ハイヒールしかねぇ

食連星

第1話

「ハイヒールしかねぇ!」


「だから言ったじゃない.

あんたも,裸足でからがら逃げて,

ここ来たんでしょうが.

それ履いてゴミ出しお願いね?」


「はぁーーーーー.」


「盛大にため息ついてる場合じゃないでしょ.

これから,あんた,どうすんのよ?」


「あぁぁぁぁっぁぁああぁ!

ゴミ出し行ってくんわ!」


バタン!!!


「静かに閉めなさいよ!!!

壊れるだろうがよっ!!!」


あぁぁぁぁぁ!!!

ムカつく!!!


何がおかしくて,

ハイヒールなんざ履いて

ゴミ出しなんかさせんだよ!!!


誰か見たら…

誰も見てねぇわ.


誰にも見られてねぇから…

こんな事になるんだろうが…

いつも…

いつだって…


んあぁぁぁ

くそっ

止めだ!


一張羅のスーツ…

しわっしわ.

これで寝ちゃったもんなぁ.


これからどうすっかなぁ.

つか,

ステーション何処よ.

降りて?

出て?

右?


あぁ,

これか.


いつまで,

あいつ置いてくれるんだろう.


『私だって,好みくらいあるんだから!』

って言われたし.

あーでも,

『誰でも良い時と,

誰でも良くない時があるんだから.』

って言ってたよね?


誰でも良い時だったらいいのか…

いや知らんけど.


スマホと財布しかないや.


あとは本当なんもねぇ.


だいたい誰かのもんの方が

見てくれるんだよね.

優しい言葉に引っ掛かって,

面白いくらい釣れる.


ゆるい所にいるから,

あまあまなトラップにかかる.

甘い汁は怖いんだ.

いつだって.

あいつだって俺だって.

ふひひ.


「すみません.」


へっ?

何々?

眼鏡のジャージちゃん.


「ごみ捨てたいんで.」


かーーー.

そう言う事ね…


「すみません.

考え事してて.」


営業スマイルも…

全然刺さんねぇみたいだな…

無視か.

虫か.


「ねぇ,どこの人?」

建物指さしながら聞いてみる.


「あ…」


あ…?


「すみません!

キモイんで!!!」

走って行ってしまった…


キモイんで…

キモイ…?


あぁぁぁぁっぁぁああぁ!

ハイヒールか!!!

よれよれながらスーツに…

ハイヒールね…

そりゃ…

キモイわ.


して…

何でピンクなんだよ.

ぐぅの音も出ねぇわ.


何か…

マジで疲れた.

戻ろ…


降りよりも,

上りの方がふくらはぎにこないか?

ハイヒール人口,

これ…

ずっと履いて動いてんの?


世の中

知らん事が沢山あるな.

知らんでいい事も沢山あるけど.


ふんふんふん♪

「捨ててきたよ.」


「何か良い事あったの?」


「ん?

いや逆逆.

凹んで戻って来た.」

へらっとすると,

気持ち悪そうに

「あんたでも凹む事あるんだ.」


切り返しが…

拙いわ.


「それ!

傷付いた!」


「張り切って言わないでよ…」


だなー.












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