご存知の”キケンな大人の遊び”だ。
といっても決してエロチックでアダルティな比喩ではなく、本格的にデンジャラスな
今回はそんな不幸にぶち当たってしまった男の話をしよう。
「アナタ、私と付き合っているのではなくて?その女は何?」
花成は突然現れた銀髪の美少女に廊下で尋問を受けていた。
「えーと・・・?」
花成は目が点になっていた。
告白をした記憶も無いし、ましてや”ザ・フツメン”と女子会でこっそり揶揄されているほど印象に残らない花成が女子から告白されることも無く、女性と付き合ったことは無かった。
だが、そんな花成に見に覚えもない”自称・彼女”が現れたのだ。
「えーと、君は・・・どなた?」
「まさか!私のことを忘れたの!」
よほどのショックだったのか、大きく身を反らせてその美少女は慄いた。
何だかこのひと、ヤバい気がする。
「ん・・・?」
花成は状況を理解できず、ポリポリと頬を掻いた。
「花成。この方はどなたですか?見たところ一方的な知人のようですが・・・」
横にいたニレイが花成に聞いた。
花成は道が先生に呼び出されていたため、一人で帰るつもりだったのだが、教室を出るときにニレイが呼びかけてきた。
「花成、一緒に帰りましょう。」
美少女転校生と仲良く帰るだと、ザワ・・・ザワ・・・とクラスメイトたちがどよめいているなか、
花成は逃げるように下校しようとしたが、結果的にニレイと帰ることになってしまったのだった。
謎の美少女は口を開いた。
「え、あ、この前、内庭越しに私と目が合ったでしょ?・・・えと、あれは運命よね?」
どもりまくる謎の美少女の問いからしばらくして、花成は声をあげた。
「え・・・あっ!君はあのときの・・・!」
花成は思いだした。
ニレイと初めて出会った時、放課後に見かけたハーフの美少女だった。
あの日は、いろいろなことが一日で起こりすぎて忘れていたのだ。
しかし、花成の学年でハーフの美少女の噂は聞いたことがない。
「私は白洲しらすライサ(=チェニツェフ)。花成、アナタの後輩で運命の相手です。」
ドン、という効果音が聞こえてきそうなくらいの迫力でライサと名乗る美少女はしかし、花成の記憶には目があった程度の記憶しかなかった。
「は、はぁ・・・でもホント名前も覚えていないくらいだし・・・てか、後輩なのになんか、偉そうだな。」
ライサはニレイよりもさらに白く透き通った肌とすらりとしたスレンダーなスタイルが特徴だった。
「ライサ。あなたにはいくつか間違いがあるようです。」
ずっと黙っていたニレイが前に出た。
すわ、これは修羅場か・・・と、その光景を陰から見守っていた花成と同じ2-Aクラスの面々は、期待と心配という二重の意味でドキドキして見ていた。
「まず、私は花成の彼氏ではありません。」
「ニレイ・・・」
キリッと言い切ったニレイによくぞ言ってくれたと花成はキラキラとした目を向けた。
「一緒に住んでいるだけです。」
「オイッ。」
誤解される言い方だ、と花成は隣でこけた。
「そして、花成はライサのことは本当に知らないようです。ライサ(ゾーナ)が花成にあったのはその一回だけですか?」
「・・・。」
「1回会っただけで、ライサが勝手に意識していただけではないのですか?」
「・・・!」
ライサは途端に顔が赤くなった。
「え?そうなの?」
花成はポカンとしている。
「・・・違う。」
「え?」
「え?」
「違うんだから!花成のバカ!」
ライサの目から急に涙が溢れ、ダダッ、とライサは後ろを向いて駆け出した。
が、しかし、ライサはつまづき、ビタンとすっ転んだ。
「・・・大丈夫?えーと、ライサさん・・・。」
「花成のバカ!」
花成が心配して近づき、手を差し伸べるとその手をはたき、ライサは立ち上がった。
「うわっ!」
その勢いに驚き、花成は尻もちをついた。
「・・・いてて、あっ」
上を見上げると立ち上がったライサのスカートの中が見えてしまった。
「・・・ハート柄パンツ・・・。まさか・・・!」
「バカ!」
「ぐっべぁ!」
ライサは思い切り顔面を蹴り飛ばし、花成は変な声をあげて廊下に伸びてしまった。
「大丈夫ですか?花成。」
ニレイが心配して花成をひざまくらした。
「うぇあ・・・」
花成はクラスのみんなが見ている前でこんな姿を晒すべきではないと思いながらも、意識朦朧としてうまく動けなかった。
「やっぱり修羅場だ・・・!」
案の定、クラスメイトたちはひそひそと噂をしていた。
「・・・知らないからねっ!」
一瞬なにか迷ったように見えたが、ライサはぷりぷりと怒って行ってしまった。
「そっか、あの子は・・・。」
ライサが何者か思い出したが、そこで花成の意識は途切れた。
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