第21話 一緒に
最高幹部たちは、一斉に俺の方向を見て、決断を促す。
「わかりました! 向かわせていただきます」
俺はうなずいた。ニコライに代わる協会最高戦力として責任を果たさなければいけない。
「ありがとう、アレク官房長。それで、同行する者ですが――」
副会長は会長と人選について話し合いをする。
「もうひとりの戦士は儂が用意してある。おそらく、最高の人選だ。アレク官房長と一緒に副会長が第七艦隊で、北大陸へ運んでくれ。あとは神官を二人だ。序列が高い神官で誰か協力してもらえる者はいないかね?」
「なるほど、確かに神官なら疑似"
「その通り。アレク官房長は、剣も魔法もどちらでもできるので、近接から遠距離攻撃までひとりで対応できる逸材じゃ。もうひとりの護衛は、近接戦特化を選んでおいた。神官ならある程度の遠距離攻撃も可能なので、ひとりくらいは近接白兵戦の専門家が必要だと思ってな」
神官二人は、言葉が悪いが、スペア込みということになってしまう。もしもの場合は、どちらかだけでも生きてヴァンパイアに聖魔法をぶつけることができればいいということ。
リスクが高い強襲だからこその判断だろう。
そして、俺の後輩が付いてくるというのも分かっている。この場で神官職は数人いるが職業内序列的にトップ5に入っているのは、ナターシャ(5位)とマリア技術局長(3位)くらいだ。
他の上位神官は、各地の大聖堂にいるため招集に時間がかかる。
ふたりは「もちろんです」と、同行を志願した。俺はその返事に一抹の不安を覚えてしまった……過保護すぎるかもしれないけどな。
「問題は、数が多くなる眷属たちの相手を誰がするかですね。局長たちによる陽動部隊を編成しますか?」
情報局長はそう提案する。
「いや、最悪の事態に備えて、局長たちはできる限り本部待機を願うよ。もしかすると、作戦失敗で会長以下トップ3名が壊滅する可能性もある。艦隊には、ニキータ地方統括局長のみ同席してくれ。私たちの不在の間は、会長の職務代理は、ヨシフ官房審議官にお願いしようと思う」
官房審議官は無言でうなずいた、かなり無口な人のようだ。
「では、誰が陽動部隊を?」
「やる気満々のひとがひとりいるだろう?」
「まさか――会長、おひとりで、数百の眷属を?」
「そのまさかじゃ。儂が、ヴァンパイアの本陣めがけて、単騎で突入すれば、さすがにあいつも眷属たちを集中的に投入してくるはずじゃ。儂も一応、魔物に顔が知れてるからな~。護衛の眷属は、これでかなり少なくなる。そこを狙って、強襲チームが敵の本陣に突入してくれ」
「……」
そりゃあそうだ。ニコライとともに、人類側の秘密兵器のひとりなのだから。
理路整然としているが、正直ダイナミックな作戦だ。完全に個人の力でどうにかしようとしている。まあ、どうにかできてしまうのが、世界最高の人材が集うギルド協会だからこそなのだが――
「それでは、艦隊の出撃は明朝の6時とする。各自休養を済ませておいてくれ」
こうして、会議は解散し、俺たちは協会が用意してくれた宿に仮眠を取りに向かった。
※
―イブラルタル市内―
俺はナターシャと夕食を済ませて、宿に向かう。出撃まで、あと10時間。
「なあ、ナターシャ?」
「どうしたんですか、先輩?」
「もし、俺がこの作戦に参加しないで欲しいって言ったら怒る?」
「怒ります」
彼女は、どうしてそんなことを言うのかと抗議の目で俺を見つめた。
「この作戦は危険だから、もしナターシャのことを守り切れなかったらと不安なんだよ」
「大丈夫ですよ、先輩が守ってくれるんですから!それに――」
「それに?」
「私の、私たちの夢のために、頑張ってそれで死ぬなら、それでいいかなって!間違いなく先輩の胸の中で死ねますし、未練はありませんね」
「女神官とは、思えないほどの男らしい答えだな」
「先輩と、一緒なら、どんな地獄でも怖くないんです!」
「ありがとう」
「私を置いていって、先輩が死んだら、私、先輩の後、追っちゃいますからね」
「重いな~」
「重いですよ、だってずっと好きですから」
そう言って、ナターシャは頷いた。
―――
設定資料公開
<ギルドカード>
氏名:マリア
職業:神官(職業内序列3位)
ギルドスコア:680(A級)
能力
体力:550(世界ランク690位)
魔力:830(世界ランク18位)
攻撃魔力:700(世界ランク89位)
治癒魔力:910(世界ランク3位)
補助魔力:810(世界ランク19位)
魔力防御力:740(世界ランク21位)
総合白兵戦技能:350(世界ランク測定不可)
総合白兵戦防御力:250(同上)
知力:880(世界ランク39位)
総合能力平均値:668
総合能力ランク:361位
判定:A級中位相当(※冒険者クラス認定は本人の能力以外に実績も反映されるため、この判定はあくまで参考です)
主要実績
・ギルド協会技術局長(現職)。
・魔術ネットワークシステムの構築。
・バル攻防戦で、臨時後方支援部長を兼務し、補給分野で要塞を死守した。
―――
<ギルド協会所掌事務>
会長官房(トップ:アレク官房長・ヨシフ官房審議官(官房長の補佐))
・総務
・作戦立案
・機密に関すること
・危機管理
・各種予算
・人事
・広報
・対外折衝
・秘書
技術局(トップ:マリア技術局長)
・魔術ネットワーク
・通信網の確保
・郵政
情報警備局(トップ:イーゴリ情報警備局長)
・魔王軍に関する情報収集
・テロ組織・過激派の監視
冒険者監理局(トップ:ユーリ冒険者監理局長)
・冒険者名簿の管理
・ギルドポイントの管理
・能力判定試験の運用
地方統括局(トップ:ニキータ地方統括局長)
・各支部の統括
・クエスト管理
―――
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