冬の少女に星空を

狂い咲く桜嬢

断章 冬の少女の物語

 統一暦892年。

 この大地の北の果て、かつて神々がこの地に舞い降りし時代にできたとされる凍てつく白き大地。

 白き吹雪と振り続けるその雪は、人の記憶さえ消してしまうとまで言われたその大地には、ある王国が存在した。

 アルマーニランド王国。

 わずかな領民と王族、そして感情を持たない氷雪の魔導人形で形成されたその王国はいつしかこう呼ばれるようになった。

 『忘却の王国』と。

 そんなアルマーニランド王国に、ある女王が即位する。

 彼女の名は、メエル・フォン・アルマーニランド。

 彼女は、父であるノルド・フォン・アルマーニランド、兄ザファル・フォン・アルマーニランド、妹メイニャ・フォン・アルマーニランドを城の地下深くの牢に閉じ込めると国民を先導し、諸外国へと戦争を仕掛け始めた。

 メエル・フォン・アルマーニランドには王国の始祖でもある『氷結女王』の力とも言える冬の加護が存在した。

 彼女はその力を使い、諸外国を次々と滅ぼしその力で滅ぼさせた国は冷たい白い吹雪で閉ざされた。

 しかし、彼女の統治は長くは続かず、大国に敗戦しメエルは死を待つのみとなった。処刑当日を彼女はただ静かに待っていた。

 だが、処刑当日。牢にはメエルの姿はなく壁に赤き文字でこう書かれていた。


「どうか、領民と家族の命だけは」

 

 彼女の行方は未だ分からない。

 そうして、狂王とも言われた女王の物語は幕を閉じたのだった。




 しかし、ある者はこう言う。


「かの女王は、異界の国で生きているのではないか」

 と。

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