第10話、あれ?これってデートか?
さて、俺こと、市倉優希がメイド喫茶「マイ・ドリーム」で働く事に気がついた事。
それは、いかにもって感じの客がいる事だった。まず、見た目、リュックを背負い、その隙間からアニメの絵が描かれているポスターらしき物がにょきっと出ている奴がいたり会話に「みくたん、可愛いでござる」とか「零ちゃんは、俺の嫁」とか言っている奴もいたりしていた。
こいつら……まともじゃないんじゃねーか?って感じなんだが、そんな客が俺に対して、「ユキちゃーん」とか言ってくるので俺は鳥肌が立ちそうになってしまった。
一応客なので、作り笑顔で「はーい」と姉貴の声で呼んだ客の席に行き
「ご注文は何ですか?ご主人様?」
メイド喫茶なので、メイドっぽい口調で、話してみると
俺を呼んだ客は「ユキちゃん……、この後、暇かな?」と言ってきやがった。
暇だったら何なんだ?と言いたいが、俺は仕事が終わったらの用事を思いだしてみる。
何かあったっけ……と思い出し、そういや今日は、テレビで見たい物があったな?と思い出して、こう言って見る事にした。
「すいませんが、暇ではないです」
「そっか……、じゃあ、いつ暇になるかな?で、もしよろしければだけど、携帯の番号、教えてくれない?」
そんな事を言って来やがった。
そう言われてもな……お前なんかに、アドレスもケー番も教えたくないんだが?とりあえず、俺は作り笑顔で
「すいません……ちょっと言えないですね?それより、ご主人様?注文してくれないと、困ります」
無表情で言ってみると、驚いたのか
「じゃ、じゃあ……魅惑のパッションフルーツを」
「かしこまりました、魅惑のパッションフルーツですね?少々お待ち下さいませ」
と言って、その場から離れて行き、厨房に向かった。厨房には、いつの間にか着替えたのか、コック姿の志保さんの姿があった。志保さんが調理担当みたいらしく、俺は志保さんにさっきの客の注文を言うと「ちょっと待って下さいね?」と言い、手際よく作業して、あっという間に、魅惑のパッションフルーツを作ってしまった。
ちなみに魅惑のパッションフルーツと言うのは、フルーツパフェの事で一人で食べる分には、結構なボリュームがあった。
それをお盆に載せて、さっきの客の所に持っていく。
「お待たせしました、ご主人様、魅惑のパッションフルーツになります」
俺がそう言うと、お客が
「ユキちゃん、そのスプーンで食べさせてくれないかな?」
とか言ってきやがった。そこまでする必要あるのか?って感じなんだが、他のウエイトレスを見てみるとカレンも萌もお客に対して、あーんをやっているので、こりゃやるしかないのか?って思い、スプーンでパフェを掬って
「ご主人様、はい、あーん」
えらく棒読みな感じに言う事にした。
うん、とりあえず深く考えないで、仕事に集中する事にするか……
そう思いながら、仕事をしていって、時間が過ぎていき店長の麻衣が
「ユキちゃん、今日はもうあがっていいよー」
そう言って来たので、俺は店長に
「お疲れ様でした」
と言って、控え室に向かった。
控え室の中に入り、誰も入って来ないようにしっかりと施錠してからメイド服を脱ぐ。
メイド服をロッカーの中に入れて、私服に着替える事にした。着替え終わった後、忘れ物はないかとチェックしてから、控え室を出る。
控え室を出ると、金髪縦ロールのカレンがやって来て、こう言って来た。
「あ、由紀?あがりですわね?」
「うん」
「じゃあ、外で待ってて下さい、私もすぐに向かいますので」
「解ったわ」
そう言って、店の外で待つ事にした。そうだった。カレンに誘われたんだったな?
カレンに一緒に遊びに行くって、誘われているので一体何所に遊びに行くんだ?と思っていると
「お、お待たせしましたわ」
私服姿のカレンがやって来た。うん……はっきり言って、私服がかなり豪華だった。
胸が強調されているので、ちょっとエロちっくに見えてしまっていた。見とれていると、カレンが顔を赤らめて
「ゆ、由紀?あんまりじろじろ見ないでくださいまし」
「あ、ごめん」
「べ、別にいいですわ、では、参りましょう」
「うん、でも……、何所に行くの?」
「それは、着いてからのお楽しみですわ、さ、いきましょう」
そう言って、手を握ってきた。何で握る必要が?って思ったけど、一応と言うか、カレンはかなりの美少女なので
俺的に関しては、ちょっと嬉しく感じたりもしていたのであった。あら?そう言えばこの状況、もしかして俺、デートじゃないか?
まあ、今の俺、姉貴のふりをしてるしな……カレンは姉貴だと思ってるし、俺は姉貴として振る舞うしかないよなあ………はあ……
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