昏い影が、あまい香りとともに、ゆるりと近づいてくる

首筋にわずかにのこる痕が、祝福をあらわしていた。

寝台に横たわる少年は、ひび割れた記憶をたどり、彼の人の横顔を思い出す。身体の内側から塗り変えられてしまった。もう、もとには戻れない。

「気分はどうかな」

昏い影が、あまい香りとともに、ゆるりと近づいてくる。

「……悪くはないです」


2023/2/20

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