赤緑の願掛け

葵流星

赤緑の願掛け

2020年12月31日


北海道は、寒かった。


故郷である東京を離れ、俺は一人北の大地へと向かった。

理由は仕事である。

ここ数年はいろいろあったが、まだ独り身だった。


東京には帰りたかったが、covid-19、新型コロナウイルスというウィルスのせいで今年は帰れなかった。

本当は、夏に一度帰りたかったのだが、電話だけだった。

それでも、両親から荷物が届いたりと少なからず、繋がりを感じられていた。


今日は、早く寝ればいいもののなぜか眠れないので、年明けまで起きるつもりだ。

友人からもメッセージがくるだろう。


部屋を暖かくして、テレビを見ていた。

テレビでは、バラエティー番組がやっていた。

パソコンかスマートフォン、もしくは端末のモニターで今年入会したサブスクリプションのサービスから好きな映画見ればいいものの、それもしなかった。


ともかく、何もやる気が起きなかった。

ただ、どこか心細いというか…部屋に何か怖い物でも居るんじゃないかと思うくらいに心の中に重いわだかまりがあった。


それは、何か毛玉のように複雑にこんがらがっていて、規則性のあるようで無規則なものが、自分の心に引っかかっている。


そんなわけで、炬燵に足を入れ、テレビを見て…それで、年越しそばを食べることにした。


そばと言っても、インスタントで電気ケトルでお湯を沸かし、ついでにうどんも食べる。


これは家の習慣で、父が言うには『細々と長く生きるよりも、力強く長く生きた方がいい。』ということだ。


でも、実際はというとそばだけじゃ、物足りないということだ。


まあ、普通に考えれば歳を越せただけ良いものだと言えるだろう。


今年は、何かと不自由だった。

来年こそはと…ただ、そう思う。


まずは、そばを食べて…その後にうどんを食べる。


ケトルが小さいので、もう一度お湯を沸かし、また待つ。


そばの残りのつゆをすすりながら、待って…。


蓋を外して、お揚げをうどんのつゆに浸し、熱い状態のまま食べる。


あとは、ただ黙々と食べ…片づけをして、テレビの前へ


少し、眠くなってきたが0時を超え、2021年を迎えた。


俺は、友人からのメッセージを確認して、疲れたので眠ることにした。


1月1日は、少し寝すぎた。


でも、いい年明けだった。



1年後、2021年12月31日。

再び俺は、テレビの前に居た。

2022年、こそは東京に戻ると…そう思いながら、そばと、うどんを食べた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

赤緑の願掛け 葵流星 @AoiRyusei

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ