私の名を呼ばないで。カイヤナイト

先生の背中には大きな傷があった。

たいせつなものを喪ったかのような、痛々しい痕だ。

「みんなには、内緒ですよ」

寂しげに笑う横顔は、数百年前にわかれた“彼”の面影を、色濃く残していた。

「……あなたは、」

変わってしまったぬくもりが僕の唇をやさしく塞ぐ。

「私の名を呼ばないで。カイヤナイト」


2023/2/6

結晶庭園

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