第15話 気づき3

「僕も撮ってみます」

 一枚撮影してみた。何も考えず、上から撮影しただけだが、初めての撮影ということもあってか、良い写真に感じた。

「駿河が記念すべき一枚目の撮影もしたし、いただきまーす!」

「いただきます」

 早速筑前煮をいただく。食べたのは一口大の鶏肉。味がしみ込んで、しっとりやわらかい。

「おいしいです……!」

「だろ?」

「桂さん、お料理上手なんですね」

「驚いたか~?」

 ここで正直に「はい、意外でした」と言っていいものかわからないが。

「普段のワタシからは想像できないって言いたいんだろ。あまりにもワタシがガサツだから、お母さんから家事はしっかり出来るように仕込まれたんだ」

「なるほど」

「駿河のもうまいぞ。やっぱ、みそ味はご飯との相性よすぎて箸が止まらなくなるよなぁ」

「ありがとうございます」

「このレシピ教えてくれよ。ワタシも作りたい」

「あとでレシピサイトのURLお教えしますね」

 そういえば、手料理、初めて食べてもらったのではと、気づいてしまうと少し照れてしまう。おいしいって言ってもらえると素直に嬉しいものなんだな。

「ちょっと待て駿河」

「なんです」

「お前まさか……しいたけ嫌いなのか?」

「……どうしてそう思うんですか」

「筑前煮のしいたけの量があきらかに減ってないからだ」

「桂さんが食べてないだけでは?」

「いや、食べてるんだけど?」

「……」

「都合悪くなったら黙るとか子どもか⁉」

「実家にいるときは無理やり食べてましたが、こうして僕は一人暮らしを始めたんです。食べる、食べないのは僕の勝手です」

「駿河って好き嫌いなく食べそうな顔してるのにな」

「顔で判断しないでください」

「食べてみろよ」

「嫌ですね」

「美味しいかもしれないのに」

「姿かたちが見えてる時点で無理です」

「見えてなかったらいいのかよ」

「見えず隠れているならいいですよ」

「今だって、目つむれば解決だろ」

「いやいやいや、そういう問題じゃないです」

「そんなに嫌いなのかよ」

「そうですね。理由はわかりませんがDNAに刻まれてるみたいで、昔から好きではないですね」

「嫌いな理由壮大に言うやつはじめてだよ」

「そんなこと言うなら、桂さんは嫌いな食べ物ないんですか」

「この流れで言ったらワタシの立場ってものが」

「ということは嫌いな食べ物があるってことですね」

「そ、そうとは限らんぞ」

「ま、いつか自分からボロが出るのを待ちますよ」

「絶対言わねぇもんね」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る