第27話


 しかし、チャロアイトの興奮は収まらない。クンツァイトに向かい、懸命に唾と声を飛ばしている。


「一体如何言うことなんですか。クンツァイトさん。僕の友人を、如何して守ってくれないんですか」


 クンツァイトは吃驚した時の猫みたいな顔をして一瞬固まった後、サーベルで刺身を突きながら、


「何故、このクンツァイトを責めるのでろうか……私は、キュートでユーモラスな王子なのである。悪いことなど何も知らないししたこともない。私の行動は全て正しい。私がしたことは全て正しくなる。私は法である。それに今日に至っては尚更。自分の身を守っただけなのである……」


 と、唇を尖らせて拗ねてしまった。


「チャロアイトさん。私に言わせていただければ、失礼ながら、あなただって、彼を責められないくらいには、酷いんじゃありませんこと?」


オパールが、作り笑顔を取り戻して頬に人差し指を当てる。


「ニュースで拝見しましたわよ。あなたが作った金の指輪――それ、爆発するんじゃありませんか。まぁ、恐い恐い」


 オパールは、言いながらリモコンでフリースペースのテレビにでかでかとニュースを映した。

 金の腕輪が大爆発し、民家が吹っ飛んだという奇妙なニュース。


「この腕輪は、恐らく、先日チャロアイトさんからいただいた腕輪を、私が売ったものですわ。手放して大正解」


 たかがアルマンディン一人の死を契機に、殺人がドミノ式に発生し、このように死屍累々となった現実に、流石のジェードも驚きを隠せなかった。しかし、ここに来て、一番の驚きがやってくる。

 チャロアイトが、爆発する腕輪を作っていたという事実だ。

 チャロアイトは、アルマンディンの死のずっと前から、腕輪を用意していたことになる。アルマンディンが死ななくても、別の惨劇は起きていたかもしれないのだ。

 臍で茶が沸かせそうな喜劇だ。チャロアイトは皆を友人なんて呼びながら、命を奪う機会を淡々と作っていたことになるのだから。

 しかも、チャロアイトが終始大切に持ち歩いているスーツケースの中には――


「――酷いな。僕との友情の証を売ってしまうなんて。そんなの友達なんかじゃない!」


 チャロアイトがスーツケースから一つの銀色のスイッチを取り出す。

 その頬には、いつもの柴犬みたいな笑みがあった。


「さぁ皆、武器を下ろして。皆で友達になろう。さもないと、スイッチを押すよ」

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