冒険者生活20年 おっさんの底辺脱出記

よっしぃ

国が滅び難民に

第1話 ケネト・ラーム

 俺の名前はケネト・ラーム


 38歳の、もういい年をしたおっさんだ。


 この国に流れ着いて気が付けばもう20年以上が経ち、もはや故国の事は殆ど記憶に残っていない。

 まあ国が復興しても、もう戻ろうという気にもならんしな。


 さて、今日やっとヘンリク・ヴァルテル・グスタフ・モッテンセン国王陛下に献上する剣が出来上がったんだ。

 やっとだ。

 何でこんなに時間がかかったのかって?

 何せこの国にやってきて、レベルも上がり順調と思った時に・・・・

 

 いや、あれは思い出したくない。

 というか返せよ俺の10年ちきしょ――――!!!!・・・・・・・・・・


 ふっ・・・・俺としたことが取り乱しちまったぜ!

 ここまで20年かかっちまったが、それはもうどうでもいい。

 モッテンセン王国の国宝になる事間違いなしだ。


 魔剣モッテンセン。


 俺の全てをたたき込んだ。

 人生そのものと言える。


 単に剣としてであれば既に何振りか王国に納めている。

 オリハルコン製の剣だ。

 かくいう俺もオリハルコン製のショートソードを愛用している。

 そして時には今回打ち終わった剣と同じ製法で打ったショートソードの魔剣。

 ミスリルとオリハルコンの合金。

 オリハルコンだけでは魔剣が打てなかった。

 だが魔素との相性のいいミスリルは魔剣の素材としてはうってつけだが、少々耐久性に劣る。



 そこで考えたのがミスリルで魔剣そのものを打ち、それをオリハルコンで挟むのだ。

 だが単に挟めばいいわけではない。

 しかもショートソードであればさほど苦労せず打てるのだが、ロングソードは厳しかった。

 5年かかった・・・・

 だが普段使いできない。

 大いなる欠点があるからだ。


 魔剣としての威力は絶大ながら、燃費が良くないのだ。

 ダンジョンで一日中持ち歩けば、いや一日持たない。よほど魔力の総保有量が多くなければ半日で魔力が枯渇してしまうだろう。


 剣を握っていれば魔剣の能力を開放せずとも魔力を吸われてしまう。

 そして魔剣の能力を開放すればあっという間に魔力を持っていかれる。だが使用すれば絶大な威力が約束される、そんな剣だ。


 そして何故5年もかかったのかと言えば・・・・

 そもそもオリハルコンはそう簡単に確保できる素材ではない。

 何せオリハルコンを確保するのがそもそも大変なのだ。


 何故大変なのかと言えば、ダンジョン90層付近まで行かないと採掘できない上に、採掘スキルをマックス付近にしておかないと採掘できない。

 そしてオリハルコン自体恐ろしいほど重い。

 因みにマックスレベルは10ではない。

 それは通常のマックスなのであって、オリハルコンを扱うならば、限界突破をしないと無理なのだ。

 それにだ、ロングソード一振りの量を確保しようとしても、普通では運べない。


 なので精霊にお願いする他ないが、精霊を使役するスキルもほぼマックスにしないと無理。

 何故精霊?

 精霊の中にはオリハルコンを好む精霊がいる。

 その精霊に頼んで重量を軽減してもらうのだ。


 良くある地面に突き刺さっている剣を抜いて所有者を選定させるような行為、あれはきっと単に重量のせいで抜けないのだ。

 体重60キロの人間が何とか頑張って一瞬でも持ち上がる重さがせいぜい自身の体重の2倍程度だろう。

 だが剣一振りが1000キロを超えていれば?

 もし2000キロだったら?

 魔法を用いないと持てないだろう。あるいは道具を使わないと持てない。


 だが精霊に好かれている人が挑めば?きっと持ち上がるだろう。


 まあそれはいい。

 今は城に向かう準備だが、何故か使者に女が来た。しかも国王陛下の妹、つまりお姫様だ。因みにこいつの名前は・・・・何だっけ?そうそう、ヒルデだ確か。

 俺はこいつが苦手だ。しかも年上。だから他人の振りをしておく。



「君がケネトか。」


「違います。」


 俺は逃げた。年上の女は苦手だ。しかも目の前の女は俺が今まで生きている間に見たどの女よりも顔の造りがいい。そしてスタイルも多分いい。そして姫という身分に相応しい気品と身だしなみ。しかし俺はこいつが苦手だ。

 更にこいつを初めて見たのは20年前。そしてほぼ見た目は変わっていない。きっとエロフ、いやエルフだ。


 そして、俺は今まで付き合った女がいない。

 勘違いした事は何度もあったが。


 こんな完璧超人を前に何もできないので逃げた。


「待て!国王陛下兄上に献上する剣はどうするのだ!」


「そこにあるので差し上げます!」


 だが、この姫様何者だ?俺はダンジョン100層を単独、つまりソロで踏破できるレベルなんだぞ?それなのにどう見てもダンジョンとは無縁そうな見た目20歳そこそこの姿の娘が俺に追いつくどころか気が付けば目の前にいる。だがこいつは実際は俺より一つ上の39歳のはず。何で姿変わんねえんだよ!


「どうやって運ぶのだ?重すぎて誰も剣を持てぬ。何とかしろ。それにいい加減に気が付け!」


 何に気が付けばいいんだ?(本当はケネトの祖国とモッテンセン王国との年齢の数え方が違うので実際は彼女の方が1歳年下)

 ヘンリク国王陛下よ、あんたの妹何なんだよ!

 そして俺は襟首をつかまれ引きずられていく。

 どうしてこうなった?





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る