第76話 獣人族の王との謁見

ボスノー一家の出店が大繁盛でハヤトが作った魔剣とマジックアイテムのテントが予想以上の反響でボスノー一家の年商を大幅に更新してハヤトは追加でマジックアイテムを作り、持って行った夕方、皇后様からの王宮への招待が来て翌日のお昼に伺うことになった。


ボスノーさん達が出店を片付けて帰って来た。


「ハヤトさん、すごい量の魔剣とテントにカップ、本当にありがとうございます」


「いやいや、お役に立てて僕も嬉しいです」


「ボスノーさん、先ほど王宮から招待の話が出て明日の11時に私とセリーヌは王宮に行って来ますので戻りは3時ごろかと思います。ドリス達は裏庭の『万能乗用車』の中に居ますので何かありましたらドリスに言ってください。僕とは直ぐ連絡がつきますので」


「今日、かなりの追加を頂いたので品切れはないので大丈夫です。あと1日商売してナルジェに予定通り戻りましょう。それでは後ほど夕食の時に」とボスノーさん達は部屋に行った。


ラッティーが魔力の訓練をして上がって来たので、明日の件を伝え裏庭でドリスを相手に模擬戦とかして訓練させてもらうと言うのでドリスには念話でその旨伝えておいた。


ラッティーと3人で階下の食度に行きボスノーさん達を待って居ると彼らも程なくおりて来て6人で夕食を始める


「ハヤト様、こんな事をお願いできる立場ではないのですがナルジェのバスタード に戻って本店の店をやるに当たりハヤト様がお暇な時に私がケープに訪れてハヤト様作成の魔道具を仕入れさせていただくわけには参りませんか?いや、素材だけでも結構ですので・・・」


「僕は冒険者で錬金術師ではないからなぁ!魔道具には僕も興味あるしダンジョンでゲットするお宝が重複して居たりしたら無駄なのでそれをボスノーさんのお店にあげるのは全然吝かではないのだけど・・・」


「実は『炎の魔剣』や『氷の魔剣』を解析して私とルビアが作ろうとしてもどうしてもできないほどの製品でこのクラスはダンジョンか古代文明時代のアーティファクトクラスなのです。これをナルジェで時々売れば莫大な金額になります。売り上げの半分をハヤト様にお渡ししますので何卒ご検討程お願いします」


「セリーヌともよく相談して返事しますね」


夕食を終えてそれぞれが部屋に戻りハヤトは先ほどボスノーさんが言った件をセリーヌと相談する。


「僕らにとってお金はこれ以上必要ないけど、魔道具の考え方とかアイディアは彼らの錬金術師3人の考えが貴重なヒントにはなるんだけど余り人間族にあの様な『魔剣』が出回るのも問題な気がするけど・・・」


「旦那様、あの『魔剣』は炎の刃が出て相手を切る、あるいは氷の剣が離れた相手でも切る『魔剣』ですよね?おそらくAクラスの上位の冒険者でしたら剣で魔法を断ち消す事は然程難しいことでは無いのでそれ程レアなアーティファクトでは無いと思いますわ。ですから5本程度をを半年に1回お渡しして、あとは刈り取った魔物の牙や革や鱗を下ろしてあげれば如何でしょうか?あとテントとカップも5個ほど半年に1回お渡ししてあげれば・・・」


「そうしようか、あの剣程度は魔力が多い人でも然程強い炎の刃が飛ぶわけでは無いからいいかな?わざわざ彼が危険を犯してケープに来るよりセリーヌと旅行気分で【転移】でこちらがバスタードの彼の家にお伺いした方が楽なのでそうしよう」


明日の朝食の時に返事をしてあげようと二人はベッドに入った。


翌朝朝練をして朝食を6人でいただく時にボスノーさんに昨日の話の返事をする。


「ボスノーさん、半年に1回の割で『炎の剣』『氷の剣』『マジックテント』『マジックカップ』各5点づつ私が【転移】でお宅にお邪魔して持って行きますよ。

それとその時魔物の牙とか革、鱗も素材として持って行きます。そんなことで如何ですか?」


「厚かましいお願いですみません、それでよろしくお願いします」



朝食を済ませるとボスノー一家は出店に向かい、ラッティーは裏庭で魔力の訓練とドリスから剣技を教わるために裏庭に向かった。


ハヤトとセリーヌはシャワーを浴びて正装に着替えて時間までお茶を飲んで時間を潰して居た。


ハヤトとセリーヌは【マッピング】と【転移】を併用して10時55分辺りに王宮の城門前に【転移】した。


すでに騎士のリーダーの彼が迎えに出てくれており、城門をくぐって王宮に入った。


人間族の宮廷と然程かわらない煌びやかさがあり、客間に通されて「こちらでしばらくお待ちください」と二人は待つこと数分、執事がお茶を持って来て「もう少しお待ちください、私が王様、皇后様との謁見の間にご案内いたしますので」と犬族の執事が恭しく述べて引き下がった。


お茶を飲んで待つこと10分ほど、ノックをして先ほどの執事が「ご案内いたします」と謁見の間に案内してくれて扉をノックしてから静かに開けた。


絨毯が敷き詰められた奥の玉座に体格の良い40代の獅子族の王が座り、隣の席には先日警護した皇后様と王女様が座って居る。


ハヤト達は膝を折って王様に挨拶をする。


「面をあげてくれ、義母の命を救ってくれた恩人だ!堅苦しい事は抜きにもっと近うよってくれ」


「ハヤト殿と申すか、お主は【回復魔法】を使えるだけでなく剣も凄腕だと聞く。

皇后の警護に冒険者を依頼したがまさかお主らの様に強くしかも偶然にも【回復魔法】を使える御仁が居てくれるとは本当に神に感謝したぞ!」


「ありがたきお言葉です。皇后様のお母様がまさか危篤でそのお見舞いの警護とは私たちは全く知らないで、偶然にもお母様を直すことが出来良かったです」


「いやいや、お主のことは冒険者ギルドに問い合わせて聞いたらこの世界でただ一人のSSSクラスの冒険者だと聞いてまたまた驚いて居たところじゃ。皇后も娘もいたくお主の差し出した食べ物を気に入って世の中にこれほど美味しいものは無いと興奮して帰って来て儂も頭が痛いぞ、わはははは」と豪快に笑った。


ハヤトは王様の佇まいを見て”この王様は強い、恐らくSランクの冒険者の上位に匹敵する”と感じ取った。


「おばば様も食されたパンとスープの虜になった様ですっかり元気を取り戻してくれたのも全てお主のおかげだ、本当に心よりお礼を申す。何度となく皇后を襲う輩を一瞬にして葬ったそなたの力見て見たいものだなぁ」


”あっ、ホーラキタキタ、強者は強者を知るだね、戦いたいのでしょ?!僕もだよ”


なんて思って居たら、「昼食の前のひと運動、どうだ、お主と儂とで模擬戦でもしないか?お主は魔法を使っても良いぞ、儂は魔力がないから体力で頑張るのでな」


「お相手仕ります、私も魔法は使わず本来の体術武術のみでお相手いたしましょう」

そう言って、王様達と謁見の間を出て王宮の訓練所のある中庭に皆で向かった。


貴族や騎士団がぞろぞろとやって来て観客席に座した。


皆獣人族ばかりだ。


対峙すると謁見の間で見たよりも一回り大きく威圧感がある。


鑑定をせずともハヤトは王の力量はわかるので真摯に相手をしてあげようと模擬刀を構えた。


王様が素早い動きで先に仕掛けてくる。


剣の速さは流石で獣人族の中ではやはり一番早いのだろう。


軽く躱して模擬刀を横に薙いだ。


そのハヤトの剣を王様が弾いて切り上げた所から一瞬で斬り下ろす。


なかなか素早い対応だがハヤトにとっては普通の斬撃でしかない。


2、3度の剣の交わりの後、ハヤトが動いた。


獅子王の前から瞬間で背後に回り模擬刀でコツンと王様の腰を突っついた。


王様が驚いて振り返るとニコニコとハヤトが笑みを返して、「私の勝ちですね」と

言って刀を下ろした。


「いや〜、警護の騎士達からも聞いて居たがそれ以上の御仁だな、参った!」


「お主が魔法を使ったら叶うものなど居ないのではないか?」


「いやいやまだまだ修行のみです。一番の強敵は家内が一番恐ろしいです」


「そうか!儂もじゃよわははは」と笑い、握手して皆で食堂に向かった。


食堂に向かいながらハヤトは王様に警護していた時の出来事をそれとなく伝えた。


「王様、何度か野盗に襲われ、帰りも野盗ではなく明らかに騎士団に襲われました。皇后様のお母様もどなたかに毒を盛られていたのです。何やらきな臭いことで

お節介かもしれませんが十分に身の回りにはお気を付けください」


「恥ずかしい話だが、お主が生け捕りにしてくれたお陰で誰が何の目的でやったのかはおおよそ見当がついて居る。まことにかたじけない」


二人でそんな会話をしながら食堂に着いた。


試合を見て居た王女様が「母様、父上が模擬戦で負けるのを初めて目にしました」


「そうですね、王様が負けたのは私も初めて見たわ、ハヤトさんは底なしの強さね」


食堂について、王様から貴族達を紹介されて立食パーティー形式の食事会が始まった。


王様にオルバル帝国の武道大会の話をして、獣人国の冒険者が準決勝まで勝ち残ったが惜しくも魔法を使う冒険者に敗れたが純粋な身体能力では優勝者に遜色なかった話をしたら、「その獣人族の冒険者は我が国の騎士団長で冒険者もして居るものだ。ほれ、あいつじゃろ?」と指差したところに彼が貴族と話をして居た。


やはり騎士団長クラスの人だったのか、とハヤトは納得していた。


つつがなく昼食会が終わり再度客間に通されたハヤト夫婦が待って居ると皇后様が来て「ハヤト殿、此度の母の件、誠にありがとうございます。警護の俺も含めて少ないですがこれをお納めください。中に有る短剣を見せればこの国では宿も馬車も全て無料で利用でき、全ての門を自由に行き来できます。王女もまた会いたがっておりますので是非遊びに来てください」そう言って綺麗な刺繍を施した布袋をくれた。


中には短剣の他に白金10枚と金貨50枚が入っていた。


「有り難く頂いて帰ります。皇后様もお元気で」


ハヤト夫妻は皇后が名残惜しそうにして見送ってくれるなか宮廷をあとにした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る