もう、大丈夫。どこも痛くない

菫の瞳が灰青の影を捉える。ちいさな手が兄の頬を撫でた。

「……兄さん」

「カペラ」

弟の手はひんやりと冷たい。核が発する熱は、少年の思考を鈍らせる。

「だいじょうぶ?」

「熱はひいたよ。もう、大丈夫。どこも痛くない」

カペラの瞳に希望の色が宿った。レグルスはそっと弟の頭を撫で、目蓋を伏せた。


2022/7/7

星満つるギムナジウム

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る