ナンバリングショートショートストーリーズ

つちやすばる

No.1

「つまり、地上には0.33ミリほどの天使が常に浮いているというわけか?」

「違う違う。浮いているのは俺たち、地球人さ。天使ははるか地上のうえ…何メータだっけな」

「なんだか怪しいな」

「いや、ここに『地球教則本』がある。天使の生態系についてもここに書かれているはずだ」

「じゃ、見てみろよ。俺はとりあえず仕事に戻る。会計は一緒に済ましといてくれ。お代はここだ」

「ああ」

「しっかりやんなよ」

 その後私が職場から夕方前の休憩にカフェに戻ると、真っ赤な血がカフェの床に五芒星の形に飛び散っていた。

 そばの机のうえの教則本には天使の項目のページが開かれ、こうしるされていた。

『彼らは地上を好む。彼らは空を反射板として地上のありとあらゆる場所に存在しようとする。その姿をつかまえたいなら、なるべくのことなら最小単位のほこりか水になることが必要である。・・・』

 かれなりの実践方法らしかった。

私は急にたまらなくさびしくなって、血になったかれにそっとほおを押し付けて、天使の姿をみようとした。



「天使の生態系」


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