2位じゃダメなんですか?~器用貧乏と言われてパーティーを追放された俺は、実は世界最強のオールラウンダーだった!?あざとい後輩と伝説になります~
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第1話 追放
「アレク、お前には悪いが、パーティーを抜けてくれないか」
「なんでだよ、ニコライ。俺とお前は最強のコンビじゃないか!」
「そう思っているのは、お前だけだよ。もう後釜なら決まっているから、はやく出ていってくれ!」
「嘘だろ……」
※
俺は、アレク。21歳。
史上最強の勇者ニコライのパーティーの一員で、担当は魔法戦士。
攻撃魔法と補助魔法を使い分けて、時には前線でも戦う職業だ。
俺たちのパーティーは、勇者ニコライ、戦士ボリス、女賢者エレン、そして、俺で構築されている。冒険者基本法では、パーティー登録は4名までとされているので、このパーティーでずっと冒険を続けていけると思っていた。
俺たちの功績は、今では世の中では知らない人はいないとまで言われている。
西の大陸の王都"バル"攻防戦で、魔王軍西方師団の壊滅に成功。
魔王軍幹部のクラーケン討滅作戦。
伝説の秘宝"竜の涙"の発見。
この3つの功績によって、俺たちは世界冒険者協会からパーティーメンバー全員がS級に認定される快挙を達成した。S級冒険者は、全世界で定員が20名までとされている冒険者の最高位で、実績と実力が伴いかつ、協会幹部からの推薦がなければ就任できない冒険者の最高位だ。
A級冒険者:ギルドスコア300以上の冒険者。軍事学的に一人でも戦術級の役割を持つことができる能力者。
B級冒険者:ギルドスコア200以上の冒険者。4人集まればA級1人と互角。
C級冒険者:ギルドスコア100以上の冒険者。この地位でやっと一人前の冒険者とされる。
D級冒険者:ギルドに登録したばかりの冒険者。冒険者に憧れて登録した者たちが多く、初回クエストで5割のD級冒険者が行方不明になる。1年間生存率は約10%。
そして……
S級冒険者:A級の中でも特に優秀な冒険者。軍事学的に一人でも
ニコライとは、あいつが冒険をはじめるときから一緒に行動した一番の古株で、D級からS級までふたりで成り上がった自他共に認める相棒だったはずなんだが――
「アレク、お前には悪いが、パーティーを抜けてくれないか」
俺は食堂でニコライにそう切り出された。
「何を言ってるんだ? ニコライ?」
「冗談じゃない。このままでは、お前はお荷物なんだよ!剣技なら、お前は俺やボリスに負ける。魔術なら、エレンの方がお前よりもはるかに強い。
「あの、伝説のタンク"ピエール"さんか……」
「そうだよ、お前よりもはるかに守備力が高くて、みんなの盾役になってくれる。それに、お前に比べてチームワークを大事にしてくれる」
「エレンが、また、お前に何か吹き込んだのか?」
「吹き込んだ? それは違うよ、アレク。お前は、エレンが自分の役割を取ってしまうのじゃないかと不安になって、嫉妬に狂ったんだろう?」
「どうして、そうなる? 俺は魔法の発動タイミングや、位置取りなどのアドバイスをしただけだ。エレンは魔法職なのに、前線にでやすいから――」
「あいつは、まだ冒険に慣れてないから仕方ないんだよ。ベテランのお前が、もっとフォローしてやらないとダメだろ。俺は、エレンからいつも相談されていた。お前にもやんわり伝えたよな。なのに、お前はエレンをいじめた!」
「いじめていない。俺なりにフォローしたから、アドバイスとかをしていたんだ!」
「それがダメなんだよ。お前は――。昔からそう思ってたんだ。どうして、チームワークを乱すんだ!お前なんて、俺のパーティーにはいらない。早く出ていってくれ」
ダメだ。何を言っても聞いてくれない。ニコライは首のあざをいじりながら、俺を罵倒する。
「なあ、ニコライ? 俺たちの5年間ってそんなにちっぽけなものだったのかよ? たしかに、1年前から加入したエレンのこと、気になっていたのはわかるぜ。でもさ――」
「うるさいっていってるだろうっ!?」
「くっ」
「お前はいつもそうだ。説教くさくて、たしかに、一番の古株だけど、実力はパーティーの中で最弱で…… お前がいなければ、もっと早く俺たちは魔王を討伐できたかもしれない。全部、お前のせいだ。俺の前から早く消えてくれ!!」
「……」
いままで作ってきた関係が壊れていく。俺の冒険は何だったんだろうか?
ニコライが席を立つ音がした。俺は、長年の相棒に何も声をかけることはできなかった。
これが追放か。
俺は宿においてあった荷物をとって、あてもなく街をさまよった。
一応、ニコライは手切れ金ということで、テーブルに金を置いて出ていった。それと、俺の貯金を使えば、しばらく遊んで暮らせるが……
虚無感しかなかった。
「ねぇ、あれって、アレクさんじゃない?」
「ああ、そうだよ。ニコライ様のパーティーをクビになったんだよな。かわいそうに……」
「だって、ニコライ様と一番の古株だったんでしょ。それが、なんで急に?」
「わからないけど、ニコライ様とエレンさんが手を組んで歩いている時にそう言ってたぜ」
「へ~、痴情のもつれかな」
「かもな!」
街の人からのうわさ話で、俺のメンタルは、さらに追い打ちをかけられる。
消えてしまいたい。どんなに強い敵と戦っても傷つかなかった俺のメンタルは、仲間の裏切りで完全に壊されていた。
早くどこかに籠ろう。街を出ようと歩き出したとき……
「あ~、先輩だ。やっとみつけた~!」
懐かしい声が俺を呼び止めた。
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