第6話 ポスター

学生自治会役員の真鍋まなべさくら六車むぐるまたまきは、内山会長と別れて、二人で学生寮に戻った。

玄関を入ってすぐの掲示板の前で、学生寮担当の佐藤先生が掲示物を貼る作業をしている。この時期の掲示板は、新入寮生向けにいろいろと掲示物が貼られるので、とてもにぎやかだ。


「佐藤先生、こんちは」

「おう。真鍋、もう引っ越しは終わったのか?」

「あ、いえ、まだ部屋に荷物が残ってて、それを取りに来たんです」

「退寮したとはいえ、二年も住んでいたんだ。いつでも寮に復帰していいんだよ」

「いやあ、両親の方針でそういうわけにはいかないんです。私が原級したのも寮のせいだと思ってるみたいで」

ハハッと愛想笑いをしながら答えた。


桜はつい最近まで学生寮に住んでいた。けれど、両親から寮生活をやめて自宅から通学するように言われ、退寮を決めた。寮生活は周りに友人が多いから、勉強せずに遊んでばかりいたのだろうと両親は考えていたようで、実際、その通りだったので、桜もあまり反論することなくそれに従った。その代わりに通学用として古い自動車をもらったのだ。


「先生、そんな雑用、私がやるよ」と環。

「ありがとう。でもこれで最後だから大丈夫だよ」と言うものの、佐藤先生が手にしていた最後の一枚はA3サイズの大きめのポスターで、貼るスペースに困っているようだったので、他の掲示物を詰めてスペースを確保するのを手伝うことにした。


なんとか確保できたスペースに、ポスターを貼ることができた。

「第一回アイアンレース?」


環はポスターを見ながらポスターを読み上げる。そこにはレーシングカートや、自転車、ヨットらしきもののイラストが所狭しと描かれている。


「ああ、今年から始まるそうだ。俺も詳しくは知らないけど、手作りの自転車とヨットとレーシングカートで競うレースだそうだ。いってみればトライアスロンの高専版といったところかな」


手作りの乗り物で競うとはいかにも高専らしい――と、思った瞬間、桜はふと閃いた。高専らしいということは、高専ならではのイベントということで、それはつまり、今まさに探し求めていたものに他ならない。


環もそう思ったようで、思わず二人で「これだ!」と叫ぶ。佐藤先生は、二人の意外な反応に驚いたようだ。それにはかまわず、環は佐藤先生にさらに質問を重ねた。

「大会の詳しいレギュレーションって分かりますか?」

「詳しい情報は、たぶん、大会の公式サイトに出てるだろう。あるいは、内山なら知っているかもしれない」

「学生会長が?」

「うん。内山に、このポスターを寮に貼ってほしいと頼まれたから」


会長も人が悪い。知っているなら会議のとき教えてくれれば良かったのに。

「先生、ありがとう!」

「え? ああ、こっちこそ手伝ってもらってありがとう」

一体何がそんなに興味をひいたのだろうかと不思議そうな顔をする佐藤先生を後にして、二人は環の部屋に向かった。

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