第四話 再会のち、会議
雹と再会出来て……その……恋人、になった後。
ウィア、と呼ばれていた側近のエルフと一緒に、ひとまず落ち着ける場所に……と、俺たちは砦の中の会議室らしい場所に移動していた。
「ホットココアです、よろしければ」
「ああ、ありがとう」
ウィアさんが渡してくれたマグカップには、言葉通りココアが入っていて。
ちび、と飲んでみると、暖かな甘さが広がった。
「さて……何から話そうか」
「とりあえず、改めて自己紹介をしたらどうだ? 俺と……ウィアさん、でいいかな? はまだ知り合って間もないし」
「そうだね。ウィア、自分で言う? それとも僕が説明する?」
「私が。……では、改めて。私はウィンカシュア・ヴァンリーベ。どうかウィアとお呼びください。……こんな風に男装してはおりますが、女です」
「えっ」
鮮やかな緑色の髪を短く刈り上げ、服は飾り気のない質素なズボンと長袖のシャツ、その上に要所を覆う動きやすそうな革鎧、という出で立ちの彼女は、そうと知って見ても女性には見えない男装ぶりだ。
つまりは、全然気づかなかった。
「ウィアは風エルフの一族の長の娘だから、風魔法を使わせると結構強いよ」
「光栄です」
なるほど……。綺麗な色の髪だとは思っていたが、王族だったのか。
ここで少し、この世界におけるエルフについて説明しよう。
尖った耳に、年若い見た目で数百年を過ごす長命な種族である、というのは王道のファンタジーと変わらないのだが……。
髪と瞳の色に、得意な魔法が色濃く出るのがエルフの特徴である。
風魔法が得意だから緑、水魔法が得意だから青、闇魔法が得意だから黒……というような感じだ。
二属性を使えるエルフに至っては、色が混ざるらしい。水と風が使えるエルフは青緑の髪を持つ、というように。
メッシュを入れたように綺麗に色が分かれることもあるらしいが……。それは蛇足だろう。
そのように得意分野が見た目に出るエルフは、やがて自然と派閥を作ったらしい。
その派閥は、やがて集落を分けるという形となり、彼らはやがて自らを「風エルフ」「水エルフ」というように、派閥によって……つまりは育った集落によって、そう呼び分けるようになった。
そして、各集落の長……それは魔法の強さによって選ばれ、そして魔法というのは血による才能が強さの比重を占める技術である。そのため、長の直系はその強さから「エルフの王族」と呼ばれている。
……と、そういう訳で、緑の髪と瞳を持つウィアは「風エルフ」であり、また彼女は風エルフの集落における長の娘であるらしい。
何故集落で大事に育てられるはずのエルフの王族がここに……と思わなくもないが、上のきょうだいが居るかなにかの事情で、外に居ても支障はないのだろう。
「光?」
「あ、すまん。考え込んでた」
「次は光の番だよ?」
首を傾げる雹にそうだな、と頷いてウィアさんに向き直る。
「えーと、空澄光……こっち風に言い直せばヒカル・ミスミか。雹と同い年の高校2年生、男のフリをしているが生物学的には女だ。雹以外の男は嫌いだ。あ、あと、召喚体質で、この世界には前も召喚されている」
「
「ああ、やっぱ知ってるか。それだ」
魔王討伐をして、魔王の被害を受けて俺を召喚した国の立て直しの手伝いをした、というだけなんだが。
ばっちり伝説に残っていたので、すぐにこの世界が以前召喚された世界だ、ということは分かったのだ。
……結構美化されていたんだが……雹には分かったんだろうな。
「……えっ」
「? ウィアさん?」
何故か固まってしまったウィアさんに首を傾げる。
「ウィア、光の勇者の伝説が大好きみたいだからね。ちょっと待ってあげて」
笑いを堪えるような声での雹の説明に納得はしたが……うわあ、マジか。
「ウィアが復活するまで、召喚について話を聞いていい?」
「ああ、もちろん。元の世界に帰るためには、召喚された理由である問題を解決する必要があるはずだ。特に多いのが魔王討伐だな」
大体はしっかり消滅させるんだが、確かこの世界は当時の王の願いで封印という形を取ったはず……と雹に話す。
「封印が綻びたのではないとしても、新しい魔王が発生したから俺が召喚された……という可能性は否めない」
「なるほど……じゃあ、とりあえず魔王について調べてみるのがいいかな」
「そうだな」
「では魔王について調べてまいります!」
風のような速さで走り去ったウィアさんを見送って、2人で顔を見合わせた。
「話、聞いてたんだな」
「みたいだね」
――――――――――
補足コーナー
・
300年前、光魔法を自在に操り魔王を討伐した勇者の伝説。
事実を元にしたおとぎ話として世界中で親しまれ、子供たちにも人気の話。
年月の経過で色々誇張されたり美化されたりしているが、過去の
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