第8話、親友、諦めてないのかよ?

次の日になり、俺こと、市倉優希は、朝から憂鬱だった。まあ、何でかといわれると、今日もバイトがあるからである。

普通のバイトだったら、こんな気分にはならないと思われるが俺のやっているバイトというのは……「メイド喫茶でメイドさん」だった。

いや、勘違いしないでほしいのだが、何も俺がやりたいからやっている訳ではない、断じてな?そもそもの原因となったのは、俺の姉貴、市倉由紀が原因なのだ。

俺は姉貴の言われるまま、メイドさんをやる事になったのである。

昔っから、姉貴には勝てないんだよな……俺……そんな訳で、姉貴がいない間、俺が姉貴の代役として、メイドをやる事になったのだった。朝起きて、まず顔を洗う事にした。

洗面所に向かい、改めて自分の顔を見てみる。

そこに写っているのは、あきらかに男の俺の顔、でもウィッグを装着すると、完璧に姉貴に見えるんだよな……ま、俺と姉貴は双子なので、似てると言うのも解る気がするが……はあ……今日もバイトか……

そう考えていると、お袋が


「あら、優希、どうしたの? ため息なんかついて」


お袋がそう言ってきたので、俺は


「いや、ちょっとバイトの事でな……」


「あら、あんた、バイトしてたの? 由紀がしてたのは知っていたけど、何所でバイトしてるの?」


「いや、何でもない、気にしないでくれ、それより朝ごはん出来てる?」


「出来てるわよ? 冷める前に食べちゃいなさい」

「ああ」

そう言って、洗面所から移動して、リビングに入った。リビングに入り、テーブルの上に出されている朝食を見てみる。出されていたのは、カツ丼だった。しかも出前で頼んだ物じゃないらしく、家で作ったみたいな感じで、具財に我が家オリジナルの食材が入っていた。

お袋は、料理研究家でもあるので、これは作ったんだな……と、実感した。

とりあえず、お袋の作る料理に、今まで不味い物はなかったので、安心して食えるな……早速、オリジナルのカツ丼を食べてみる。

味に関しては、何かの出汁が効いてるからか、滅茶苦茶美味かった。これならお替りしても軽くいけるな……という感じで、あっという間に食べ終わり、お替りをお袋に要求したが「ないわよ、あんた食いすぎよ、あんたの分、今の大盛りだったのよ?」と言ったので、結局お替りはくれなかった。ま、腹はいっぱいになったし、食べ終わった後、学校があるので、自分の部屋に戻り、制服に着替える事にした。

制服に着替え終わった後、鞄の中身を確認し、携帯をポケットの中に入れて、外に出る事にした。外に出ると、外の天気は快晴で、滅茶苦茶暑く感じた。通学するのかったるいな~と思いながら、通学路を歩いて行き、数十分後

通っている学校に辿り着く。

何所かに寄り道するわけでもなく、真っ直ぐに自分のクラスに行き、自分の席に座ると、早速、俺に話しかけてくる者がいやがった。


「よ、優希」

そう離してきたのは、同じクラスの悪友の真吾だった。

「おう」


俺は真吾に軽く挨拶すると、真吾が


「なあ……優希、今日も行かないか?」


「行かないかって何所だよ」


「何言ってるんだよ、あの喫茶店だよ」

それってあのメイド喫茶の事か?っく、俺は嫌だぜ、と言うか……俺は、そこで働く事になってるので、一緒に行くとか物理的に無理なんだが?


「あ~悪い、一緒に行けないんだわ」


「何でだ?」


「バイトが入っててな、悪いな」


「バイト? 何のバイトだよ? お前がバイトしているなんて、ちっとも知らなかったぞ?」


「いや……まあ、何のバイトでもいいだろ?」


「まあ、そうなんだけどな? それじゃしょうがないな、じゃあ一人で行くか……あの子、いてくれるといいけどな……」


なんか……真吾がぶつぶつ言っている。

あの子って、もしかして……姉貴=俺の事か!?うわ、すっげ~鳥肌が立つんだが……

出来れば来てほしくないな……と思いながら、学校のつまらない授業を受けて、時間が過ぎていき、あっというまに放課後になった。

俺は、誰にも話す事なくそそくさと教室を出て、真っ直ぐ自分の家に戻る。家に戻ってから、家族の有無を確認して、どうやら……誰もいないと解ったら、早速変装の準備に取り掛かる事にした。着ている服を脱ぎ、スカートを履くのは、仕事着だけでいいな……と思ったので、薄いTシャツとGパンを履く事にした。

着替えてから、ウィッグを装着して、発声練習をしてから、自分のいつも履いている靴とは違い、姉貴の別の靴を履く事にした。

外に出て、怪しまれてないか……を確認してみると、俺の姿を見ても、不審に思う人物がいなく、ほっとした。しっかりと施錠してから、外に出て、バイト先のメイド喫茶に向かう事にした。は~……今日もやってやるかな……あんまりやりたくはないけどな……

俺は、そう思いながら、バイトに励む事にするのであった。


さて、俺こと市倉優希の今の心情を一言で表すと……憂鬱だった。

まあ、男の俺がメイド喫茶で働いてる事自体、憂鬱にもなるわな? そんな俺が働く事になった場所と言うのは、メイド喫茶「マイ・ドリ-ム」と言う喫茶店で、そこで俺は姉の由紀の代役として、メイドをやる事になったのである。

一体、いつまでやらされるんだろうな……ほんと……そんな俺が、メイド喫茶「マイ・ドリーム」の店内に入ると、早速出迎えてくれたのが、メイド姿で、日本人形みたいに可愛い顔をした女の子、名前が萌と呼ばれている女の子だった。


「あ、お姉さま」


この子……俺、いや正確には姉貴の事なんだが、その姉貴に対して「お姉さま」って呼んで、なついていくるのである。

はっきり言って、この子、ガチで百合属性なんじゃないだろうか?まあ、嫌いと思われてないのはまだマシか……と思う事にして、俺は、姉貴の声で、挨拶する事にした。


「こんにちは、萌ちゃん」


「はい、お姉さま、今からですよね?」


「ええ、そういう事になるわね」


「あの……私に何か、手伝える事はありますか?」


上目使い&赤ら顔のダブルコンボを食らわしてきた。そう言うのは、男にしときなさい!って感じなんだが……何で俺にしてくるのか……って感じだ。

とりあえず、手伝ってもらうのはちと困るので


「い、いいわよ、萌は仕事に専念しときなさいね?」

俺がそう言うと、がっかりした表情で


「解りました……お姉さまが、そう言うなら……」

そう言って、仕事に戻ってくれた。ふ~……とりあえず、何とか回避したかな?

さてと、控え室で着替える事にするか……そう考えて、控え室に移動する事にした。

控え室の中に入ると、着替え終わっている、もう一人の従業員、金髪縦ロールのカレンがそこにいた。


「あ、由紀、こんにちはですわ」

うん、はっきり言って、このお嬢様口調、マジで似合っている。こいつ……本当にいい所のお嬢様なのか?って感じかもな? とりあえず……


「こんにちは、カレン、今からでしょ?」


「ええ、そうですわ? 由紀も今からですわよね?」


「ええ」


「じゃあ、お互い頑張りましょう? では、私はこれで」


カレンは控え室から出て行く。よし、その間に俺は、誰も入って来ないように、しっかりと施錠して、着ている服をロッカーに入れる事にした。そして、用意されているメイド服を着て、着替え終わった後、鏡で、自分の姿を見てみる。そこに写っているのは、姉貴のそっくりの俺の姿で、メイド服が似合っていた。


「やばいな……これ……はまらないようにしねえとな……あ~あ~、姉貴の声っと」


とりあえず……発生練習をして、姉貴の声を出し、準備ができたので、部屋の外に出る。

外に出ると、リクルートスーツを着た、この店のマネージャーの志保さんと、出くわした。


「あ、おはようございます、由紀さん、今からですよね?」


志保さんがそう言って来たので、俺は姉貴の声で


「はい、そうです」


「では、今日も頑張って下さいね?」


笑顔で言ってくれた。うわ、今の笑顔……すっげ~いいな……優しげがあって……そう見とれていると、俺にぶつかって来たのが


「おっはよ~ん、由紀ちゃん」

そんな感じで言って来たのは、どう見ても小学生にしか見えない幼女体系のここの店長、麻衣さんだった。


「おはよう……」


「ん~なんか元気ないね~? ほらほら、しゃきっとして? 今日も一日、がんばろ~」


そう言ってポーズをとるロリ店長、うわ、ウザ……殴ってもバチが当たらないよな? とか思うのだが、一応店長なので、俺は引きつった笑顔で


「わ、解りました、頑張ります」

こう答えておけば良いだろうと思う事にして、逃げるように移動する事にした。店長と話していると、なんか疲れるな……ほんと

とりあえず……今日も一日、頑張るとするかな……と思って、仕事に専念する事にしたのであった。

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