1話完結まとめ(オリジナル)

セントラル特快(くすら)

Disparity

私のクラスは、女子の中でトップに立つ人がいる。名前は西上結美。聞いたところによると、大会社「西上グループ」の社長の1人娘らしい。成績優秀スポーツ万能。おまけに容姿端麗。ついでに家も物凄い広い。絵に描いたような「お嬢様」だ。成績はいつも下位をうろうろしてて、スポーツをやらせればまともに出来ない、そして賃貸マンションで暮らしている私とえらい違いである。


今日も今日とて、あの子は一際輝いていた。

「じゃあこの問題、西上に解いてもらおうか。」

「はい」

透き通った声で返事をし、すっと立ち上がった。

「答えは、『(x−2)²+(x+5)²=36』…ですか?」

「おお、正解だ。この問題特に難しいのに、良く解けたな。」

「そうですか。でも、簡単に解けましたよ。」

何度も思うけど、本当に彼女はすごい。彼女なら、海外の大企業のCEOとかに太刀打ちできるんじゃないかと思うレベルである。

そんな彼女を見るたびに、自分の冴えなさにイライラしてしまう。

「はぁ、何かモヤモヤしてきちゃった…。」

―――「そうだ、今日久々に「あれ」やろうかな。」

その考えが浮かぶと、さっきまでモヤモヤしていた心が、一気に晴れ渡った。

「楽しみ…早く学校終わんないかなぁ。」


放課後、私は学校の別館に来ていた。本館より古い建物なので少し薄暗い。放課後で、音楽室や家庭科室などの特別教室があるわけでもないので、生徒の姿は私以外に見えない。今の本館ができる前は、特別教室はすべてここにあったみたいだけど、本館が立て替えられると同時に、別館は半ば倉庫と化した。そんな別館の奥にある部屋。昔は宿直室として機能していたらしいが、今では全く使われていない。私はそこの扉を開け、中に入った。

「さあ、久々に『着衣濡れ』楽しむとしますかね。」

そう、私は服を着たままびしょ濡れになるのが趣味なのだ。目覚めたのは小学生の時。授業でやった着衣水泳で、一気に着衣濡れの虜になった。高校に入ってからは、ローションにも手を出し始めた。しかし、家だと家族の目が気になってしまうので、他の家族が誰もいないときにこっそり楽しんでいたのだが、それだとやる頻度はとても低くなってしまう。そんな悩みを解決してくれたのがこの部屋だった。この部屋にはお風呂場もあるし、ちゃんとシャワーに水道が通っているので、後片付けもしっかり出来る。そういうわけで、最近では専らこの部屋で着衣濡れを楽しんでいる。

「今日もこの制服、めちゃくちゃになっちゃうんだろうな~。当たり前だけど。」

棚に仕舞ってあるローションを取り出しながら、そんな独り言を呟く。そうしてお風呂場に行き、家から持ってきた風呂桶に水を注ぐ。そしてコップを使って風呂桶の水をすくい、いざ始めようと思って制服の袖に水をかけようとした、その時である。お風呂場の扉がガチャっと開いた。

「誰!?」

扉の方に目を向けると、そこには…


「…あの、ごめんなさい。勝手に入ってきちゃって。」

何とあの西上さんが立っていた。

「あ、え、あの…。」

頭の中がこんがらがる。なんで西上さんがこんなところに?迷っちゃったの?それよりも、こんなとこ見られちゃったら、今後私この学校で絶対やっていける自信がないんだけど!?

「それで、何してるんですか?」

「え?えっと、水泳の練習…」

もはや意味不明だ。一体どこに、お風呂場で制服を着たまま水泳の練習をする学生がいるんだ。というか、何で水泳の錬習!?私、水泳部員でも何でもないのに…。そんなことを延々と考えていると、彼女が口を開いた。

「あの、松石さんにお願いがあるんですけど…。」

「私にお願い?一体何ですか?」

「あの、その…」

「私を…――にしてください…」

「え?」

「私を、びしょ濡れにしてください!」

「…はい?」

不意を突かれた。彼女のお願いが、あまりにも思いがけないものだったからだ。

「それはまた、どうしてですか?」

「実は私、前々から服を着たままびしょ濡れになるのに興味があって、でも家じゃ中々そんなことできないじゃないですか。そんなとき、この部屋の外をたまたま通りかかったときに、松石さんが服を着たままびしょ濡れになってるのを見かけたので…」

「…見られてたんですか。」

まさか自分のwetプレイを見られていたとは。さすがに恥ずかしい。

「それで、是非ともあなたにびしょ濡れにさせてほしいと思いまして…」

まさかいい所のお嬢様が、wetプレイを望むとは…。それも、一庶民の私に濡らして欲しいとお願いするなんて…。しかし、もうこの現場を見られてしまったのだ。今更私が恥ずかしがる必要性など皆無である。

「…いいですよ!じゃあこっちに来てください。私が楽しませてあげますから。」

「いいんですか!ありがとうございます!」

彼女はすっとお風呂場に足を踏み入れ、湯船の中に座り込んだ。

「それじゃ、腕を出して。」

そう言うと、彼女は腕を私のほうに差し出した。

「行きますよ。」

そして、彼女の制服の袖に水を注いでいく。流れるように、スカートやブレザーも濡らしていく。濡れた場所は、その色がど

んどんと濃くなっていく。

「凄いですね。なんか、いけないことをしてるような感じ…」

「その感覚も良いんですよ。じゃ、次は西上さんが私にやってくださいよ。」

私は彼女にコップを手渡した。

「いいですか?じゃあやりますよ。」

彼女がコップで水をかける。私の制服はどんどんと濡れていく。この感覚は、とても気持ちいいものだ。

「今度は一気に行きましょうか。この風呂桶を使って、頭から水をかけますね。準備はいいですか?」

「はい!いつでもどうぞ!」

彼女は急に姿勢を直した。多分、「いつでもかけていいですよ」ということでいいのだろう。

私は遠慮なく、頭から水をかけた。彼女は少し驚いたように体をビクッと震わせたが、そのまま一言も発することなく、水を受け続けていた。

「…ふぅ、少しびっくりしましたが、気持ちいいですね。」

「でしょ?それじゃ、次は私にかけてくださいね。」

風呂桶に水を並々と注ぎ、彼女に手渡す。私が座った直後に、彼女が水をかけ始めた。ザバーっという音を立てて、大量の水が私に降りかかる。大量の水が、私のモヤモヤをすべて洗い流してくれるようなこの感覚、本当に大好きだ。自分の髪を軽く整え、私はこう言った。

「それじゃ、次はもっと凄いことをしよっか。」

大量の水を浴びる感覚が気持ち良すぎて、「敬語を使わなきゃいけないんじゃないか」ということさえ忘れてしまう。

「もっと凄いこと!?これ以上凄いものがあるんですか!?」

「うん。ちょっと待っててね。」

そう言うと、私は棚に仕舞ってあるローションを取り出した。そして、お風呂場へと戻る。

「それ、何ですか?」

「ローションだよ。」おもむろにローションが入ったボトルのキャップを開けながら言った。

「ろ、ローションって、あの…?」

「そう、ぬるぬるしてて、とっても不思議な液体。」

彼女の制服にローションを垂らしながら言う。

「ローションって、初めて見ました…。こんな感じなんですね…。」

そう言いながら、彼女は垂らされたローションを手で触っている。手からはローションが糸を引いた。

「何だか私、怖いです…。」

不安そうに彼女が言う。

「そんなんで怖がっちゃいられないよ。心の準備は出来てる?」

そう言うと、私はローションを並々と入れた風呂桶を、彼女の頭上に移動させ、いつでも彼女にローションをかけられる体制になった。

「は、はい!どんとこいです!」

「それじゃいくよ。」

ローションを彼女に一気にかけた。

「ひぁっ!ひぇっ…うむぅぅ…」

やはりローションを初めてかけられた人は、驚きを隠せないのだろうか。初めてローションと戯れたときの私を思い出した。

「はい、全部かけ終わったよ。…大丈夫?」

「…。」

大量のローションのせいで、中々目が開けられないようだ。彼女の銀のロングヘアーや、ブレザー制服は、すっかりぬるぬるにまみれている。悪戦苦闘しつつも、彼女は何とか目を開いた。

「…すごい口の中に入っちゃったんですけど…。大丈夫ですかね?」

「それくらいなら大丈夫だよ。それじゃ交代。今度は西上さんが私にかける番。」

「は、はい!―――きゃっ!」

彼女が立ち上がろうとすると、ローションのせいで滑り、尻もちをついてしまう。

「気を付けて。湯船の縁に手をかけながら、ゆっくり、ゆっくり。」

そうして彼女は何とか立ち上がり、私にローションをかけられる体制になった。

「さあ、いつでも来て!」

「行きますよ!せーの!」

彼女の掛け声とほぼ同時、私は大量のローションに包まれた。まず顔面が覆いつくされ、次に体と制服を伝って一気に流れていく。最初は少しばかり気持ち悪いとも感じてしまうが、慣れてしまえばどうってことない。

「ああ、気持ちいい…。こうやって一気にローションにまみれるの…。」

そう言いながら、足元に広がっているローションを手で掬い、服や髪、顔などに塗り込んでいく。

「ほら、西上さんにもあげる。」

掬ったローションを、彼女の太ももに塗り広げる。

「じゃあ、お返しです。」

彼女もローションを手で掬い、私の太ももに塗り広げた。

そして私たちは、時間の許す限り、ローションと戯れ続けるのだった。


全ての事が済み、シャワーでお互いの体を洗っていた時である。

「松石さん、また遊びに来てもいいですか?」

「もちろん!私がいるときなら、いつでも歓迎するよ!」

「ふふ、嬉しいです。こうやって、一緒に遊べるような人は、私には今までいませんでしたから。」

「私も、自分の趣味をこうやって理解してくれる人はいなかったし、増してや一緒にやりたいなんて言う人もいなかったからね~。」

「それじゃ、また来ますね!松石さん!」

「あ、琴美でいいよ!あと、そんなに敬語使う必要ないから!」

「あ、そうですか。それじゃ、また…来るね!琴美ちゃん!」

「うん!約束だよ!由美ちゃん!」

水の音が響くお風呂場の中で、私たちはずっと笑い合っていた。 

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