第27話 反撃

 ミットヘンメル中央王国の東北部で発生した魔物氾濫は、瞬く間にヴァルモンド・オルソカール公爵領に広がった。公爵は陣頭指揮で魔物氾濫に対抗。数度に渡る機動防御戦によって、魔物を漸減させることに成功するも、本人は直近の攻防で敢え無く討死。後を継いだ長子は、自領の2/3を切り捨てて、領都に立て籠った。小を殺して大を生かす苦渋の決断であった。魔物氾濫の西への拡大は一時的に阻まれたが、撃ち漏らした魔物の半数が王都方面に流れ去った。



■神聖暦三三四年春季三ノ月二十五日 朝未


「ヴァルモンドの外孫そとまごなど捨ておけ!」


第一王女アビゲイルが側近を大喝一声。未曾有の魔物氾濫を引き起こした東方公爵の孫娘の身柄確保など彼女にとっては瑣末な問題に過ぎない。王国全体の安然こそが重大な関心事である。


「ですが、正教会の聖騎士団に先を越されてはッ!」


 側近たちは怯まない。当然だ。胆力のある者を選んだのは第一王女アビゲイル自身だ。外法を以って厄災を惹起せしめし兇徒を野に放ったままでは王家の威信に関わる。あまつさえ世俗権力に容喙せんと野心を燃やす正教会教皇庁に先を越されてはならない。尤もな主張だ。

 本来であれば東方公爵家が内々に処分すべきではある。当主が斃れ、領都は魔物に包囲され、領地の大半が蹂躙されている状況下では、身内の不始末などにかまけている暇はない。


「ならば卿らは為すべきことを為せ!」


「御意」


 側近二名が一礼して退出。第一王女アビゲイルの貌に疲れが浮かぶ。空前絶後の魔物氾濫に不休不眠で対応を強いられている所為だ。戦争とは勝手が違う。儘ならない事が多すぎる。


「頑固者ばかりよ」


「摂政殿下選りすぐりの者共にございます」


 軍務卿ラーヴェンスベルク侯爵が指摘する。肥沃なる平原の戦い以降、軍務卿は常に傍らに在って、彼女の政務を支えている。


「あの戦上手も呼び寄せるべきか——」


 彼女は、戦場に於いて天稟を顕す横着者の顔を思い浮かべていた。


「グナイゼナウ伯は帝国への備え故に軽々には動かせません」


 第一王女アビゲイルが苦い表情を浮かべる。軍務卿は構わずに付け加えた。此度の災禍も帝国の謀の可能性を排すべきではないと。


「であるか……」

 

 帝国の策略であれば西方域から兵力を動員するのは下策と言えよう。今のところ百戦錬磨のグレーヴェ伯爵とマルーク伯爵によって直轄領境の戦線は維持されている。しかし決め手に欠け、辛うじて均衡が保たれているに過ぎない。第二波の魔物氾濫が領境に到達すれば、王家直轄領が東方公爵領の二の舞となるのは誰の目にも明らかだ。オルソカール公爵が身を挺して稼ぎ出した猶予は刻々と失われつつある。


「魔法師団長の蟄居を解かれては?」


 軍務卿は魔物の群に尤も有効な手段となる魔法師団を前線に投入すべしと具申した。魔物氾濫の原因を作り出したのが魔法師団長の娘であり、魔法師団の高級将校であったことが、事態を悪化させている。目下、対魔物特化の魔法師団の全員が軟禁されていた。


「危急なれど、其は尚早なり」


 魔法師団に反乱の疑いありとの流言蜚語が飛び交う中、人心の安寧の為、第一王女アビゲイルは自らの戦力を縛らねばならない状況に陥っていた。


「国難に臨み政争は忘れず。実に嘆かわしい」


 愚痴の一つもこぼれる。暫し、黙考。


 北方公爵領と王都を結ぶ交通線は魔物氾濫によって遮断されている。現状、王国随一の武力を誇る北方公爵領から兵力を動員することは困難だ。南方公爵家と子飼いの伯爵家は既に最前線に投入済み。南方の更に奥地の辺境では、南洋都市国家同盟の動きが常に不穏。故に南方の辺境伯領からの大規模な戦力移動は控えざるを得ない。筆頭公爵家は権威はあれど、そもそも戦力は無く、戦場では役立たず。残された選択肢は麾下の近衛師団を投入することだった。彼女は玉座から立ち上がり決然と言い放つ。


「討って出る。馬をひけ!!」


 謁見室に居合わせた者たちは「またか……」と半ば呆れる。第一王女アビゲイルは戦況の芳しくない前線があれば、危険を省みることなく、自ら出陣しようとする。悪い癖である。思考停止とも言える。

 しかし、第二波が発生する前に残存している魔物を殲滅し、迷宮核を破壊しなければ、王国は保たない。とは言え、第一王女アビゲイルが麾下の兵団を従えて前線に立つという選択肢は為政者としては褒められたものではない。他にも手立ては残っているのだ。碌に休みも取らずに政務を執行している所為で、極端な思考に囚われる。剣聖の称号に自惚れているわけではない。兎角、才人というのは人を頼るのが不得手である。


 不意に声が響いた。


「アビー。我儘はダメ」


 魔術に造詣が深い者であれば、魔素の流れから何者かが謁見室に侵入を試みていると理解できる。王城は転移阻害の結界が張り巡らされており、奇跡や魔術を用いて、外部から侵入することはほぼ不可能である。そもそも許可なく立ち入ることは重罪だ。転移魔術で侵入を試みるなど無謀に過ぎる。然あれど白金色の外套ローブを纏った少女が忽然と謁見室に現れた。


「賢者ミーア殿……」


 第一王女アビゲイルは驚きもせずに少女の名前を呟く。二人は旧知の仲だ。左右の壁際に控えていた衛兵六人が即座に侵入者を取り押えるべく動き始める。彼女が右手を翳して制止した。


 居並ぶ法衣貴族たちが侵入者の姿を能々く見分すれば、未だに幼さを残す魔術師見習いのような風体。紫水晶アメジスト色の髪の毛と同色の瞳。身体の大きさに不釣り合いな魔杖。その頭部には光を飲み込む真球が設えてある。


 紫水晶の髪色の少女は一礼すると、自ら魔物討伐に赴こうとする第一王女アビゲイルを諌めた。


「アビーは人々の心の支え。今、を離れるなどもってのほか」


 その少女の白金色の外套ローブには精巧な紋章が神金糸で刺繍されていた。高位法衣貴族ならずとも紋章学に長じる者であれば、この紫髪の少女が深淵の娘にして魔女の娘たるアデレイドの麾下にあることを即座に認識できる。


 厄災の魔女アデレイドは、今更言うまでもないが、所構わず転移魔法によって王国人の前に姿を顕す。西方域の動乱の際、諸侯列席の軍議の場に不意に顕れ、有無を言わさず、麾下の傭兵団の参戦を捩じ込んだ前歴がある。王都の大貴族たちにとっては忘れ難い屈辱だ。法と秩序を重んじる彼らにとっては不快極まりない事件であった。尤も直接意義を唱える胆力を備えた者など存在しなかったのも事実だ。


 だが目前の少女に対してはどうか。厄災の魔女の弟子であるが、侮る可らずとは為らず、軽挙妄動を後悔することになるだろう。実際、迂闊な者共が異口同音に口を滑らせた。


「卑しき魔女の冒険者かッ!」


 侮蔑の言葉が発せられた。ミーアが感情の抜け落ちた相貌を愚か者に向ければ、瞬時に数人の法衣貴族が石化した。


御母アデレイド様を貶めるなど万死に値する」


 謁見室が凍りつく。王宮に不法侵入しただけでなく、貴族に対して攻撃魔術を向けるなど禁忌を犯すことだ。法秩序を乱すだけでなく、王家の権威を軽んじる蛮行。


「不遜なり……」


 第一王女アビゲイルの傍らに控えていた女騎士が、耐え難い怒りに身を震わせていたが、最早限界とばかりに小さな魔術師へと歩を進める。


「待てッ!」


 第一王女アビゲイルが制止するが、怒りに我を忘れた女騎士は止まらない。勢いにまかせて、鎚矛メイスを振い上げ、突進する。僅かな時間、僅かな距離。それらが全て引き延ばされたような錯覚に周囲にいた者全てが囚われる。振り下ろされる鎚矛メイス紫水晶アメジストの髪色の少女は虚空を睨め付ける視線を女騎士に向けて身じろぎもしない。


 少女の頭蓋が四散するかに見えた刹那、女騎士の一撃は激しい金属音を響かせ、弾き飛ばされた。


 少女の傍に白金の鎧を身に纏った女戦士。美しく凛々しい。両手剣ツバイヘンダーを振り抜き、幼き少女を守護する姿は力強く、美と戦の女神を体現する風格。これぞ南方の辺境開拓地の冒険者組合の最強にして最凶と語られるクロエだ。


「ぬッ!」と女騎士が呻く。


「遅い」とクロエ。


「吐かしおる」と女騎士が獰猛な笑みを浮かべる。


 瞬時に体勢を整えて、鎚矛メイスの頭部が霞む速さで、新たな標的に一撃を加える。対して一歩踏み込み、両手剣ツバイヘンダーを滑らせるように打撃を逸らす。


「マルティナッ!控えよ!!」


「クロエ。納刀。話が進まない」


 マルティナと呼ばれた女騎士は、現国王の次弟である筆頭公爵フェリックス・リウドルファングの末娘。芸術公の令嬢ではあるが、武辺者として国内外に名を馳せている。彼女の見た目の婉麗さとは裏腹に只の戦闘狂だ。クロエも同種同族であった。

 戦闘狂という輩は、厄介なことに戦う切っ掛けを常に欲している。マルティナは、第一王女アビゲイルの側近中の側近ではあるが、取り分け怒りの閾値が低く、暴発し易い。彼女が激昂している真の原因は、第一王女アビゲイルの愛称—— 親しい仲にだけ許された——を得体の知れない魔術師が使ったことだった。理由はどうあれ蛮族に過ぎる。


 マルティナとクロエが数拍の間に十数合と切り結ぶ。その只中、ミーアは静かに佇んでいたが、やおら魔杖を一振りすると二人の蛮族が掻き消えた。追鉾メイス両手剣ツバイヘンダーが床に落ちて金属音を響かせる。


「莫迦共は外で好きなだけ殴り合えばいい」


賢者ミーア殿。友の無礼を詫びよう」


「謹承。然れども王威あやまたず。軽々にうべなふべからず。御母様アデレイドなら左様に戒めるはず」


 アビゲイルが面映ゆいという表情を浮かべて、紫水晶アメジストの髪色の少女から視線を外す。その先には石像が三体。さて愚か者は如何にすべきかと逡巡する。非常時に手駒が減るのは避けたい。

 ミーアは、第一王女アビゲイルの視線の動きを察して、石化させた貴族たちを元に戻した。身体石化の衝撃で、気を失っているため、彼らは膝から崩れ落ちた。アビゲイルが側仕に指示し、倒れた貴族たちを直ぐに控室へと運ばせた。


 一連の騒動の中、軍務卿ラーヴェンスベルク侯爵は、厄災の魔女の配下を孫でも見守っているかのような柔らかな眼差しで見守っていた。何か思うところがあるのかも知れないが、第一王女アビゲイルは敢えて問い糺さなかった。彼女は、軍務卿が神々との繋がりを断たれた領民を保護しているとの噂を思い出すも、蛇足に過ぎると、言葉にはしなかった。


 第一王女アビゲイルは、暫しの間、静寂が訪れるまで、無言でミーアを見つめる。衣擦れが耳に届くほど静まり返った謁見室に彼女の声が響く。


「用向きを聞こう」


「お仕事を受けに来た」


「仕事だと?」


「巨大迷宮核を壊すだけの簡単なお仕事」


 紫水晶の髪色の少女は未曾有の魔物氾濫の元凶を取り除くことを簡単な仕事だと言い退ける。謁見室の人々は唖然となった。


 一呼吸置いて、ミーアは告げる。


「摂政殿下の御名にて、我ら白金の翼に命じられよ」


 なるほど厄災の魔女アデレイドからの助力の申し出であったかと第一王女アビゲイルは納得した。


「王国が踏み躙られたのだ。王族の矜持故に一太刀浴びせねば収まらぬ」


「其は蛮勇。摂政が為すことに非ず」


 ミーアが杖を一振りすると頭上の空間が歪む。


「猶しも古龍がはだかる」


「古龍だと?」


「鳥の目」と小さな賢者が呟けば空中に映像が浮かび上がる。


「これが古龍か——」


 確かに地竜でも翼竜でもない。火の精霊とも違う。第一王女アビゲイルが討伐した何れの竜種にも似ていなかった。


「初めて?」


「うむ」


 そう頷きながら珍しそうに眺めている。それは兇悪な姿ながら何とも言えない美しさを備えていた。


「可成り若い個体」


 賢者ミーアは淡々と伝える。


「強さは感じられぬな」


 素直な感想であった。


「実体化の影響」


 個体の強さを的確に看破するあたり、流石、英傑だと感心しつつ、脅威の程度が低い理由を説明した。


「麾下の騎兵隊で狩れるか……」


 第一王女アビゲイルの呟きに、騎兵で一体何をする気なのかとミーアは一瞬考えたが、彼ら近衛騎兵は下馬戦闘においても無類の強さを誇ることを思い出した。其れは残念ながら神々の力及ぶ埓内での相対的な評価に過ぎない。


「アビーたちは神々に愛され過ぎている。だから古龍に勝つのは困難」


 第一王女アビゲイルの表情が険しくなる。彼女は、元来、表情豊かである事を自覚している。感情が面に出易く、王族やら貴族やらとの付き合いを苦手としていた。自分には玉座など似合う筈などないと彼女は思い込んでいる。今も麾下の騎兵団の力が及ばないと指摘されて、悪感情が浮かんでしまった。


「不満?」


「妾とて剣聖の称号を戴いておる」


「相性の問題」


 事実ではあるが受け入れ難い。しかし、世の理から外れた物事に対峙する事の多い南方辺境の冒険者の諫言。耳を傾けるべきであろ。


「白金の翼に命じる。古龍の首を持って参れ」


「承りました」


 ミーアは恭しく一礼するのであった。



■神聖暦三三四年春季三ノ月二十七日 昼日中


 廃教会に魔術師のミーアが姿を現した。続けて白金の翼の面々が次々と転移してくる。最後に一党の頭目たるクロエが実体化した。


「此処から徒歩で二日の距離に迷宮核。多分、青髪の司祭様の転移石マーカーが使える筈」


 転移石マーカーとは、遠方から転移先を記す魔法陣が刻まれ魔導具の一種。転移石に刻まれた魔法陣を解読した上で、転移魔法を使用すると、設置された場所に移動できる。距離に比した魔力量を供給出来るのであればという但書が付く。


「残ってるのか?」


 赤髪の弓手アイラが尋ねた。彼女はクロエの一党の一人。二十歳と年若いが、南方辺境において一二を争う名手である。


「肯定。残ってる」とミーアが応える。


「ますます胡散臭い。あいつ本当に司祭なのか?」


 アイラが不機嫌そうに言い放つ。吊り目がちの涼やかな美人。性格はややキツく、男性に対して常に近寄り難い雰囲気を漂わせている。


「司祭だね。齢は二〇と五。記録を調べたけど改竄の跡はない」


 イリスが続けて青髪の司祭の経歴をやや詳しく説明し始めた。出自は軍務卿の寄家。名門と呼ばる血筋である。後妻の子であったため、家督継承順位は低い。幼い頃からから本人が進んで修道院での生活を望んだ。実の母親から疎まれていたことも相まって彼の希望は何の障害も無く叶った。修道院に移り住んで直ぐに多彩な才能を示し、成人の儀を受ける頃には、大司教位の奇跡を発動させるまでになった。家柄の良さもあり、将来を、嘱望されて教皇庁の要職を任されるまでになる。しかし——


「何をとち狂ったのか知らないけど、南方の辺境開拓地の教区を希望。アタシ達の所にやってきた訳だ」


 アイラがそう言って、イリスの長々とした説明の後を締め括った。途中で切られてはやや不満が残るが、イリスはいつものことと肩を竦めながら付け加えた。


「深緑の大司教様の影に隠れて目立たないけど、あの才能は異常だよね」


 イリスは艶やかな栗毛のショートヘアの斥候職。灰白色の革鎧で身を包んでいる。その意匠は優美さを極め、扇情的な装いにも見えるが、本人の趣味趣向ではない。深淵の娘アデレイド謹製の御仕着せだ。彼女イリスの本質は淫猥さから程遠い。常識人であり、魔物狩りにしか興味を示さない無愛想で無頓着な一党全員の至らなさを常に補っている。組合の冒険者たちにも分け隔てなく、然も距離感を過たずに気配りが出来る。


「ちッ……面白くない」


 赤髪の弓手は苛立つ。いけ好かない青髪の司祭がイリスに褒められていると感じたからだ。


「はいはい。無駄に当たり散らさない」

 

 イリスはそう言いながらアイラの背中をポンポンと軽く叩いて宥める。確かに青髪の司祭は辺境にいるような人物ではない。赤毛の弓手もその能力は高く評しているが、気に入らない男は何がどうあれ気に入らない。イリスが他の誰よりも青髪の司祭に親しく接しているとアイラが感じているからだ。生憎、イリスとスティーブは、互いに特別な好意など抱いているわけではない。


「司祭なのだから人当たりには気を配るべきだよね」


「それはアイツの問題でイリスが気にかけてやる事じゃない」


 アイラは渋面で指摘するが、イリスは「そうかな」と首を傾げる。


 青髪の司祭の周囲で飛び交う憶測は様々ある。後ろ盾が強大過ぎる故に正教会の中枢に疎まれたとの見立ては座りが良い。誰彼かまわない彼の辛辣さが根も葉もない無責任な噂を補強する。大いに反省すべきだが、才人に有り勝ちな事であろう。確かにイリスが気にかけて遣る事ではない。

 其れに対して「スティーブ司祭は転生者。とても苦労している」とミーアは青髪の司祭の世間的評判と全く違う文脈で、端的な事実を言い表して青髪の司祭を擁護する。


「……」


 アイラとイリスが目を見開く。古王国時代の物語。歴史とは言えない御伽話。中でも際立つのが、転生者による魔王討伐の戦記物である。転生勇者はこの世界の子供たちの憧れだ。


「スティーブ司祭は転生者。特別な存在」


 無反応の二人を見て、ミーアは繰り返した。聞こえていない訳ではない。単に驚いているだけだ。どうにも一党の会話が噛み合わない。


 天賦の才に預かる者が心良く思われないのはままある。身近で気に入らない男が憧れの転生勇者ではアイラも心中穏やかではいられない。紫水晶色の髪の毛の少女が、特別と持ち上げるのも気に食わない。


「わぁお。前世持ちか。神代世かな、それとも未来世かな」とアイラ。


「どちらでもない。遠い星の世界」


「迷える魂ってこと?」とイリス。


「うける。元の世界の神々に嫌われてやんの」とアイラ。


 ミーアは首を横に振る。


「御婆様が借り受けた」


「マジ?」とイリス。


真実まじ」とミーア。


「驚いた……」とアイラは二の句を継げない。


「一休みしたい」


 クロエはマイペースである。


「急ぎ働き」


 ミーアがクロエに向き直って咎める。


「えーっ」


叔母ドロシア=エレノア様の捕縛の呪術が効いている間に片付ける」


 ミーアとクロエの二人は、暫し、無言で見つめ合う。


 いつもの事だ。イリスが間を置かずに二人のに割って入る。頑固者な上に横着者の二人を放っておけば四半刻は見つめ合う。堪ったものではない。


「D.E.っちが殴ったの?それって大丈夫?」とイリス。


「直接絡んできたのは古龍クソトカゲの方」とミーア。


「ははッ。自業自得だ」とアイラ。


 何故か、アイラは勝ち誇る。青髪のイケメンだけではなく古龍クソトカゲも嫌いらしい。


「眠い……」とクロエ。


 魔物に遭遇するまで、白金の翼の面々はこの様な有様である。ミーアが頭を振ってから地下へと続く階段を魔杖で指し示す。


「行くよ」


 イリスがミーアに頷きを返して先導する。一同無言でその後に続いた。然程長く無い螺旋階段を下ると広い部屋についた。


「埃っぽくないし、カビ臭くもないね」


 周囲を油断なく見回しながらイリスがミーアに確かめる。


「浄化の奇跡。そつが無さ過ぎる……」


 僅かな苛立ちが語尾に含まれていた。スティーブは高位の術者に些末な事をさせない様に気を配ったに過ぎないのだが、ミーアは子供扱いされたようで気にいらなかった。彼女は至れり尽くせりには慣れていない。数拍の間、イリスは妹分の顔を見つめた。しかし、敢えて問う事も諭す事もない、と流すことにした。


「魔石を設置するよ」とイリス。


「はいはい」とアイラ応じ、軽やかな身のこなしで、イリスから受け取った魔石を所定の位置に配置する。アイラとて察しは悪くない。


「眠いし、怠いし、面倒くさい」とクロエが謐く。


「クロエ。飲み過ぎ」とアイラ。


「マルティナが悪い」


「芸術公秘蔵の火酒は美味しかったからね。仕方ないね」とイリス。


「あの高価な美酒で飲み比べとかありえない」とアイラ。


「マルティナが悪い」


 何はともあれ、クロエの心中では、第一王女アビゲイルの側近の女騎士マルティナが悪いことに成っている。愚痴を溢すクロエから微動だにしないミーアに視線を移す。


「ミーア、どうしたの?」とイリス。


「この術式——」


 事前に用意した術式の一部が書き換えられていた。恐らく青髪の司祭が手を加えたのであろう。


「——むぅ。転移先で隠蔽の奇跡が発動するのか……何故?」


 ミーアは、魔法陣の修正理由と青髪の司祭の意図に考えを巡らせる。身じろぎもせず。その間、仲間たちは邪魔にならないように静かに待つ。いつもの事だ。ただ一人を除いて。その一人は、空気など読まずに、ミーアの後ろから抱き付く。身長差があるため、丁度、ミーアの頭の上にクロエのご立派な双丘が乗る。眠いと言いながらぎゅっと抱き締めて休ませろと駄々を捏ねる。お構い無しである。


「クロエ、重い」


「うん」とクロエ。


 イリスは、噛み合わない二人から視線を外して、青髪の司祭が描いた魔法陣を見つめた。何がミーアの機嫌を損ねたのかと自問するや否や直ぐに理解した。彼女も魔術師の端くれだ。一度に使用可能な魔素な量と同時詠唱の個数に於いて、ミーアにやや遅れを取るが、王国に於いて上澄みの存在と言える。祀ろわぬ者ではあるが魔術を縦横に操る事が出来る。

 そんな彼女が斥候職を務めているのは、単に前衛が好きだからという理由に過ぎないが、お陰で白金の翼の攻守のバランスが程よくとれている。


「隔離域の展開だと迷宮核が不安定化するからかな?」とイリス。


「……してやられた様な気がする」とミーア。


 イリスとアイラが互いの顔を見合う。二人は肩をすくめてから、暫くの間、不機嫌そうなミーアを見守っていた。



■神聖暦三三四年春季三ノ月二十八日 黄昏刻


 白金の翼一党が巨大迷宮核の近くに転移した。迷宮核外縁まで千五百歩長。周囲に徘徊する魔物は全く反応しないが、彼女たちを真正面に捉えた古龍が咆哮を放つ。一瞬で木々が薙ぎ払われ、クロエたちと古龍の間に居た魔物たちが消し飛ぶ。然し、ミーアの魔術結界と青髪の司祭の神聖結界により、クロエたちには何の影響も無い。


「私は解呪。クロエは古龍クソトカゲ。アイラとイリスは適宜援護」


 白金の翼の頭目はクロエであるが、戦闘指示は常にミーアが担っている。


「はいはい」とアイラが弓を構える。


「了解」とイリス。錆銀色の短い魔杖と漆黒の刃の短剣を構えて、古龍を左手に見据えながら弧を描くように疾る。


「任せろ」とクロエ。男前である。彼女はゆらりと歩を進める。


 対峙する古龍の咆哮攻撃。


 彼女は一暼で見切る。放たれた光の奔流は掠りすらしない。


「弱過ぎないか?」


 不意に言葉が漏れた。彼女の記憶の中、嘗て戦った古龍は称賛に値する強さがあった。遠目に見ただけで怖気に襲われ、死の息遣いが聞こえる程だった。では目前の古龍はどうか。その希薄な存在感に興醒めてしまう。


 クロエがたわい無しと剣を振う。咆哮と共に次々に放たれた光の奔流が掻き消える。古龍が白金の女戦士を凝視する。一瞬の静寂と奇妙な間合い。一歩踏み込めば、古龍の振り下しが襲いかかる。だが古龍の巨大な爪は彼女を捉えられない。苛立ち混じりの叫喚呼号。巨躯が翻る。古龍の巨大な尻尾の一撃。轟音と共に周囲の樹木や大岩が爆ぜる。山津波のように迫る大質量。しかし——


「遅い」


 更に一歩前へ。この世の理を無視するかのように易々として、彼女は古龍の尻尾を切り飛ばした。


 古龍の絶叫が空気を震わす。支離滅裂に転げ暴れ、周囲を大きく揺らす中、白金の翼の攻撃は淡々と続く。アイラの弓撃は、無数の光矢となり、古龍の外皮を打ち破る。イリスは、クロエやアイラに纏わろとする名状し難い魔物たちを雷撃で消滅させ続ける。古龍に召喚された名状し難き魔物も既に為す術の無い状況に追いやられた。最早、奴らはミーアの解呪を妨害することはできない。


 浮遊の魔術で移動するミーアは、古龍と周囲の名状し難き魔物たちに阻まれることなく、迷宮核直下まで百歩長と詰めていた。空中に浮かぶ迷宮核の影の中、解呪の魔法陣を一つ一つ丁寧に展開してゆく。数十拍の後、彼女の展開した魔法陣が迷宮核の周囲を取り囲めば、ミーアの解呪の呪文が即座に発動。


 その瞬間、呼応する様に、ミーアの背後に黒い法衣姿の男が滲み出る。 枢機卿ヨーゼフ・マルクスの成れの果て不死王アーチリッチだ。

 

「其は傷天害理なり」と不死王アーチリッチが空気を震わす。


「不死者が世の理を語るのか?」とミーアが冷たい眼差しを不死王アーチリッチに向ける。


「不朽不滅なれば格物致知ならん哉」


 眼窩の虚空から生者への蔑みが溢れ出す。定命には辿り着くこと叶わない真理に至った優越感であろう。


「極まりて非理非道に至れり」と紫水晶の髪色の少女は魔杖を構えて機械的に応える。


 杖頭を向けられた不死王アーチリッチは鬱陶しげに言い放つ。


「定命の者は真理に至ること能わず。道理を騙るは笑止千万」


 割れ鐘のような低く濁った大笑を響かせて不死王アーチリッチは紫水晶の髪色の少女に無数の黒い影を放つ。


 ミーアは眉一つ動かさない。揺るぎない盤石の術理が彼女の強さを支えている。不死王アーチリッチ程度では彼女を退けることはできない。


「万物斉同不成なれど移ろい揺らぎて無性へと還らん」


 成句一節。呪文となり効力を発揮する。一斉に襲い掛かった影が、ミーアの数歩前で全て消滅した。


「生死妄念」と不死王アーチリッチが両腕を広げて黒い靄を周りに拡散させる。


 下草が急激に枯れ、灰となって巻き上がる。人が瞬く間も許さない速さで周囲百歩超を呑み込む。


「観自在なれば我に一切の迷い無し」とミーア。


 差し替え回しの要領で魔杖を縦にくるりと回せば、時が巻き戻されたように靄が晴れる。そうして表情に乏しいミーアが笑う。最早、変わる事を許されずに固着した妄念が、変幻自在の生者を賎しめる滑稽さに思わず破顔した。続けて——


「汝のいわいうたには届かず。黄金の酒は盃には注がれぬ。汝の業は嚆矢濫觴とは不成」と此処で一転攻勢。


 不死者を消滅させるべく紫水晶の髪色の少女が深淵に語り掛ける。不死王アーチリッチは彼女の意図を察知し阻害の呪文を発動。互いに黒い球体を放ち、相手の黒い飛翔体を打ち消す。数拍の内に百を超える呪文の応酬。相殺では埒が明かない。


「其は汝らの祖たる魔女ならん哉」


 不死王アーチリッチは知った様に語るが、真実には程遠く、客観的には滑稽で虚しいが、賢しくも年若いミーアの心を逆撫でるには充分であった。


「我が祖は刻の始まりより遍在せし者。永劫を揺蕩い、刹那を遊惰する」と紫水晶の少女が反論する。


 皮も脂も肉も健も管も何も無いが、彼の髑髏は慥かに薄笑いを浮かべている。実に腹立たしい。だが紫水晶の少女は心乱されたとしても、彼女の術が鈍ることなどなく、却って攻撃の苛烈さを増す。不死王アーチリッチの煽りは悪手だ。


 ミーアは魔女の森の要様御婆様は朽ちた壁の落書きのような不死王アーチリッチとは違うのだと眉を張り目を怒からす。そうして魔杖の石突で地を叩き、瞬歩のように不死王アーチリッチに肉薄した。

 虚を突かれた不死王アーチリッチは呪文の発動が一瞬遅れる。杖頭の漆黒の魔石から膨大な魔素が溢れ出し、常人の目には止まらぬ速さで振り下ろされる。馬鹿げた質量の打撃だ。

 千歳を越える不死者ならば、頭部が砕けようとも躱わす事なく、呪文を放ったであろ。仮初の軀なのだから護りは不要であった。所詮、月の満ち欠けに足りず、顕現したての不死者。枢機卿ヨーゼフ・マルクスの生前の記憶が枷となった。不死王アーチリッチは迂闊にもミーアの打撃を転移術で回避してしまった。


 ミーアは、満足したような表情を浮かべつつ、不死王アーチリッチが転移した先に視線を向けた。不用意に転移すると暴走状態の迷宮核に術者の魔力が根刮ぎ吸われ弱体化する恐れがある。十中八九は何事も起こらない。彼にとっての不幸は賽の目が悪すぎたことだ。彼女の目に映る不死王アーチリッチは明らかに身に纏う魔素が激減している。魔法戦で削る手間が省けるのだから、今この時に容赦するなどあり得ない。


「汝、魂の抜け殻と共に消え給へよ」


 ミーアは、魔杖に仕込んでおいた不死者に特化した浄化の奇跡を間髪入れずに発動した。


「!?」

 

 光の柱が天空から降りて来ると、不死王アーチリッチを取り囲んだ。彼は、バタバタと動き回り、無駄に抗うも徐々に形を失い、無数の塵となって、天空へと吸い込まれて逝った。呆気ない最後であった。何の感慨も浮かばない。


 彼女は、迷宮核に向き直ると、既に発動済みの解呪の魔法陣の動きを目で追った。進捗は順調。背後からクロエたちと古龍たちとの交戦の様子が耳に届く。クロエたちが敵を圧倒しているのが判る。見るまでも無い。

 古龍を抑えて迷宮核を解呪することは目論見通り。迷宮核が消えれば古龍を現世に顕現させる物は何も無い。簡単なお仕事は恙無く終える筈である。実際、迷宮核は揺らぎ、存在が薄れ始めている。然し——


 迷宮核に近づく程に感じていた違和感が消えない。ミーアは幾度となく迷宮最奥の暴走状態の核を解呪した経験がある。その記憶が鮮烈さを増しながら想起される。目前の迷宮核は一言で表すなら張りぼて。出来の悪い舞台装置としか思えない。


 「……」


 「さてもさても半刻の慰みにもならぬとは——」


 古臭く見窄らしい修道服姿の男が突如、ミーアの十数歩長前に現れた。彼女は予期していたかのように応えた。


「——残念だったね」


 幻影や幻像の類ではない。無貌の修道士の存在感は異常だ。此処までとは思ってなかった。巨大なだけで張りぼてに過ぎない迷宮核とは違う。嗚呼、此奴だ。不調法な舞台の監督。紫水晶の髪色の少女は直截的に覚知した。魔杖をぐっと握り締める。


「彼方も終幕だ」と彼は指摘する。


 ミーアは古臭い姿の修道士から視線を外さない。


「珍客が勝手に舞台に上がり込むなど無粋」


 無貌の修道士が含み笑いを交えながら語る。

 

「……でも放置した」


 彼女が張り詰めた表情で不備を指摘すると、男は悪怯れずに言い放つ。

 

「約定ゆえに直手無用といえど、我らの手抜かりに違いない。詫び入ることにしましょう」


 謝する言葉とは裏腹に態度も声音も不遜。ミーアは怖気を震うがぐっと耐えて応える。


「……痛み入る」


 無貌の修道士が迷宮核を見上げる。彼は遊戯ゲームが終了したことを確認した。


「実に呆気ない。我らが選んだ代行者はも冴えなかったということだ」


 黒く巨大であった球体は、周囲の風景に溶け込む様に薄れ、靄のように揺らぎゆく。


「……止めなくて良いの?」


 無貌の修道士は肩を竦めた。ミーアに向き直ると諦めたように語り始めた。


「問わず語りなどは柄ではないが——」


 其処を衝撃波が襲った。クロエの一撃であった。


「ダメッ!」

 

 ミーアは、叫ぶと同時に漆黒の防護結界を多重に張り巡らせて、無貌の修道士を剣撃から守る。続けて「クロエ!退いてッ!!このに戦う意志はない!!!」と二撃目を放とうと構えていたクロエを制した。


「ほう」


 関心したように無貌の修道士が笑った。笑裏蔵刀の貌が映える。勿論、見える筈の無い表情であるが、確かに嘲り笑う様が窺えた。


「人の身で魔女の娘仔山羊たちと同じ技を使うとは実に素晴らしい」


「実に素晴らしい」


「素晴らしい」


「——らしい」


 無貌の修道士は大いに感嘆した。


 男の声が重なり間延びする。何度も繰り返されるように響く。同時に周囲に爆音が鳴り響いた。衝撃波は居合わせた者の意識を刈り取る。アデレイド謹製の護符を見に着けていたにも関わらず、クロエ、アイラ、そしてイリスの三人も逃れることができなかった。


 男であった其れは、冒涜的な姿へと変貌し、真の姿を顕にした。


 自在に伸縮する無定形の肉の塊が全方位に無数の樹枝を広げた。其れらは互いに畳み込むように絡れて触腕を成せば、網状の管によって覆われて、咆哮する顔のない円錐形の頭部となった。続けて、腕が伸び、鉤爪を備えた手が生える。ずるりずるりと何本も生えて蠢く。よく見れば腕ではなく咆哮する顔のない頭部でもある。泥炭土が湧き立つように蠢く肉塊から悍ましい頭部が湧き上がり、呪詛を吐き出しては弾け消える。


 無限とも思える数拍の後、無貌の修道士は大いなる哄笑を残し、空の彼方へ消えた。


「……外なる神」


 大きな魔杖に縋り付くようにして、ミーアはその場に蹲み込む。


 外なる神との邂逅は恐ろしいなどという表現では収まらない。震えがミーアを襲う。全身の細胞が一斉に絶叫しているかのようだ。外なる神の真実体——現世に映し出された影に過ぎない——を目撃して、何故、自分たちが生き残ったのか理解できない。無貌の修道士を力で退けたわけではない。彼は何かに満足して帰っただけだ。僥倖。一体何が面白かったのか判然としない。深淵の力を引き出したことか、それとも——


 そこまで考えたときに限界に達して、ミーアの意識が途絶えた。



■神聖暦三三四年春季三ノ月二十九日 残夜


 不意にぬくもりを感じた。失われた五感がじわりと戻る。ミーアは蕃茘枝の花の香りに包まれていた。濃厚な甘い香りと微かに混ざり込んだ清涼な香り。


「よくぞ耐え抜いた」


 優しい声音が耳に届いた。深淵の娘にして魔女の娘アデレイドの囁きに安堵感が押し寄せる。ミーアは思わず泣きそうになるのを堪える。


「御母様」


 彼女の目にアデレイドの顔が映る。優しい腕の中。生き残った幸せに満たされる。アデレイドの煌めく白銀色の豊かな髪の向こうには見慣れた天井が見える。此処は冒険者組合長の執務室。この世界で一番安全な場所。


「クロエたちは?」


「心配無用。彼奴らはD.E.に回収させた」


「……そう」


「下階の酒場で、まだまだ足りぬと騒いでおる。暫くは東部にて魔物を屠り続けるだろう」


 クロエたちも外なる神の神気に晒されて正気を失いはしなかった。いつもの様に仕事終わりの酒を浴びるように飲んでいる。ミーアは仲間たちの様子に安堵した。その所為か眠気がじわりと意識を包み始める。彼女はアデレイドの柔らかな胸に顔を埋めて眠ることにした。






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