夢見たものはひとつの幸福、願ったものはひとつの愛。(END)

それから2ヶ月後。


俺は、カフェのテラス席で葵を待っていた。


「サク、お待たせ。」


制服姿の葵がやって来た。


「学校お疲れ!テストどうだった?」


「サクもバイトお疲れ!古文以外は95点以上って感じ。」


「相変わらず、すげぇな。」


「まぁね。」


「謙遜しねーのかよ。」


「はは、あ、カフェラテください。」


オーダーを取りに来た店員に対して、葵はメニューも見ないで応えた。


「本当にカフェラテ好きな。」


「うん、大好き。サク、来週から教育実習だったよね?」


「あぁ。緊張するけどさ、俺なりに頑張ってみようと思うよ。」


「うん、サクは優しいし人の気持ちがわかるし、絶対先生に向いてるよ。」


「さんきゅ。シフトあんまり出られなくなっちゃうけど、ごめんな。」


「サクがいない間、僕がちゃんと働いておくから大丈夫。サクの何倍もね。」


「葵、随分生意気になったよな。」


「別に普通だもん。」


そう言うと、お互いに笑った。


俺は、テラス席からふと道路側に目を向ける。


すると、お母さんと手を繋いで歩いていた子供が風船を手放したのが見えた。


葵も見ていたようで、「あ…」と声を漏らしていた。


風船は、電線に引っかかることなく、紺碧の空に向かってゆっくりと上昇していく。


俺達は、2人揃ってそれを見上げた。


この先、色んな事があると思う。


でも、笑っていれば乗り換えられる。


明日も明後日も、来年も再来年も、ずっと2人で笑顔でいような、葵。




END

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