第2章 11話
ルチルは決して声を発さない。
生徒のバラバラ死体が見つかった翌朝、ルチルが階段を昇っている間に受けたのは、ジェードからの電話だった。ジェードは、ほとほと困っているような声音で切々と語った。
曰く、ジェードの受け持つクラスで、また生徒が死んだらしい。
「また、綺麗にばらばらになっていて。この間の生徒の、左後ろの席におかれていた。しかも、今度も血で文字が残されていて、それが『P』『o』『l』『l』――」
そこまで声がしたところで、腰にずん、と重くなるような感覚を覚えた。
ルチルが振り返ると、腰にナイフが刺さっていた。
それでもルチルは、声を発さなかった。
振り返った視線を少し上げると、ナイフを持っていたのであろう、幼い手を真っ赤に濡らした黒髪の男児の姿があった。ナイフは腰に刺さったままだった。
顔は真っ青、目は真っ赤で、もう笑ってしまうほど震えていた。どちらが刺されたのか分からないほどだ。ルチルは非常に落ち着いていた。ルチルはただ、少年の手を見ては、紅葉のような手と子供の手を称したのは、こう言うイメージだったのだろうか、と思うばかりだったのだ。
思う間に手が動いていた。白金色の髪が揺れ、耳に三角形のピアスが光る、その間に身体を反転させ、ナイフを持っていたであろう子供の頭髪を掴み、引き倒した。そのまま悲鳴を聴く時間もなく階段から放り落とす。
ナイフが刺さったままなのを忘れていた。
痛みはあるが、そんなこと、ルチルにとって表情筋を動かす理由にはならなかった。次から次へと子供たちが武器を持って階段を昇って来るのが見える。
彼らは反乱を起こそうとしているのだ。
ならば、ここで全員始末しておかなければ。
ルチルは手首を振り、隠していた小型の銃を両手とも取り出すと、次々と迫って来る子供たちの頭を一つ一つ、的確に撃ち抜いていった。
子供とはいえ数が集まると面倒だ。ウヴァロヴァイトの元へ着く前に、絶対に全滅させなければと思っていた。
手負いで的確に撃ち抜くことは本当に難しいが、ルチルは息一つ乱さず、やってのけた。血が廊下まで垂れていく。
「それでも、僕たちは立ち向かわないと……僕たちの家族まで死んじゃうかもしれないんだ!」
ナイフを握りしめて、階段下の男児は泣いている。
次々に子供を掴んで放り、撃ち抜き、その視線に気づいた時、ルチルは迷わずその子供に向かって迷わず引き金を引いた。
倒れている子を乗り越えられるように飛び越え、ルチルはウヴァロヴァイトのもとに向かった。
ナイフが刺さった状態で其処に向かったところ、ウヴァロヴァイトが真っ青になったのは言うまでもない。
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