凍てついた月明かりがさしこむ図書室は、静寂に満ちていた

「君の名前、何がいいかなあ。薔薇、金盞花、向日葵、柘榴、……」

少女の指先が最後の頁をめくる。凍てついた月明かりがさしこむ図書室は、静寂に満ちていた。

「鈴蘭、はもう目覚めたし、菫も桔梗もいるよね」

「私は、何もいらないわ。結晶花も、いびつな形だし」

「そうかな。僕は、きれいだと思う」


2023/1/19

花ねむるサナトリウム

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