美人親子を助けたら盛大に愛された件
「それにしてもまさかここで会えるとはね。別におかしなことではないが考えることは一緒だったか」
「あはは、そうですね」
俺は目の前でそういった男性の言葉に笑って頷いた。
彼の名前は堂本
「……君には本当に申し訳ないことをした」
「えっと、本当に大丈夫ですよ。正樹さんが悪いわけじゃ……って、これだと菫さんと同じじゃないですか」
デジャブを感じたと思ったが菫さんにも同じことをしたっけか。
あくまで悪いのはあの人たちであって正樹さんたちは何も悪くなんてない。あの時菫さんにも言ったことを伝えると、正樹さんは顔を上げてホッとしたように息を吐いた。
「君にそう言われるなら救われるよ」
笑みを浮かべた正樹さんは言葉を続けた。
「兄の行動には確かに振り回されはしたが、それだけ香澄さんが大事だったということだ。家を捨ててでも一人の女性のために動ける勇気を今は尊敬している」
俺としても父さんたちのことをそんな風に言われるのなら救われた気がする。
こうして俺と正樹さんが離れて話をしている傍ら、女性陣は五人集まって楽しそうに会話している。それにしても……あれだけの美人が五人も並ぶと本当に壮観だ。場所が場所ならナンパに声を掛けられ続けそうだ。
「奏も君のことをとても好いているようだ。どうだい? 奏を嫁に」
「……うぇ!?」
気を抜いていた時に突然そんなことを言われて俺は驚いた。
奏を俺の嫁に、まさか冗談だろと思ったけど正樹さんの表情は真剣だった。とはいえその問いかけが本当か嘘かどちらだとしても、俺の答えは変わらなかった。
「もう俺には大切な人たちが居ますから。残念ですけどね」
「はは、それもそうか。だがその言い方だともしかして……いや、これ以上を聞くのは野暮というものか」
俺は何も言わずに苦笑するだけだった。
そこを突っ込まれたとしても言い返す言葉は用意しているが、正樹さんが俺たちのことを苦言を呈するようなことは言わなかった。それどころか、大した男の子だと頭を撫でてくるくらいだった。
「娘もいいが、息子というのもいいものだな。君が奏と一緒になればいつでもこうできるのだが……フッ、今は諦めるとしよう」
「ま、正樹さん俺は……」
「はっはっは、そんな顔をするな隼人君」
いやそんな顔にさせたのはあなたなんですがね……。
まあでも、こうして出会った最初は何を言われるかビクビクしていたのは確かだ。でも話してみたらこの通りお茶目な一面もあるし、何より奏と菫さんのことを心から大切にしている優しい人だった。……そして、俺のこともちゃんと考えてくれていたのだ。
「パパ! お兄さんを独占しないで!!」
さて、そんな風に正樹さんと話していたら奏が俺に抱き着いてそう言った。睨まれた正樹さんは苦笑し奏の頭を撫でる。
「実は隼人君に奏を嫁にどうかなと提案したのだが……断られてしまったよ」
「パパ! 私は別に……でも……そう……ですか」
いや……もう正樹さん!!
本気で悲しそうな顔をした奏が俺を見つめ、俺はアンタが変なことを言うからだと正樹さんを睨む。そんな俺たちを正樹さんと菫さんが微笑ましく見つめていた。
「まあまあ。今はそうだとしても、もっと奏ちゃんが立派になったら私たちと一緒に隼人君のお嫁さんになるのもいいんじゃない?」
「お嫁さん……私がお兄さんの……はうぅ」
「奏ちゃん!?」
あ、奏が目を回して倒れてしまったぞ。
それから奏は何とか平常心を取り戻したが、顔を赤くして俺をチラチラと見つめ目が合ってはさっと視線を逸らす。
「はは、まあ今日はこの辺りで帰るとしよう。奏、菫も行こうか」
「えぇ。奏、行くわよ?」
「あ、はい……」
振り向いた奏に手を振ると、奏も笑みを浮かべて手を振ってくれた。
そのまま去っていった三人の背中を見送り、俺は三人に視線を向けた。
「帰ろっか」
「そうだね」
「えぇ」
「分かりました」
本当にこうやって誰かと一緒に我が家に帰る喜びってのはいつになっても忘れられそうにない。そんな俺の笑顔が見られていたのか、歩き出した俺の手を亜利沙と藍那がそれぞれ抱きしめた。
「えへへ、ずっと一緒だもんね私たちは」
「そうよ。どこまでもずっと一緒なんだから」
二人からジッと見つめられそう言われた。
俺はやっぱりその言葉が嬉しくて、自然と頬が緩むのを我慢できなかった。咲奈さんは何も言わず俺たちを微笑ましく見つめていたけど、俺は二人に少しだけ離れてもらうように頼んで咲奈さんに向けて腕を広げた。
「……ふふ、これじゃあどっちが年上か分かりませんね」
苦笑しながらも嬉しそうに咲奈さんは俺の胸に飛び込んだ。
「う~ん……じゃあさ、こうすればいいんだよ」
「そうね。そうしましょう」
咲奈さんを抱きしめる俺を両方から包み込むように二人が抱き着いてきた。
「……なあみんな」
それぞれ俺を見上げた彼女たちを見つめながら、俺は少し前のことを思い出しながら口を開く。
「絶対に逃がさないっていうか、溺れればいいって言われたことがあるけど……俺からも言わせてほしい。絶対に三人を逃がさない」
……ちょっと重いかな、でもこれが俺の意思表示だ。
普通の人なら気持ち悪いとか思われるかもしれない、だが思った通り彼女たちの反応は違った。
「もちろんだよ♪」
「えぇ。ずっと縛り付けてちょうだい」
「うふふ、絶対に約束ですよ♪」
その約束は正に契約のようであり、一生を共に過ごすための呪いでもあった。
それからの日々は慌ただしくもありやっぱり幸せな日々だった。
俺の傍には常に彼女たちが傍に居て……藍那がよく奏を遊びに誘ったりして彼女とも一緒の時間が増えた。
父の両親については色々と話を聞いていたけど、奏に拒絶されたことであまり会話をすることもなくなったのだとか。それだけ孫娘に嫌われたことが堪えてしまったのだろう。
「ねえ隼人君、どこか行きたいところはある?」
いつものように夕飯を済ませてみんなと語らう団らんの時、藍那が旅行にお勧めのパンフレットを見ながらそう聞いてきた。みんなと行けるならどこでもいいのだがちょっと考えるとするか。
「奏ちゃんのところも誘うといいかしら?」
「うんうん。良いと思うよ」
本当に奏との時間も増えてきたなぁ。
っと、そんな風に賑やかになった周りについて考えている時だった。ふと咲奈さんがお腹を撫でながらこんなことを言うのだった。
「ねえみんな、今日分かったことなんだけど――」
まあ色々とこれから起きるのは間違いない。
でもそこには絶対に笑顔が溢れていて……俺たちはみんなで幸せだと断言出来るほどに確かな強い繋がりで結ばれていた。
『隼人、幸せにな』
『幸せになりなさい。ずっと見守ってるから』
……あぁ、見守っていてくれ。
誰にも羨まれるくらいに幸せになってみせるから。
仄暗くもあり温かな愛に包まれたが、俺はそれが本当に幸せだった。
そうそう、俺と彼女たちを繋ぎ合わせるきっかけになったカボチャの被り物なのだが何故かずっと祭られている。仏壇にお参りに来た奏たち一家に大層驚かれてしまったが、これだけは捨てるわけにもいかないしなぁ。
ま、そんなこんなで俺の日常は続いていく。
どこまでも彼女たちと一緒に……最後にそうだな。俺の歩んできたあの日々を言葉に表すとどうなるんだろう……う~ん。
美人姉妹……いや、美人親子を助けたら盛大に愛された件?
……うん、しっくりくるなこれで!
美人姉妹を助けたら盛大に病んだ件~お終い~
【あとがき】
ということで完結となります。
もう少し色々と掘り下げても良かったのですが、これ以上続けるとグダグダになりそうだったのでこのような形になりました。
とはいえ個人的には良い終わり方だと思っているし、一つの良い物語を生み出せたのではないかなと思っています。
評価や応援コメント本当にありがとうございました。
皆さんのおかげでほぼ毎日投稿を続けることが出来ました。50日くらいは毎日投稿していたんじゃないかな……駆け抜けたぜって感じです(笑)
自分が思うヤンデレというものを前面に押し出した作品でしたが、多くの方に楽しく読まれたのなら幸いです。
最後になりますがみなさん、本当にありがとうございました!
PS、美人でおっぱいが大きくて一途なヤンデレが大好きだああああああああ!!
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