第93話 ナルジェ国王との謁見

ハヤトとボスノーは王城の門前に来て衛兵にブルネリア王国の公爵にお目通りを願った。


最初はけんもほろろにあしらわれていたが、ハヤトが冒険者カードを出したところあわてて取り次いでくれて、執事が門まで迎えに出てくれた。


王城にふたりとも初めて入るのだがハヤトは流石に慣れていて、あまり緊張はしていないが市井のボスノーはかちかちになっていた。


案内された部屋に入ると、ナルジェ王国国王ジェル・モラルドと第一王子であるクラミネル・モラルド、第二王子のジム・モラルド対して向かいの席にはブレット・スミロフ公爵、スミス宰相、ジム騎士団長が座っていた。


公爵様が言葉を発生して先ず「この度のこと、幾ばくかの偶然が重なって先ずここまでの旅の警護を指名依頼した我が国の冒険者ハヤト殿そして貴殿の国の魔道具屋のご主人ボスノー殿です」


「冒険者をしておりますハヤトと申します」と深く一礼して腰を折った。


「私は王城の近くに店を持ち、ハヤト様と懇意にしている魔道具屋のボスノーです」と同じく深く一礼した。


「して、公爵殿、この者たちが今回の帝国侵略とどの様な関係が?」と王様。


「先ず帝国側がここ最近3度も貴国に侵略を試みている原因はここに居るボスノー魔道具店のマジックアイテムが帝国にとって魅力的でそのアイテムを作っていると思われるボスノー殿とその周辺の関係者を根こそぎ帝国側に連れていきたいのが主なる目的だったのです」


「それは拉致した兵士からも聞いておるがボスノー、お主はただ仕入れているマジックアイテムを売っているに過ぎないと言っているそうじゃな?」


「はい、勿論自分でも魔道具を制作して売っておりますが、帝国の騎士たちが目の色変えて買いに来るのは全てここにいらっしゃるハヤト様から仕入れているものばかりです」とボスノー。


「それに関しては、王様に私から事の顛末をお話ししましょう」と公爵が話し出す。


ボスノーの娘さんがブルネリア王国の学校を卒業して帰国する際にハヤトに助けられ、ここまで連れてきて貰った件、獣人国にボスノーが定期的に出店を出しているのでハヤトも一緒に行って手伝いをしたりして、親交を深め、定期的にハヤトがお店にないものを卸す約束をしたこと等を話した。


「それではボスノーの店で扱う魔剣が帝国の騎士団に偉く気に入られて、我が国の魔道具作りのスキルを欲して帝国が侵略してきているということじゃな?」


「確かに王都ではボスノー店の魔道具が素晴らしいとすごい人気が出ているのは知っていたが、まさか帝国が勘違いでそのスキルの高さを我が国全体が持っていると勘違いしていることだな?」と第一王子が述べる。


「恐らくその様な事かと」と公爵。


「いずれボスノーさん一家を拉致してどこから仕入れているか聞き出す算段をしてくると思われますね」と公爵。


「ところで、ハヤトと申すか、お主はそれ程の魔剣を作り出すことができるのか?」と王様。


「それは私の特別なスキルでございます。人が作ることは不可能ですね」


「わが騎士団の連中も全てボスノーの店で購入したと申しております、父上」


「どうしたものかのう、完全に誤解なのにこう度々越境されても困るし・・・」


「ボスノー殿、今後のマジックアイテムをある程度同業の店にも流して、お主だけが扱っているのでは無いことを広く知ってもらい、仕入先はブルネリアのハヤトという冒険者から仕入れていることを公言してはばからないようにしてもらえるかな?」と公爵殿が言う。


「他の店には若干値段に差を作り、ボスノー店だけが売っている訳でないことを知ってもらい、尚且仕入れているのがブルネリアの国だと吹聴してください。そうすればあなたに対しての危険は低くなると思うので・・・」公爵が言って続ける。


「ハヤト殿であれば帝国の誰が来ても大丈夫ですし、我が国とは不可侵条約を結んで居るので軍隊が動くことも有りませんから」と宰相があとを受けて話した。


「そうですね、ボスノーさんが狙われるのは僕としても困るので、他の店でも金額を少し色をつけてボスのーさんから仕入れる形にして、それが全て僕からだと公言しておけば何ら心配は無いかと」


「でも、そんなことをしたらハヤト様に危険が・・・」


「ハヤト殿でしたら全く問題ないですよ、ねぇ、ハヤト殿」と笑いながら公爵がいう。


「まぁ、大丈夫でしょう!暗殺者が来ても私達ファミリーに危害は全く加えることは出来ないですから」


「お主の力はそれほどまでの物か?以前、帝国で武道大会が有ったときには確かブルネリアの冒険者でSクラスのビズモンドというものが優勝したと聞いているが?」


「その時ビズモンドを影から護衛して、全ての攻撃者をハヤト殿が抹殺してしまったのですから、ビズモンドさえも数秒でやられてしまうと本人が言ってましたよ」


「そんなに強いのか・・・」


「我が国にある『空飛ぶ船』や『快速魔道鉄道者』下水道のインフラは全てここにいるハヤト殿が作ったものですから」と公爵が王様に言った。


「あの『空飛ぶ船』を作ったのがこの者か」と王様がしげしげとハヤトを見た。


「公爵殿、今後もハヤト殿にこの国への魔道具の仕入れを頼みたいのだがそれは構わ無いでしょうか?」と第一王子のクラミネルが聞いてきた。


「それはハヤト殿とボスノー殿が決めることで我が国がタッチすることでは無いですよ」


「ハヤト殿?いかがでしょうか?」と第一王子が聞いてきた。


「私としてはボスノーさんがそのために危険にさらされるのであれば考えますが特にボスノーさん以外この国の魔道具屋さんに私のアイテムが広がって売られても気にしませんよ」


「ところで、ブルネリアお王国ではこれ程の魔道具を作り出すハヤト殿の魔道具をあまり売りに出ていないのは何故ですか?」と第一王子が公爵に問いただしてきた。


「勿論我が国でも高級の魔道具に関しては貴族も含めて買い漁る人もいますが、基本ハヤト殿が我が国にいる限り、スタンピードも他国からも侵入も恐れることが無いので冒険者も自分の力で魔物を討伐したいと願い、あまりマジックアイテムに固執することは無いと思われますね」と公爵が持論を述べた。


「恐らくハヤト殿もボスノーさんの店に卸すもので、一瞬で多数の人間や魔物を撃てるアイテムは卸してはいないと思いますよ」とスミス宰相が言う。


「今宰相殿が言ったように、あまりにも強いアイテムがこの世界に流れることは冒険者として良しと思わないので私は卸していません。一応線引きをして此方に持ち込んでおりますから」


「それでも、帝国が欲してくるほどの物なのだな!」とクラミネル王子がうなった。



「そこで結論だが、ボスノーお主の所だけでハヤト殿のマジックアイテムを扱うのではなく値段差をつけても構わないので他の魔道具屋に広く販売できるようにしてくれぬか、お主の家庭を守る意味でも。そして、仕入先はブルネリア王国のハヤトという冒険者の御仁だと少し吹聴気味に広めてくれ。そうすれば我が国への帝国からの侵略は自然に立ち消えてくるであろう」と王様が述べた。


「しばらくの間は帝国側の兵士が侵略してきたら撃退する【シールド】を作ってもいいですが、交流を完全に止めるのではなく開いたところには出入国の事務所を置いて双方で管理する場所を2箇所程置いて、後は絶対に出入りできないようにしばらくの間はするということで、どうですか?」とハヤト。


「そんなことが可能なのか?可能であれば今ある数カ所のところを2箇所にして残し、それ以外の国境を貴殿の【シールド】で締めてくれ」と王様が言う。


「ハヤト殿がいなくてもその【シールド】は維持できるのですか?」


「私の魔力が有る間は大丈夫ですよ、魔力は無限に有るし・・・」


「ええええ、魔力が無限?人ではないぞそれは!」と王様がツッコミを入れる。


「まぁ、ハヤト殿は人外なので納得してしまうがな、我らは」と公爵殿。


「それでは明日1日掛けてその作業をしますので、ナルジェ王国のどなたかが付いてくれるよう手配願います」


「わかった、明朝9時に王宮の前に儂が出向こう」と第一王子が言った。


「それでは乗り物は私の車を用意するので特に馬車等は必要有りません。作業も1日で終りますから」


「わかった、それではその依頼のお金だが白金5枚で頼もう」と第一王子。


「それじゃ、私達ボスノーさんと店に戻ります」と言って城を後にした。


「なんだか、ハヤト様にえらい迷惑をおかけすることになり申し訳有りません」とボスノーがえらくしょんぼりして謝る。


「いや、僕もあまり深く考えないでマジックアイテムを卸していたことも一因ですからボスノーさんたちが秘密裏に拉致などされなくて良かったです。



ボスノーさんの店に戻るとかなりの人だかりがしており、陳列した品の奪い合いが始まっていた。


これではやはり問題になりそうだとハヤトも思い、早々にボスノーさん経由で他の店にも2,3本の魔剣とマジックテント等を渡すようにボスノーさんに話をした。


翌日、ハヤトファミリーはラッティーとセリーヌそれとドリスを置いて、ハヤトは『万能乗用車』で王宮の城門に来ていた。


「おう、ハヤト殿きょうはよろしく頼む」と第一王子が挨拶をかわしてきた。


「此方こそ、よろしくお願いします、此方は仲間のアレンとガードマンそれと従魔の『スラ』と『イム』そして銀龍とキラービーたちです」とファミリーを紹介して

車の中に入った。


当然のように、王子は叫び声を上げて驚いて車内を眺め回している。


「取り敢えず、王子様、どこに関所を設けますか?」


「ああ、今ある関所のうち南のバッキスの近くロザンとベルスナードの南に位置するセルトを残して後は全て一時閉鎖するとしたから」と王子が述べる。


「それではそこに行きましょう、アレン頼むね」


アレンは【サーチモニター】を起動して、【マッピング】を併用してロザンに飛び立った。


10分程でロザンに着いて、ハヤトが【結界】で事務所から周りを囲い次にセルと迄飛んで同様に【結界】で囲い、その後、【マッピング】を見ながらハヤトは国境線に沿って【シールド】を掛けて、その後2箇所に掛けていた【結界を】を外した。


【結界】が有った部分だけ【シールド】が施されておらず、それ以外は国境が完全に【シールド】されてしまった。


「王子様、一応国境は全てシールドされて誰も出入りが出来ないことを、ナルジェ王国側の冒険者、商人たちに伝えてください。無理に通ろうとして怪我する恐れもありますから」そう言って、ハヤトは城の城門に戻り、王子より白金5枚を受け取ってボスノーの店に戻った。


戻ってきた王子は王様に無事全てが終わった報告をしたが、そのさい、「父上、あのハヤトという冒険者は信じられない規格外の冒険者ですぞ。乗っている魔道車は空を飛び一瞬でロザンとセルトに移動し、【シールド】を一瞬で終えるなどとはこの国、いやこの世界で魔王でもできないことを一瞬でやり終えてしまいましたから」


「何でも彼は一瞬でブルネリアの国も滅ぼすほどの力の持ち主だそうだ」


「何故彼がブルネリア王国に誕生したのかも不思議なことだが、残念ながら我が国にはSクラスは一人しかいないのに残念でならないな!」と王様が残念がっている。


「父上、今後はもう少しブルネリア王国との付き合いも密にして出来れば帝国のように、我が国にも『空飛ぶ船』を買い付けて交通のインフラを考えたほうがよろしいかと・・・」


「ボスノー魔道具屋はお主は知っているのか?」と王様。


「名前は最近良く聞きますが、王宮からは歩いてすぐの商店街の三軒目にあると聞いております。明日にでもどんな物を置いているのか見てきましょう」と王子が答えた。


一方公爵と宰相はハヤトがあっという間に問題を解決してしまい、冒険者の傭兵を出したりすることなく、ナルジェ国内で処理できたことで安堵した。


「公爵殿、しかし今後ハヤトファミリーに帝国側から刺客や拉致しようとする輩が大勢ケープを訪れる可能性がありますな」


「いやー、スミス、ハヤト殿だったら全て任せておいて問題ないよ。ファミリーの家は誰も敵意の有る人間は入れないし全員がSランク以上の冒険者で、従魔も地上最強だと聞くからほっといても問題なかろう」


そんな話をして予定よりも早く帰れそうだと、二人は帰国のじゅんびを始めるのだった。



その頃、店に戻ったハヤトはボスノーさんたち3人の家族に万が一が有っても困るので、ハヤトとすぐ連絡を取れる『遠距離通話機』と一度だけ命の危険の際に身代わりになってくれる『身代わりのリング』のマジックアイテムを3人の首につけてもらった。


「ボスノーさん、もしご家族の誰かが命の危険があった場合、これが身代わりで砕けます。瞬間私に連絡が来て直ぐに私が【転移】でお助けしますので必ずみなさんが身につけておいてください」と言って3人に渡した。


ボスノーも帝国の刺客や拉致するために送られてくる奴らが、妻や娘に害をなすのはたまったものではないと、今日1日、仲間の魔道具やの主人達に仕入れた魔剣やアイテムを売ることを許可して数店の店先にもハヤトの製品が並び始めた。


翌日朝食を済ませてボスノーが店先に出ると、第一王子が店を訪ねてきて、『マジックテント』と『魔剣炎の剣』を購入して店を眺め回していた。


そこにハヤトが店先に出てきて、王子に挨拶をした。


「おお、ハヤト殿昨日は世話になった。お主の手際の良さにはまことに感心していたところだ。この店も初めて訪れるがなかなか良いアイテムが並べられているな」


「これからは時々購入しに来るので宜しく頼む」」と言って王宮に帰っていった。


「ボスノーさん、王子とコネが出来たし良かったじゃないですか!」


「これも皆ハヤトさんのお陰ですよ」


そんな話をしていたら、ブルネリアの騎士が3人で訪ねて来て、「此方での公爵様の仕事が予定より早く済んだので昼食を済ませたら王宮の門に来てくれ、帰国するとのことです」と公爵様からの伝言を伝えに来た。


「わかりました、午後1時には王宮城門前におりますから」と伝えてハヤトはセリーヌたちにも準備をさせる。


「ボスノーさん、それではまたマジックアイテムを持ってきます。それまでお元気で」そう言って、『万能乗用車』に全員が乗り込み商店街の定食屋で昼食を食べて王宮の城門前に向かった。


城門で待つこと10分程、馬車2台と騎士達30人が出てきた。


そうそう、クラウディアがハヤト達の車に乗り込んできた。


「もう、気に入らない王子さんはいないよ」とハヤトが言うが、クラウディアは「ハヤトさん達の車のほうが安全で快適だし、帰りはこの車で帰ることにしたの」と言って乗り込んでちゃっかり座席に座った。


車はゆっくり動き出し、最初の宿泊地バッキスに向かって走り出した。


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