第12話 最強vs世界2位

 ニコライも、剣を抜いた。首のあざをかいていた。


 ニコライはいつもの練習試合のようなものではなく、間違いなく俺を殺そうとしている。もう、逃げることはできない。


「いくぞ、アレク」

 ニコライは一気に俺に接近した。俺は、セオリー通り攻撃をかわす。

 まともに受け合っていては、間違いなく力負けする。


 つばぜり合いでも起こそうものなら、ニコライの抜群のパワーでそのまま押し切られてしまう。だから、俺は受け流していかなければいけない。最強クラスの剣速を――


「逃げてばかりだな、アレク。このまま押し切っちゃうぞおおおおおおお」

「言ってろ」

 勇者の攻撃は、まったく隙を見せない。連撃スタイルだ。お互いに手の内がわかっているからこそ、ニコライの戦闘スタイルは本当に脅威だ。


 あいつは、パワーもあるが、一番のウリは、その攻撃の連撃スピード。俺が攻撃をかわしても、天性の体幹の良さで、ほとんど姿勢が崩れない。だから、カウンターなど容易に仕掛けることはできない。


 剣技と白兵戦において、総合力ではボリスに若干劣るが、手数の多さはまさに世界最強。俺の知っている剣士の中でも、最もオフェンシブで華がある戦い方。俺は、地味なカウンター特化型のディフェンシブなスタイルなので、まさに対極にある。


「なによ、やっぱりアレクは防戦一方じゃない。あれで世界2位なんて、はなから可笑しかったのよ。やっちゃえー、ニコライ」

 女賢者エレンの歓声が、俺の意識に若干のスキを生ませた。


「しまっ――」

 剣をかわして、安心したが、ニコライは勢いそのままに、反動まで利用して回し蹴りを俺の脳天に向けて打ちこんでくる。


 受けるか?

 それとも、当たるか?


 瞬時に判断が求められた。


(ダメだ、受けたらそのまま持っていかれる)

 俺は覚悟を決めて、無防備にニコライの回し蹴りを受け入れた。凄まじい衝撃が、俺の側頭部に直撃する。


「ぐはぁ」

 俺は、数メートルほど吹き飛ばされた。


「やったー さすが、ニコライ」

「センパイっ」

 外野の声が聞こえる。よかった、どうやら失神はしていない。それが考える上で、最悪の状況だった。。俺はすぐに態勢を整えなおして、起き上がる。


「ハハハ、さすがだな、アレク。瞬時に、判断して最善手を選んだか」

「当たり前だ。あんな近距離で、お前の攻撃を受けでもしたら、硬直している間にそのまま斬撃でやられちまうからな。なら、多少のリスク覚悟で、蹴りを受けて、吹き飛ばされた方がましだ。その方が距離も取れるし、それが最適解」


「お前の才能のなさを、状況判断力で補う戦い方は、ムカつくんだよ。凡人が、必死で努力しているみたいでな。いいぜ、なら見せてやる。圧倒的なまでの才能の差ってやつをな~」

 ニコライは再び俺に突進してくる――俺は瞬時に迎撃態勢を整える。


―――

ギルドカード紹介①


氏名:ニコライ

職業:勇者(職業内序列1位)

ギルドスコア:970(S級)


能力


体力:980(世界ランク2位)

魔力:880(世界ランク15位)

攻撃魔力:800(世界ランク12位)

治癒魔力:―(―)

補助魔力:―(―)

魔力防御力:960(世界ランク3位)

総合白兵戦技能:950(世界ランク2位)

総合白兵戦防御力:940(同上)

知力:790(世界ランク110位)


特殊技能


光魔術:2000


総合能力平均値:1038(特殊技能を抜いた場合は900)

総合能力ランク:1位


判定:S級相当(※冒険者クラス認定は本人の能力以外に実績も反映されるため、この判定はあくまで参考です)


主要実績

・魔王軍西方師団長ゾークを単独撃破

・伝説の秘宝"龍の涙"を発見

・魔王軍幹部クラーケン討滅の指揮を取る


―――

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