ヴィジターキラー異空譚「異世界召喚を止める者」
戯言ユウ
第1話 最悪な印象
とある樹海の奥深く。そこに開けた場所があった。明らかに人の手が入っていて、見るからに開墾されていることがわかる。ある人物がこの樹海を開拓して小さな村を作ったのだ。
そんな村は、静寂に包まれていた。作物が植わっていたであろう畑は凍てついていて、辺りの家屋も激しい吹雪に吹き付けられたように氷に覆われていた。熱帯雨林に近い気候の樹海の奥深くにもかかわらず。
「そんな・・・・・・マサト様・・・・・・・・・」
家の壁に寄りかかりガタガタ震えるのは、獣人の少女だ。一見人間と変わりない見た目だが、その頭頂部と尻には耳と尻尾がついている。
彼女以外にもこの村の住人と思われる少女達が居るが、彼女らは全員言葉を失っていた。この場に居合わせている、ハーフの魔族の青年も。
「・・・・・・・・・・・」
彼らの視線が集まる村の中心の広場。驚きと恐怖の視線を一身に受けながら、その青年はズリュ・・・・・・とおぞましい音を立てて長剣を引き抜いた。白銀に煌めく刃から血が糸を引いて垂れる。色あせた金の長髪で白地に金の刺繍で縁取りされたコートを纏う彼は、夥しい血を浴びて紅に染まっていた。
「・・・・・・・・・なぜ殺した」
「コイツが活動を続ければ、この森の生態系は間違いなく崩壊します」
ハーフの魔族の青年、ラドルは唸るような声で青年に問いかけた。青年はヒュンと剣を振るって血を払い、至って冷静に答える。辺りにビッ、と生々しい血痕が刻まれ、その瞳は氷の様に冷え切っていた。
「実際この森を追われた魔獣達が人里に現われ、無視できない被害が出ています。その原因は間違いなくこの村の存在・・・・・・もっと言えば、このクソガキがご自慢の“力”を振るうためです。ですから、このクソガキをどうにかしなければならないのは必然でしょう」
「そんな事は解っている。だからといって、殺す必要はないだろう!!」
「・・・・・・・・・!!」
ラドルはドスの利いた低い声で唸った。ラドルを中心に緊張が広がり、少女達は一触即発の空気にただ息を呑んで両者を見守っている。
そんな緊迫した空気の中、青年は欠片も怯まなかった。怯むどころか、怒りに燃えるような、はたまた哀しみに沈むような、複雑な表情を見せる。
「仕方が無いでしょう。コイツがこのままこの世界に生きていても、コイツは害でしかありません。」
「私達異世界人は、いわば“害獣”・・・・・・・この世界にいてはいけないのです」
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