稀有な炭素と逃げ道

@Exaggerate

第1話

側から見て、私達は仲が良く、強くくっついていたんだと思う。

幼馴染、という関係は漫画やアニメで特別な関係として描かれる事が多い。

久しぶりに再開し、互いの両親の勧めから一緒に出かけることになった。


何か話そうと思ったが、これと言って話題がなく、

最近どう? うん、楽しいよ。

英語の授業で思考停止で反芻した

How are you? I am fine.

に相当するやり取りしかできなかったため、何か共通の話題を見つけるべく本屋に足を運んだ。


この漫画面白いよ、今度読んでみるね

野球知ってる、 うーん分かんない


会話が続かない。

しばらくするとあいつは1人で野球雑誌を立ち読みし始めた。

側で見つめているのも癪なので

自分も興味のある漫画コーナーへ行き

同じように立ち読みした。

本屋は立ち並ぶ本のお陰で通路は狭いが気まずい空気の時には

隠れられる、言わば逃げ道が多数存在する。


どうだった?久しぶりのお出かけは?

楽しかったよ、

うん、ほんと。


黒鉛は柔らかい、脆い。


我々は別れ際、互いに不快な気持ちを抱えていた。

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