第62話 一体いつまで続くのか

「また来たぞ!」


 斥候役の仲間が駆け付けてきた。


 もう何度目なのか分からない。


 最初の騎士を仕留めた後、直ぐに第二弾がやってきた。

 まだ余裕のあった俺は、再び土壁を倒すという方法で新たにやってきた騎士共を次々と仕留めた。


 問答無用、情け無用。天地無用・・・・いや、天地無用は関係ないか。

 

 もしかして俺達の助けになる存在がいるかもしれないが、

 現実的に、客観的に見てあり得ないだろう。

 だからやってきた奴らは皆殺しだ。


「・・・・うぐっ!」

 だが現実は厳しい。

 俺の魔力は既に枯渇してしまったいる。

 それを補うためにポーションを飲んだが、ポーションと言うのはそもそも連続して何度も使用する物じゃない。

 どうやら何度も使うとポーションの効き目が悪くなるらしい。

 理由はよくわからんが、一説によればポーションの過剰投与による耐性ができるらしい。

 何だよ耐性って。


 そんな中、もう10度目からは数えてねえが、敵がやってくるたびに俺の魔法でやっつけているわけだ。

 そして俺は・・・・


 ・・・・

 ・・・

 ・・

 ・



「きゃああケネトさまああ!!」


 ・・・・誰だ?

 しかも女の声のような気がする。

 ああそうか、ついに俺にもお迎えが来たんだな。

 最後は綺麗な女性の声か。


「ケネト!ケネト!ケネト!!!!」


 あん?別の女の声もする?


 今際の際いまわのきわには複数の女性に見送られるのか?

 せめて結婚したかったなあ。

 できれば一姫二太郎。

 5人家族で慎ましくも静かに田舎で暮らしたかった・・・・


 あーだけど・・・・なんだか気持ちがいいなあ。そして良い匂い・・・・


 死に際には匂いまでいいのか?

 それに何だか・・・・手が動くぞ?


 もぞ

「あん♡」


 おかしい。

 今何か予想と違う声が聞こえた気がする。


 だが目を開ける事ができん。

 やっぱり俺は死んだのか?


「ケネト様はポーション中毒に陥っていますわ。いったいどれほどのポーションを服用したのでしょうか!」

「どうしたらいい?」

「口移しでで魔力を。」

「わかった。」


 かなり昔、俺が冒険者になりたての頃にも似たような事が起こったっけなあ?

 とか思ったが、どうやら口に何かが・・・・


 そして何か分からんが流れ込んでくる!


「うわ!マジだぜ!」

「馬鹿野郎!それを言うならだ!」

「くっ!リヤ充爆発しろ!」


 よくわからん。

 あ、離れたぞ?


「まだ足りませんわね。代わっていただけるかしら?」

「わかった。ケネト成分は補充した。」

「では失礼して・・・・」


 また口に何かが・・・・


 さっきもそうだが何だろうこの充実感は。

 俺は何だか分からんが、また手を動かしてみた。


「あふん♡」

 違う反応だ。


 俺は満たされた気持ちでつい・・・・




「すまないな。どうしても結界を突破できなくてな。国中くまなく調べたが、ここだけ調べられなかったんだ!そのせいで君達には10年も無駄な時間を過ごさせてしまった。この通り詫びる!そして今は・・・・兎に角城に来てくれ!もう俺が把握しているから安全は保障しよう。」

「・・・・それを俺達が信じると思うのか?」


「そうだな。モッテセン王国が君達にした仕打ちは謝罪で済むような事柄ではない。だが、どうする?このままここに居続けるわけにもいかないだろう?」

「だからと言って城に行くとかありえないだろう?ケネトを見ろ!こいつは魔法を使いすぎた。そしてあんたらの同胞を殺し過ぎた。」

「いや、ケネトは確かに騎士を殺したが、騎士は殺されるだけの事を今まで国王の名の下にしてきたからな。だがここで一つだけ否定させてほしい。俺達はあいつらの同胞じゃねえ!」


 なんだ?アントンが誰かと話しているぞ?


 俺は目を開けようとしたが、相変わらず開かねえ。


 そして時折、

「ケネトさまあ!やっとですわ!10年探しましたのよ!」


「ケネト!もう離さぬ!10年は長すぎたのじゃ!ケネト!!!!」


 ・・・・知っているはずの声がわからない。

 俺のよく知る人物のような気がするが、もう忘れた。

 誰だっけなあ。どうでもいいような気がする。


 

 ケネト・ラーム  享年28歳。

 モッテセン王国で奴隷として10年もの永きにわたる強制労働の末・・・・


 いや待て!俺は生きている!勝手に殺すな!


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