故意恋
バブみ道日丿宮組
お題:闇の笑顔 制限時間:15分
故意恋
いっそのこと消えてしまえれば、よかったのに。
「……ねぇ、起きてよ」
動かなくなった彼女は、やっぱり動かない。
就職内定の結果を持って帰還してみれば、彼女は死んでた。
交通事故だった。アル中の信号無視。
痛むことはなく即死だったと言われてるが、医者のいうことは信じられない。
母は助かりますという手術で亡くなったし、父は薬の副作用で心を失った。
不幸の世界に生きてるのだろうか。幸せになってはいけないのだろうか。
わからない。わかりたくない。許して欲しい。願いを叶えて欲しい。同じ場所にいきたい。
「ーー先輩死んじゃったんだ」
声に振り返ると、彼女の後輩が立ってた。
「あたしに勝ち続けたのに、あっという間に死んじゃうなんてくそ弱」
くくくと後輩は笑った。
「大体買い物に行くのに、遠回りするなんて洒落こんでるのがいけないんだよね。ドライバーもきちんと運転したみたいだし、あたしの勝ちでいいかなぁ」
慰安室に入ってくると、後輩は彼女の頬をつねった。
「冷たいね。こうして触るのははじめてだけど、意外に人間っぽいところもあるんだね。事故で死なないと思ったのにな。おっかしいな。病室で再会して、どうだったか聞こう思ったのに。残念、残念」
何をいってるのだろうか。
「知ってる? あそこ車が通っちゃいけない場所なんだよね。そんなところ普通のドライバーが通るわけないじゃない。そりゃぁアルコール入ってたけど、通れないところを通ろうとするぐらいの意識はあるわけよ。つまり、故意に入ったってこと」
どうしてそんなことを知ってるのか。
それはまるで彼女が後輩に殺されてしまうではないか。
「先輩のご主人さま。偶然ってことは起こらないよ。あるのは必然だけ。運が悪いとかいいとかないの。最初から最後まで決まったルートを生き物は過ごしてる。つまり先輩は死ぬ運命だったわけーー」
後輩の肩を掴むと、そのまま身体を壁に押し付けた。
「いったいなぁー。もしかして、ここでセックスしちゃう? 先輩の前でNTRセックスしちゃう? あはは、それもいいかもね」
力が入る。
「気持ちよくしてよね。先輩はあれで、結構ませてたからね。いろんなことしたんでしょ? いいよ、あたしにしても。誰にも言わないでおいてあげる」
涙がこぼれた。
「あれれ? やめちゃうの?」
手を離す。
ここで後輩になにかをしたとしても、彼女は帰ってこない。彼女がそれを望むわけでもない。
「ふーん。残念だね。ご主人さまの感度を知っておきたかったけど」
口端があがる。
「おいおい時間かけてもいいかな。じゃぁね」
そういって、後輩は出ていった。
慰安室に残った俺は、なんともいえない気分に陥った。
故意恋 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
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