16 機械人形の身体で、学校の授業を受ける( ・ω・)///

 下駄箱げたばこくつをいれて、上履うわばきに着替きがえた。

 

 チャイムとともに、人々は、動き出す。

 

 不思議と、逆らうものはいない。

 

 規則正しく、椅子いすに座り、授業がはじまる。

 

 奇妙きみょうに思える人間の、習慣をながめるのは、嫌いではない。

 

 僕だけ、ずっと、座っているのに、誰も気が付かないのだ。

 案外あんがい、人っていうのは、一人くらい、同じことをしていなくても、気が付かないものなのだ。

 

といっても、僕は、ずっと、机のしたに身を隠して隠れていたのだがね。

 

 出席しゅっせきを取るらしい。

 

 面倒めんどうだ。

 一人ずつ、出席しているのか、確認を取っている。


 僕は、こっそり、姿を現した、


 教師は僕を見つけるといった。


 「おう、賀籠六かごろく、いたのか、気が付かなかったぞ、久しぶりだなー。元気にしてたかあ。」

 

 「はい。げへへえ。」

 

 「よし。元気そうで、何よりだ。」

 

 教室がざわめく。

 

 となりの席の女の子は、あきれた様子だ。

 

 僕が、机の下に隠れていたことを知っていたのだ。

 

 いつも通りの日常だ。

 

 「鈍感どんかんな、教師だよね。」

 隣の席の女の子はいった。

 

 「ああ、教室いる人で気づかなかった人はいないよ。」

 僕は返した。

 

 ちょろい、担任たんにんなのだ。

 

 学校ってのは、子供にきびしい。

 

 今の時代では、子供は保護されすぎているのだ。

 

 子供に手を出せば、すぐにでも、その手の保護団体ほごだんたいが、難癖なんくせをつけてくるのだ。

 

 さらには、いじめを、その手の委員会だとか、団体ぐるみで、黙認もくにんして、いる、クズな事例もあるのだ。

 

 ったく。

 

 大人ってのは、自由なこって。


 大昔は、子供が保護ほごされなさ過ぎた。

 

 教師になぐられることは当たり前だったし、教師側が殴られることもあったが、今ではどうだ。

 

 生徒が殴られたり体罰たいばつを受ければ、一瞬で、さようならだ。

 

 しかしまあ、いつの時代も弱いものいじめはなくならないものだ。

 

 大人ぐるみの、いじめで、子供が自殺する事例もおおい。

 

 うちの子がいじめを、していたことを隠したいのだ。

 

 自分の子供が大事な親は、自分の子供の過ちを消し去りたいが、ために、愚かにも、別の子供の命を奪うのだ。

 

 教師にしてもどうようだ。

 

 みてみぬふりをしている。

 

 世間に明るみになったときにはもう遅いのだ。

 

 モンスターなペアレントは、過保護かほごに、子供を束縛そくばくするので、教師もまた、生徒も、角の立つことはあまりしたくはないのである。

 

 委員会だとか団体も、モンスターなペアレントは恐ろしいのだ。

 

 てなわけでまあ、僕が2週間の間、理由もなく、学校に行っていなかったのは事件なわけで、僕ではなくて、僕の育て親の千代さんが、訴えられかねなかった。

 

 子供の権利云々で、親がちゃんと説明をしないと、子供がかわいそうだとか、家庭


 環境が怪しい、子供と、うちの子供を一緒の授業に受けさせたくないだとか、本当に、狭くて窮屈きゅうくつで、面倒くさい。

 

 ま、少し家出がしたくなったとでも、言っておけばいいか、と思った。

 

 なんとなく、自分ひとりで、どこまで暮らせるかやってみたかっただけだ。

 

 2週間ほど、知らない人の家に泊まらせてもらったりして、旅をしたが、やっぱり、子供の自分には、きびしかったし、学校のこともあったので、しぶしぶ、家に帰ったのだということにしておこうと、思った。

 

 誰の家に泊まったのかと、詰められそうだ。


 何処にも当てがなかった。

 

 忘れたと言っておこう。

 

 わからない。もう忘れたと。

 

 僕は、言い訳を考えながら、授業を受けていた。

 

 体育の授業の時、機械人形の身体であることがバレるのではないかと、びくびくしていたが、大丈夫だった、普通に動けているし、皮膚ひふにしかみえない。

 

 給食は、口の中に流し込んだ。

 

 流し込むと、エネルギーに変換されるシステムならしい。

 

 うんことガスは、細いカプセルになって、廃棄物はいきぶつとして、尻の穴から放出される。

 

 別に尻じゃあ、なくてもいいのに、人間として生きていくための配慮なのだろうと、思った。


 トイレの時は、小便は出ないのだが、小便を偽装した黄色い液体が、出る噴射装置ふんしゃそうち股間こかんについているので、噴射装置を使ってだすのだ。


 生殖器せいしょくきの形を再現してあるので、修学旅行の時、風呂に入るにも、心配はなさそうだ。

 

 考えてもみれば不思議なことであるのだが、首から上だけの状態になった僕がどうやって、酸素を細胞に送っているのか栄養と細胞に送っているのかが不思議でならなかった。

 

 胃も腸もなくなった僕が、正常に首から上だけは、生きているのが不可思議であった。

 

 電気だけでは説明がつかないのだ。

 

 細胞には栄養をもたらす化学物質が必要だし、常に代謝して、新しい細胞を作り出す細胞分裂が必要なのだ。

 

 もしかすると、機械人形の身体の中に、細胞に酸素や血液を送り込む装置や、栄養を作り出して、細胞に送る装置があるのかもしれなかった。

 

 家に帰ったら、機械人形のソフトを起動して、詳しくみてみようと思った。

 

 僕はまだ、自分の新しい身体のことをよくわかっていないのだ。






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体罰・・・physical punishmentのこと。私的に罰を科す目的で身体へ暴力をふるうこと。


ぐるみ・・・くるむ(包)の連用形から 名詞に付いて、そのものを含んですべてそのものをひっくるめて全部。


保護団体・・・二人以上の者が、何かを保護する目的で作った集団


モンスターなペアレント・・・学校や社会に対し、自分の子供を過度に守ろうとし、職員やその他のものを精神的に苦しめる存在しかし、親だったら仕方ない。


過保護・・・helicopter parentのこと。特に教育機関における、子ども自身や、経験、問題に対し、過剰なまでの注意を払う親のこと。逆に関心がなさすぎることも問題。


束縛・・・制限を加えて行動の自由を奪うこと。


窮屈・・・形式張って堅苦しいこと。融通のきかないこと。


皮膚・・・動物の器官のひとつ、体の表面をおおっている層のこと。体の内外を区切り、境をなす構造。外皮系という器官系としてまとめて扱う場合がある。ヒトの皮膚は肌とも呼ばれる。

ちなみに、人の皮膚は、垢となって剥がれ落ちるまで約4週間かかる。


うんこ・・・うん、はいきばる声、こ、は接尾語で、大便をいう幼児語。うんち。


廃棄物・・・不要になり廃棄の対象となった物および既に廃棄された無価物


生殖器・・・生物が有性生殖を行う場合に、生殖活動に直接関係する器官のこと

ヒトの場合、ちんこと、まんこ。


噴射装置・・・噴射する装置のこと。


股間・・・陰部のこと。人間の生殖器を指す言葉


修学旅行・・・日本において小学校、中学校、高等学校、義務教育学校、中等教育学校、特別支援学校の小学部・中学部・高等部の教育や学校行事の一環として、教職員の引率により児童、生徒が団体行動で宿泊を伴う見学、研修のための旅行


細胞分裂・・・1つの細胞が2個以上の娘細胞に分かれる生命現象


血液・・・動物の体内を巡る主要な体液で、全身の細胞に栄養分や酸素を運搬し、二酸化炭素や老廃物を運び出すための媒体


小便を偽装した黄色い液体・・・しっこを再現した液体のこと。





































 

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