第26話 ~死~
僕は野良だ
好きに生きる
好きに逝く
いつもの事だった
川べりをお散歩して
大きな人のカフェでお水をもらって
虫を追いかけて草むらに入って
住宅街に行って仲間と話し
駐車場でそよそよ寝ていた
最近は歌うように鳴く
最近は楽しく歩く
何も無く凪のように
幸せに過ごしていた
僕は今日も歩く
住宅街に降り立った
ポテポテと歩いて
周りを探索していた
その時だ
曲がり角の右側
僕の体の真横
赤と白の大きな物体が見えた
・・・え?
目の前に迫ってきたと思ったら
全身に大きな衝撃が走った
宙にとんだような気がした
目の前が白くなって
青い空が上に見えた
それなのに視界には
赤い何かか垂れてきた
僕は車に跳ねられ
塀に叩きつけられていた
何が起こったのか分からなかった
どこか、他人事のように
赤い車が大きい音と共に
走っていくのが微かに見えた
起き上がろうと体を動かすと
今までと比にならないくらい
激痛が走った
どうして・・・?
僕は一体・・・?
目の前はアスファルトの道
道に倒れてるのがわかった
ああ、僕・・・
轢かれたんだ・・・
体から力が抜けるのを感じる
それと同時に
痛みも感じなくなっていった
ああ・・・
助けてとも思わない
思えない
僕はもう死ぬんだ・・・
今までの事が頭によぎる
主様
茶トラ
クロ
太陽
豪快
男の子
ブチ
女の人
男の人
カフェの大きい人
黒猫
歌うたい
学生くん
学生ちゃん
ピンキィ
もっともっとたくさん
人間がよく言う
走馬灯って
こーゆーことかな・・・
僕は恵まれていたと思う
怪我もしたし
死にかけた
ごはんも貰った
たくさん傷ついた
たくさん助けられた
呪縛の首輪も無くなった
もう目が閉じてくる
僕の周りに
赤い液体が広がる度に
何も聞こえない
何も見えない
遠くで、微かに聞こえる
大きい人かな
歌うたいかな
すごく叫んでる
でももう
僕・・・動けない
ありがとね
叫んでくれて
心配してくれて
生まれ変わるって
あるのかな
僕はまた猫になるのか
それとも人になるのか
はは・・・っ
そんなことわかんない
どうでもいいや
何になろうと
僕は僕だろうから
僕は黒猫だ
日向には居れなかった
出れば潰される
そんな存在だった
これは
ただの野良猫が
好きに生きて
好きに死んだ
それだけの話
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます