第7話、俺を誘うのかよ?どうしよう?

姉貴の身代わりをする事になって、今日もメイド喫茶「マイ・ドリーム」に行く事になった、俺。

ラララララ~、今日も姉貴の代役として、働くよ? 今日も元気だご飯がうまい!!

……すまん、取り乱した。精神が病んできたかもな?まあ、病みたくもなるわな……なんせ、働き口が、普通の喫茶店とか、コンビニバイトとかならまあ、問題はない。だけど、姉貴のバイト先と言うのは、メイド服を着て、「ご主人様~」とか客に対して、媚を売る、メイド喫茶だからな……

姉貴の命令なので、とりあえず今日も頑張るぞ~おお~

はあ……そんな訳で、今日も俺は、姉貴の代役として、メイド喫茶「マイ・ドリーム」の店内に姉貴が使っていた「ユキ」として、入る事になった。頼む……姉貴、マジで帰って来てくれ……ちなみに今の状況、ガチ百合メイドの萌と金髪縦ロールツンデレメイドのカレンが、睨み合っていた。何でこんな状況になってんだ? とツッコミたくなったが状況を簡単に説明すると、萌曰く「お姉様、今日は仕事終わったら、デートしましょう? キャ、言っちゃったw」萌は、顔を赤らめてそう言ってるし。

カレン曰く「今日は、ユキを私の家に招待しようと思いましたの、ユキ、よろしいわよね? べ、別にユキが好きだからと言う訳じゃ、ありませんわよ?」とまあ、あきらかにツンデレ全快で、そう言っていた。こんな感じでお互いに、俺=ユキを誘い出そうとしてるみたいだった。うん、男のままだったら、こんなにも嬉しい状況なのだが、今は、姉貴の格好をしているしな……なんかお互い睨み合って、火花が見えそうないきおいなんだが……つ~か……仕事をしなくていいのか?

この状況を何とかしてくれ……と思い、店長を見てみると


「うふふふ~モテモテね~」


とか、にやにや笑いをしているし、マネージャの志保さんを、見てみると


「はあ……とりあえず何とかして下さい」


そんな感じに言われてしまった。

うわ、使えねえ……しゃ~ない、ここは一つ……


「三人一緒と言うのは、駄目なの?」


俺は、姉貴の声で、妥協な提案を提示してみると


「嫌ですわ、私はユキと二人っきりがいいのです」


「私もお姉様と二人っきりがいいの!」

……俺にどうしろと?だって、どっちかを選んでも、どうせ姉貴の代わりなんだからな?

意味が無い感じなんだが……とりあえず俺は、こういう事にした。


「二人とも、真面目に仕事して、私、不真面目な人は好かないから」


俺がそう言うと、二人は、酷くがっかりした感じになり


「わ、解りましたわ、ユキがそう言うのでしたら」


「お姉様……解りました」

何とか、この場は収まったみたいだった。

とりあえず……争いは終わったので、俺は真面目に仕事に専念する事にしたのだった。あれ? でも、後回しにしただけで、何も解決していないような……まあ、とりあえず……思うのは、姉貴、早く帰ってきてくれ……と、願うのであった。願っても帰って来るのは、数日後って解っているしな……

今日も仕事を終わらせるとするか……うん。

マイ・ドリームの店内にいるのは、やはりと言うか……男だけしかいなかった。

この店、女性客が入店している所を未だに一度も見た事が無いのだけどな……?

俺がいない時に入店でもしているのだろうか? まあ……気にしても仕方が無いので、俺が姉貴の代役のユキとして、お仕事をする事にした。しかし……相変わらず、俺を指名する客が何と言うか……凄く気持ち悪い。

男の猫なで声で「ユキちゅあーん」とか呼ばれてるしな?ぶっちゃけすっごい寒気がする。

で、俺を指名したので


「ご注文は何に致しますか?」

俺がそう言うと


「ユキちゃん、今日、暇?」

そんな事を言っているのは、お店に入ってきて、いかにも女にもてそうなルックスと、顔もイケメンなので、絶対に彼女、二人以上いるだろ?って感じのチャラ男だった。暇と言われてもな「暇です」と言って、お前と二人っきりになりたくないんだが? この男の目的、男の俺だから何となく解る。

あれだろ? 体目的じゃないか? この男。

だから俺は、こう言う事にした。


「すいませんが、全く暇ではありませんので、そのお誘いはお断りとさせて頂きます」


「ええ? じゃ、じゃあ携帯の番号……」


「教える義理はないので、お客様、ご注文は?」

俺がそう言うと、チャラ男は、諦めたのか


「じゃあ、魅惑のフルーツパフェを一つ……」


「かしこまりました、少々お待ち下さい」

そう言って、客から離れて、厨房に向かう事にした。厨房に向かう途中、金髪縦ロールのカレンが話しかけてきた。


「由紀、大丈夫でした?」


「大丈夫って?」


「何か、あの客にしつこく誘われていたようでしたので……」

なんだ? 心配してくれたのか?結構可愛い所があるじゃないか。とりあえず、俺は笑顔で


「大丈夫ですよ、デートに誘われましたが、軽く断わったので」


「デ、デート……そ、それはよかった……って、別に私は、貴方の事なんて心配してないですわよ!」


何で、ここでツンデレになるのか意味不明だがな?ワザとやってんのか? この女?


「ありがとう、カレン」

そう言ってやると


「ゆ、由紀……」

カレンが顔を赤くしてしまった。う、見た目がすげ~美少女なので、これは滅茶苦茶可愛いな……って、俺は何を考えてるんだ?とりあえず、注文を受け取ったので、仕事に戻る事にした。結局、今日は、たくさんの野郎に声をかけられた。まあ、一番声をかけていたのは、金髪縦ロールのカレンだったが、この店で、めっちゃ人気あるんだな?金髪縦ロール……まあ、見た目が可愛いし。しかも巨乳だしな? 男の目線はそっちに行き易いのだろう。

マネージャーの志保さんが「もう、あがっていいですよ」と言ったので、俺は、誰も入ってこないうちに、更衣室に入り、しっかりと施錠して着ているメイド服を脱ぐ。

鏡を見てみると、そこに移っているのは、見た目が姉貴なので、ちょっとかっこいい感じの美少女だった。


「……ここまで姉貴に似てるって、ある意味すげ~よな……」


そう呟いてから、ロッカーを開いて、私服に着替え終わった後。店長の麻衣に「お疲れ様でした」と一言、挨拶してから、金髪縦ロールのカレンとガチ百合少女の萌に声をかけられると、かなり面倒な展開になるので、家に戻る事にした。

こうして、姉貴の代役としての一日が、終わりを告げたのであった。

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