第4話 タカモトコレクションと深夜の来訪者 その2
いったいいくつ部屋があるのよ――。
調べるたびにちがう部屋。目指す収蔵庫はなかなか見つからない。
うんざりしてきた琴美がドアに手をかけた瞬間――。
屋敷内の明かりが一斉に光を放った。
「うそっ? 見つかった?」
あれだけ堂々とのし歩いておいて見つかったもなにもないのだが、のんびりかまえていられる状態でもない。
反射的に手を引っ込めると、いま来たルートを戻るように一目散に走り出す。
ひたすら走り続け、ようやく最後の角が見えてきた。あの角を曲がれば脱出できる。琴美はスピードを上げた。
不意に――。
その角から人影が現れた。
まるで金縛りにあったようにピタリと足が止まる。
黒いスーツに黒ネクタイ――どう見てもお友達ではないし、好みのタイプでもない。
気まずい沈黙が流れる。
とりあえず笑顔をつくってみたが、何の効果もなかったようだ。
考えるより先に体が動いた。
くるりと踵を返すともと来た方へと駆け出していた。黒服の男もすぐに後を追う。
どうせ追われるならもっとイイ男に追われたいが、贅沢を言っている余裕はない。
バン!
突然、後ろで激しくぶつかるような衝撃音が響いた。
驚いて振り返った琴美の目にいきなり開けられたドアと、それに激突した黒服の男を殴り飛ばしている着物姿の老人が飛び込んできた。
「大丈夫か、お嬢さん」
老人は何事もなかったかのように大声で訊いた。
「ええ、助かったわ」
あらためて見た老人の体つきは意外にがっちりとしたものだった。白髪のほうが多くなった髪とたくわえられたひげのせいで老人だと思ったが、存外若いのかもしれない。
その老人の目が彼女の後方に注がれる。
足音がする。どうやら新手らしい。
琴美は腰のベルトにぶら下げてあった黒い塊を足音に向かって力いっぱい投げつけた。
塊が落ちるのを見ずに老人のいる方向へと走り出す。
「行きましょ」
琴美の投げつけた塊が床にあたって強烈な閃光を発したのと、黒服たちが影から飛び出したのは同時だった。
「うわああぁ!」
男たちの悲鳴が聞こえた。
光が収まったときには、すでに二人の姿は消えていた。
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