第2話「XXX-002」

「ここは・・・2022年ですか?」


机の引き出しから出てきた女性が何の思惑もない顔で聞いた。




「・・・はぁ?」




花成は素っ頓狂すっとんきょうな声を出した。








「・・・・・・。」




「・・・・・・。」




2人とも押し黙って気まずい沈黙が流れた。




机の中から出てきた女性が裸のまま、体を隠す仕草を見せないので、なるべく上のほうを見て、体を見ないようにしていた。




いくら自分の家に急に現れたといえ、ウブな男子高校生の前に女性の裸体は直視できるものでは無かった。








「あの、今は2022年ですけど・・・、どなたですか?お、お名前は?」




ヤバい人なのかもしれない、と花成は思った。




「初めまして。私は高感度コミュニケーション型自律式アンドロイドXXX-002です。」




「えっ。」




「初めまして。私は高感度コミュニケーション型自律式アンドロイドXXX-002です。」


XXX-002と名乗ったその女性は同じことを同じトーンと長さで正確に繰り返した。




「XXX-002・・・。」




「はい。」








「えー、と。」




ポリポリと花成は頭を掻いた。




XXX-002なんて名前のニンゲン、存在するのか。




それとも・・・。




「ふざけてます?もしくは泥棒さん?うちには金なんてほとんどないですけど。」




ニヘラっと無理やり笑って、花成は聞いた。本当の泥棒だったときのために後ろ手で武器になりそうなものを探した。




生憎、ベッドの下には無くしたと思っていた靴下のかたっぽの感覚があっただけだった。








「・・・?ああ、私が来た目的について訪ねたのですね。」




XXX-002は口を少し開けて気づいたように言った。




ぽんと両手を軽く叩く。




その姿は綺麗な大人の女性の見た目とは裏腹に子供っぽくみえた。




「え、あ、はい・・・。」




どうやら泥棒ではなさそうだ。








「私は・・・未来のあなたから、つまり高感度コミュニケーション型自律式アンドロイド研究の第一人者、平山花成博士から




過去のあなたに送られてきたものです。これからお世話になります。よろしくお願いいたします。」




「え、未来の・・・俺?博士??高感度コミ・・・なに、アンドロイド?」




花成はいきなり情報過多になり、処理が追いつかなかった。


全然理解できなくて頭に入っていなかったが、そういえば先ほども同じようなことを聞いた。




「ええ、高感度コミュニケーション型自律式アンドロイドです。花成博士。・・・あっ、今はまだ博士ではないですね?」




「いやいや、良く分かんないんだけど!まず、俺アンドロイドなんて作ったこと無いし・・・それに未来からやってきたって!




そんなこと現実可能なのかよ・・・!いや、まぁあなたが本当にアンドロイドならありえるかもですけど。」




「本当です。私は2056年からやってきました。」




「ていうか高感度コミュニケーションなんたらって何?」




「ああ、高感度コミュニケーション型自律式アンドロイドですね。




そうですね、過去の花成博士にもわかりやすく伝えると・・・ああ、こんな通称がありました。」




「通称?」




「そうです。通称”セックスアンドロイド”。」




「セッ・・・!!!」




花成は驚きのあまりバランスを崩し、ベッドから落っこちた。








「大丈夫ですか?花成博士。」




XXX-002が立ち上がって、ベッドから落っこちて腰をうって悶絶している花成に近づいた。




「ああ、大丈夫・・・。」




ふにゅ、となにか柔らかいものが花成の頭にのっかった。




「これは・・・」




初めての感触に花成がおそるおそる顔をあげていくと、頭の上にのっかったそれはXXX-002の豊満な胸部だった。


その感触は花成がこれまで味わったことのないものだった。






「うわ!ごめん!そういうつもりじゃなくて・・・」




「そういうつもり?」




「い、いや、そういうつもりっていうのはその・・・」




「花成博士、うったところは大丈夫ですか?痛いですか?」




「え!?あ、ああ大丈夫・・・いや、痛いけど。いやいや、そうじゃなくって・・・」




「?」




XX-002はぽかんとしている。




「てかずっと裸だけど恥ずかしくないのかよ!」




「?」




その間ずっと裸で何も隠そうとしないものだから花成のほうが見ないように目を瞑っていた。




XXX-002は全然気にしていないようだった。




「・・・ああ、裸なので羞恥心を感じないかという話ですね。




私は”セックスアンドロイド”なので、むしろ裸でいるほうが自然なのですが、もし、恥じらったほうがいいということであればそういったオプション動作も可能です。




例えば、人気の機体で”ツンデレ”に特化したプログラムの組み込まれた” セックスアンドロイド”のTUNW-014型がおり・・・」




「と、とりあえず!」




花成はスラスラと恥ずかしいことを話しているXXX-002を制した。




「服を着てよ!服を!」




「・・・ああ、服を着ながらのプレイのほうがお好みでしょうか。第三者のいる屋外空間での” セックス”は禁じられていますが、




例えば自宅なら服を着ながらパンツだけを履かないというプレイも可能であり・・・」




「違う!全部着て!あと、そのセ・・・あなたの說明はもう、大丈夫です!」




「かしこまりました。」








すっ、とXXX-002は正座をしてじっと花成を見つめた。








「・・・え、何?」




薄目をあけて胸部を見ないようになるべく上の方、XXX-002の頭頂部を睨みながら花成は聞いた。




「花成博士。服を貸していただけますか?」




XXX-002は最初に会ったときから全く表情が変わらなかった。

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