第18話 ~偶~
僕は野良だ
好きに歩く
好きに鳴く
主様が居なくなり
空の部屋に来ても虚しい
いつの間にか
主様の部屋には行かなくなった
商店街を歩いていく
クロはいない
太陽も豪快も
真顔で仕事をしている
忙しそうにする皆を
横目にみながら
狩りをする気力もなく
とぼとぼ歩いていた
あーあ・・・つまんないな・・・
僕は商店街を出て
知らない場所へ行く
いつもの公園を突っ切って
緑が少ない方面へ
やがてアスファルトばかりの
駅の前に来た
不味そうなネズミばっか
狩りもしたくない
どうしようかな・・・
狩りをする所を探し
フラフラと人の間を縫う
見渡すために塀に乗り
人の流れを眺めていた
・・・え!?主様!?
忙しく歩く人の中に
いつもの様に険しい顔で
人混みを避けて歩く
主様がいた
待って!主様!待ってよ!
ねえ!主様!!!
僕は主様を追いかけて行った
人混みで上手く進めない中
器用に早く歩く主様に
見失わない様に走るのが
精一杯だった
待って!主様!
どうして僕を置いていったの!?
ねえ!待ってよー!!!
やがて主様は
大きいマンションの入口へ消えた
僕は入る気になれず
入口の影に潜んだ
何時間経っただろう
色んな人の出入りを眺め
僕は疲れてきた
・・・僕、何してるんだろう・・・
・・・もういいや
そう思った時
再び主様が出てきた
・・・主様!?
少し優しめな顔で
女の人と歩いている
手にはキャリーバッグ
中には可愛らしい猫がいた
・・・ああ、そうか
主様は新しい場所を得たんだ
僕と関わって猫が好きになって
愛する人と可愛い猫
理想を手に入れてた
僕はもう過去なんだ
そっか
うん
そうだよね
僕は黒猫だ
主様へは幸福を運んだ
新しい価値観を
だからもう
僕の役目は終わり
役目の終わった黒猫は
影に消えていくね
バイバイ
主様
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