第34話 ギルドへの重要な報告

 一人の青年が単独でサイクロプスを10体仕留めた。

 しかもレベルは59。ランクはE。


 その情報の衝撃はすさまじく、国中の冒険者ギルドが大騒ぎ。


 何せサイクロプスはA級の魔物。

 しかも群れると限りなくS級に近い存在。


 サイクロプス1体を仕留めるのにA級パーティですら厳しく、通常はB級パーティを複数投入し、サポートを受けながらやっと仕留められる魔物。


 何せ魔法が殆ど効かない。

 デカい身体に剣で切りつけてもほぼ無傷。

 そして無尽蔵ともいうべき体力と怪力。


 唯一目が弱点とされるも一つ目の目は常に棍棒を持っていない手でガードしてくるので目にも攻撃は届かない。


 そんなサイクロプスに何と今まで知られていなかった弱点があったのだ。

 それは、頭。それも頭のてっぺん。

 だが背の高いサイクロプスの頭に攻撃を届かせる事のできる人間は皆無。

 更には矢も魔法も左手であっさりはねのけられ・・・・そもそも魔法はサイクロプスに届く前にほぼ消滅する。


 しかしこれも今回の討伐で分かった事だが、どうやら左手に秘密があったようだ。



「ロセアン様如何ですか?」

「まあこんなもんだろう。すまないなセシーリア。」


「いえよいのです。」


「しかし、いいのかあんちゃん。こんな重大な事を公開しても?」


 魔物の情報は貴重。

 しかもサイクロプスほどの魔物の弱点となると、それを秘匿し自分だけで仕留める事ができれば素材を独占し、莫大な富を得る事ができる。

 しかしケネトはそれをしようとしない。


「そもそも今回はたまたま運が良かっただけだ。しかもサイクロプスって森の奥に住んでいるのなら、今後もこう言った事があるかもだろう?なら冒険者が知っておけば人の命を守れるさ。」


 俺はそもそも魔物を狩って生きていこうなんて思っちゃあいないしな。いいんだこれで。


「流石ですケネト様。私惚れちゃいました!是非結婚して下さい!」


「おいやめとけセシーリア!」


 まさかのセシーリアちゃんからのプロポーズ。そしておっちゃんが止めに入るけどもう手遅れだな。


「あんたは美人だ。しかもスタイルがいい。そして性格も話しやすいし気配りもできるし、それに俺はあんたと話していて気後れする事もないし、それに飽きないし楽しい、いい事ずくめだ。」


「では!」


「だが断る!」


「な、何故に!!!」


「なあ、知っているだろう?年上は無理だ。」


「で、でも種族的には私年下なんですよ?」


「実年齢が全てだ。セシーリアちゃんの事は俺も大好きだ。愛していると言っても過言じゃねえ・・・・姉としてな。」


「ひ・・・・酷い・・・・・うわーんロセアン様振られましたあ!」



「だから言ったろう?ケネトは祖国の事があって年上は受け入れられないんだよ。この前言ったよな?をしてやるって。待てねえのか?」


「・・・・気長に待ちます。」


「そうしてくれ。後な、ケネトは心変わりがしねえが、お前さんの事はずいぶんと気に入っているのは間違いねえ。今から胃袋を抑えておけ。」


「しかし常に宿で食事をしていますよね、ケネト様って。あの宿の料理以上の出来の料理を用意できるとは考えにくいですわ。」


「日々精進だ。スキルに頼りすぎるなセシーリア。お前もまだ若いんだ。そもそも1980でS級冒険者を引退とか考えられないんだが。」


「だって私もう冒険に疲れましたよ。私には合ってないんです。それに好きで冒険者になった訳ではありませんし。」


「そうか。まあそれはそれで仕方がない。だがどうだ?いずれケネトが冒険者として本格的に旅に出る事になったら、セシーリア、お前も一緒についていってやれないか?」


「ええ?どういう事でしょうか?」


「あいつには可能性があると俺は睨んでいる。だがそれには誰かのサポートが必要になるはずだ。お前はケネトに信頼されている。どうだ?因みに俺は無理だ。年齢的にも身体的にも、もうボロボロなんでな。」


 ・・・・なあ俺の事話してんじゃねえのか?なんで俺に聞かないんだ?

 まあいい。魔物の討伐とかあぶねえ事は極力するつもりはねえし。

 何せ俺は鍛冶師希望だからな!


「なあそれより報酬とかどうなんだ?」


「ああ、すいませんそうでした。まずは討伐報酬といたしまして経験値とポイント、それぞれ640の付与ですね。おめでとうございます!そして討伐報酬ですが、サイクロプスは一体1千万ゴールドとなっていますので、一億ゴールドが報酬となります。そしてこちらは今暫くお待ち頂きたいのですが、サイクロプスの素材、只今絶賛査定中と解体中ですので、2週間時間を下さい。」


 2週間もかかるのか?


「一体当たり丸1日かかるんだよ。何せサイクロプスってな、まず皮膚がめちゃくちゃ硬い。解体用のナイフもなかなか通らねえからな。魔石の取り出しも難儀するんだよ。」


 まあいいさ。時間はある。

 それより1億か。すげえな!

「それとヘンリク様・ヒルデガルド様の回復費用といたしまして2千万ゴールドをお預かりしていますのでこちらもお納め下さい。残ったポーションはそのまま引き渡し、ヘンリク様より貸与されましたポーション作成用の道具、こちらはそのままお譲り下さるそうです。こちらがそうですね。」

 1億じゃなく1億2千万になった!



「ケネト様、もし報酬のお金ですが使い道が決まっていないようでしたら、このまま貯蓄いたしますか?それともあの、差し出がましいかもしれないのですが、私の方でいくつか提案をさせていただきたいのですがどうでしょうか?」



 何でプロポーズしてくれたのにこんな他人行儀なんだ?


「うん?どんな提案なんだ?」


「ええとここではなんですから、個室でお話しましょうか?カードへの入金の手続きもありますし。」


「そうだな。何の提案か知らねえがそうしよう。」

「では・・・・こちらは収納して頂きますので、そのままお持ち下さい。」


 ポーション作成キットでいいか?を俺が持っていく事になった。持ってってくれねえのか?


 ・・・・

 ・・・

 ・・

 ・


「一応何かありますと困るので、防音効果のある魔道具を使用いたします。」


 何かよくわからん道具を使っているが問題ないのか?

『問題ありません。』


 そうか。ならいい。つうかあんた何もん?


『今は知る必要はありません。ただ私は生涯味方ですから御安心を。』


 味方らしい。

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