第22話 ポーションなど要らない
「うお、何かどれも凄そうだな……」
金ちゃんが持ってきてくれた装備類は、いかにも高価で高性能といったものばかりだった。
「すべてミスリル製でござるよ。攻撃力や耐性が向上する魔法付与なんかも施していて、うちで扱っているものの中では一番いいものでござる」
「いや金ちゃん。俺、冒険初心者なんだが?」
「だからこそ、でござろう。装備というのは、良ければ良いほど良いでござるよ。中には装備に頼り切ってしまって地力が育たない場合もあるでござるが、小森殿ならその辺りの心配はないでござろう」
まぁステータスごり押しの戦い方なんてつまらないしな。
早速、身に付けてみると、引き籠りのくせに一端の戦士っぽく見えるようになった。
「意外と軽いな」
「それがミスリルの良いところの一つでござるよ。ある程度のステータスがあれば、重さは全然気にならないはずでござる」
装備している武具はステータスで確認することができた。
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ミスリルソード+5:ミスリル製の片手剣。攻撃力150
ミスリルヘルム+3:ミスリル製の兜。防御力10
ミスリルプレート+3:ミスリル製の鎧。防御力50
ミスリルガントレット+3:ミスリル製の篭手。防御力30
ミスリルブーツ+3:ミスリル製の長靴。防御力20
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「この+5って何なんだ?」
「同じ名前の武器でも+が多いほど性能が高いということでござる。この場合、先ほど言った魔法付与の効果が反映された結果でござるな」
「へえ」
金ちゃんは要らないと言ってきたが、俺はちゃんと代金を支払った。
親しい仲にもなんとやら、だ。
……何となく相場よりかなり安い値を提示された気はするが。
そこは素直に厚意を受け取っておくとしよう。
「とりあえず一番難易度の低いとこから行ってみようと思ってるんだが、どこかいいおススメはある?」
「そうでござるな……普通は王都の西にある『コボルトの鉱窟』を勧めるところでござるが……小森殿であれば、もう少し上級向けでも……」
「最初は簡単なとこでいいって。なにせ職業が『ひきこもり』だからな」
まずはどこまでやれるのか試してみたい。
「あと、できれば顔を隠せるようなものはないか? 万一クラスメイトに会ったりしたとき、説明に困ると思って」
「確かに、『ひきこもり』の能力は誰彼なしに話せるものではござらんな。ただ、『コボルトの鉱窟』にクラスメイトがいることはまずないでござるよ。みんなとっくにもっと高難度のところに挑んでいるでござる」
当初は王宮の保護下で訓練をしていたクラスメイト達も、すでに進路を決定してそれぞれの道を進み始めているそうだ。
王宮に残って騎士をしている者、他国に雇われて去っていった者、自由を求めて冒険者になった者、金ちゃんのように独立開業した者など、様々らしい。
『コボルトの鉱窟』は、そんな彼らが最初に訓練で挑んだダンジョンだという。
それなら誰もいないはずだ。
とはいえ、念のために仮面をつけていくことにした。
一応これで少し防御力が上がるらしい。
「助かったよ、金ちゃん。忙しいとこ悪かったな」
「気にしなくていいでござるよ。商会がこの短期間でここまで発展したのも、小森殿のお陰でござるからな」
「いやいや、あくまで金ちゃんの力だって。じゃあ、またな」
「あ、ちょっと待つでござる。これも持っていくでござるよ」
「これは……?」
金ちゃんから渡されたのは、腰に下げることができる巾着袋のようなものだった。
「リュナ殿が使っていたから見たことあると思うでござるが、アイテムボックスと同じ効果を持つ魔道具でござるよ。一人でダンジョンに挑むのであれば、持って行った方がいいでござる。せっかく手に入った素材やアイテムを諦める羽目になるでござるからな。貸してあげるでござるよ」
「マジか。めちゃくちゃありがたい」
「ポーションも入れておいたでござるから、万一のときは使うでござるよ」
もはや至れり尽くせりだな……。
そうして俺は金ちゃんに礼を言い、ダンジョンへと向かうのだった。
◇ ◇ ◇
友人の背中を見送った金太郎は、ふと思う。
「確か、一日にレベルが1ずつ上がっていると言っていたでござるな。ということは、現在のレベルは……さ、300……?」
ステータスも全項目+1ずつ上がっていくらしいので、こちらも全項目が300を超えているはずだ。
「う、うん……初心者用の『コボルトの鉱窟』なんて、もはやボスも瞬殺できる強さでござるな……。ポーションなど要らないでござるよ……」
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