残り2秒

代り映えのしない毎日なのに、自分は自覚もないまま変化していく。しかも悪い方にだ。


体の疲れは取れにくい。始めたころ以上に布団が恋しい。


 疲れが取れないと言ってもそんな都合は社会は知ったことではない。ワークライフバランスなどという建前を掲げるなら、年齢ごとの労働時間も考えていいはずだ。


 建前は現実の前で無力だ。全く何もかわることなく、今日もラーメン屋の脇をぬけて、職場へ向かう。


 先輩は転勤したり、退職したりで長く残っている人は少ない。ブラックではないといっても業界比の話であって、はっきり言って今の社会は人間に働かせることを想定した労働をしていないと確信する。


 自分もうるさい人間が消えたのでどんどん怠惰になり、弁当は既に仕切りを入れることすら面倒でご飯の上におかずをのせて丼ものもどきを作る始末だ。


 後輩もできたが、その後輩がまた自分よりも仕事がデキる。嫉妬もないではないが、自分の仕事が減るならそれでいい。


 父や母は人並みに、誰よりも自分を愛したのだろう。だからこそ、どうしようもない世界でも子供のころは幸せに生きて、大人になった今でも、不満だらけになりながらも犯罪も自殺もすることなく生きていけている。


 ただ、どうでもよかった。


 彼女は変わることなく僕の側で毎日水を要求し、その対価として安らぐ音を鳴らしてくれる。


それだけは変わらない。幸せだが、その幸せは僕に何かをもたらすことはない。なにもない。僕は何も残せないのだろう。


 それがなんとなし悔しく、しかし、今更何かを為せるような気力も力も僕にはなかった。


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