異世界転生でスキルなし魔力なしだったんだが!? ある日出会った美少女魔人は魔力が多すぎると死ぬらしい 魔力をキスで供給され、最高&最強な件

rapipi

第一章 魔人との出会い

美少女にキスをせがまれているんだが!?

 俺の名は五十嵐圭。

 どこにでもいるサラリーマンだ。

 名字を読み間違えたら恥ずかしいといった、特殊であり誰もが読み間違えないようにする名字。

 といったところ以外はいたって普通である。

 ある日、俺はトラックに引かれて死んだ。

 猫や子供を庇ったわけでもない。

 さらに付け足すと俺はしっかりと青信号を渡った。

 居眠り運転かはたまた飲酒運転か。

 どちらにせよ俺の人生は終わったわけだ。

 まあでも三十代半ばにして童貞。

 顔ももちろん良くない。

 毎日、残業、残業。

 仕事後の一杯と推しのグッズを買い集めることしか楽しみがない人生だった。

 別にみじめだとかは思わない。

 ただ、高校時代の同級生から結婚の報告を受ける度、祝福すると同時に胸の奥がきしむように痛くなる。

 だからまあ、転生して一からやり直すのも悪くない。

 俺はある一般の家庭に産まれる。

 チートスキルが与えられるんじゃないか。

 工夫次第で強いスキルが与えられるんじゃないか。

 そんなことを考えていた。

 そして十年後。

 いっこうに何のスキルを取得したのかわからない。

 ここ五年も探し続けているというのに。

 全身に力をいれても何も起こらない。

 甘かった。

 ある日、国の健康診断が行われた。

 俺が十一歳の誕生日を迎える少し前だ。

 俺はウキウキしながら健康診断を受けた。

 普通に健康を診てもらうだけではないからだ。

 この世界では健康診断は潜在スキルや診断を受けた人の保有する魔力量も調べる。

 結果。

 潜在スキルなし。

 魔力量は一般人以下。

「先生、何をおっしゃっているんですか?」

 俺は何度となく医師に聞いた。

「だから、君はいたって普通の人間なんだ。スキルはないし。魔力量もゼロに近い」

 医師はイライラしながら答える。

 俺はゲームのキャラクターのように同じ言葉をひたすら繰り返していた。

 完全に一般人だった。

 

 ショックで三日ほど食べ物の味がしなかった。

 落ち込んでいても仕方ない。

 俺は両親に剣士育成学校に行かせて欲しいと頼んだ。

 両親は快く許してくれた。


 そして五年がたち、今に至る。

 学園の練習場で木製の人形に剣を振る。

 大分剣術は身に付いたものの、魔法が使えなくては戦えない。

 どうしたものか。

 寮への廊下を歩きながら考える。

 そして、俺をもう一つ悩ませてることがある。

 後方十メートルあたりに何者かの気配を感じる。

 気配を感じるというよりもいる。

 確実にいる。

 正確に言うと左斜め後ろの柱の裏にいる。

 稽古をしていた時に見かけた少女だろう。

 桃色の髪のポニーテールに水色のリボン。

 細い足、白のシャツに紺のスカートを履いている。

 白いはだに丸い青色の瞳。

 整ったかわいい顔をしていた。

 その少女の美しさに稽古に集中できなかったのだ。

 よりによって何で俺のことを尾行しているのだろう。

 寮につくと大広間を通り、階段を登って自分の部屋へと向かう。

 後ろからカタカタと音がついてくる。

 これでばれていないとでも思っているのだろうか。

 俺の部屋に来るつもりなのか?

 いや、ないない。

 そもそも話したことすらない。

 きっと同じ寮の同じ階なのだ。

 きっと。

 俺は鍵を使って自室の扉を開ける。

 後ろからダッダッダと走ってくる音がする。

 俺は急いでドアを閉めようとする。

 さっきの少女が閉まりかけたドアを掴み、無理やり開けようとする。

「お客様、駆け込み乗車はおやめください!」

 俺はあわてて閉めようとするもびくともしない。

「駆け込み乗車? なんのことかわからないけど今すぐ開けて欲しいの!」

 とっさに毎日聞いていたアナウンスが出てしまった。

 彼女は本当に駆け込み乗車を連想させるようなタイミングできたのだ。

 俺は力に自信があるわけでもない。

 それにしても、ドアを閉めようとしても全く閉まらない。

 むしろ、こじ開けられてきている。

「わかったわかった。話だけ聞くから」

 俺は観念して少女を通した。

「手短に言うわ。私とキスして」

 は!?

 何を言っているんだこの女は。

「私の名はエマ・シェーロン。魔人よ。もう魔力が体にたまりすぎてるの。このままだと死んじゃう! でも、あなたとキスをして魔力を減らせば逃れられるの。だから、お願い!」

 エマと名乗った少女は早口に言った。

「そんなこと言われても。んっ」

 エマが唇を俺の唇にあてている。

 そのまま数秒ほどたった後、エマは俺の首の後ろにまわしていた手をほどき、唇を離す。

 俺は驚きで動けなくなっていた。

 やっと止まっていた思考が戻った。

「な、何してんだよ!」

 頬が熱い。

「ごめんなさい」

 エマが顔を真っ赤にして言う。

「急に押し掛けてしまって。でも、こうするしかなかったから」

 少女は申し訳なさそうに言う。

「いや、俺はいいんだけど。むしろうれ……。それよりエマはこんな俺なんかとキスして大丈夫なのか?」

 大体なんで俺なのだろう?

「いやーべ、別にー? 私はレ・デ・ィ。大人の女ですからー。キ、キスぐらいするし!」

 よくいつもしてるけど、たまたま限界が来たときが俺と会った時だったのか。

「それじゃ私は帰るから」

 エマは部屋から出る。

「じゃあな」

 俺は手を振る。

「あ、あのさ」

 エマがもじもじしながら言う。

「何?」

「また、魔力がたまったら来てもいい?」

 エマが上目遣いに聞いてくる。

「い、いいけど」

 正直、エマとのキスは良かった。

「そっか! ありがと! また来る」

 エマはそういって早足に階段を降りていった。

 ドアを閉め、壁に背中をもたれかけて座る。

 かわいかったああああ!

 何今の?

 ご褒美すぎるんですけどーーーーー!

 十六年生きてて良かったー!

 もう幸せ。

 ベットに横になってからもなかなか眠れない。

 エマのいい匂いと唇の感触が忘れられない。

 今なら死んでもいいと思える夜だった。


 後日、健康診断が行われた。

 結果。

 俺の保有する魔力量は人の域を越えていた。
















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